勧誘、そして探り
男はキリに向けていた剣を引いて、俺らから距離を取る。
「はぁ....はぁ.....つっれー!あなた達なんなの?冒険者?」
「だったらどうした」
肩で息をし、悪態吐きながら問うてきた。
答える必要はなかったが、先ほどの状況で攻めきれなかったということは彼は相当場数を踏んでいる。
そんな彼とこのまま続けていても体力と時間がかかるだろう。なら相手が持ちかけたこの機会を利用する。
まあ、探れればだが。
「かあー!おっしいなーっ!そんだけの腕があるなら冒険者にしておくのは、実に惜しい。ちなみに青?赤?」
「俺は銀で、彼女は赤だ」
「その歳で銀に赤って......なーんて、ついているんだ!ワタシは!」
男は急に舞い上がり、本当に踊り出しそうな喜びの表情を浮かべている。
しかしダメだ。そんな状態でも突けいる隙はまだ現していない。
「あなた達!うちへ来なさい!」
「?」
「意味が分からないんだが?」
「だーかーらー。ワタシ達がやっている傭兵団、“緑のキングネス”に入りなさいって言っているの!」
「!」
緑のキングネス?
「それはなんなんだ?」
「ウッソッ⁉︎知らないの⁉︎」
「知らないの⁈」
俺が気になって訊いてみると、男とキリが同時に驚きの表情を浮かべ、聞き返しきた。
知らないから訊いたんだけど.....
「緑のキングネスっていうのは確かに彼が言った通り傭兵団をやってはいるけど、その実情は高額な依頼料を踏んだくるし、暗殺や薬物、奴隷の売買なんかもやっているって噂よ」
「あら、意外と詳しいじゃん。だいたいは頭の方しか知らないはずなんだけどな」
「昔旅をしていた時に聞いたのよ」
「それはそれは、だったら話は早いな。うちは実力派が多い。その中でもワタシは上の方、そんなワタシにここまで面倒に思わせる相手なんだからこき使える部下として欲し....っとっとっと、その腕を買いたいと言っているんだ」
本音の半分以上を暴露してから取り繕ったが、後の祭りである。
「そんなのに入る訳ないだろ」
「釣れない事言うなよ。ま、無理矢理にでも入ってもらうから、拒否権なんてないけど、なっ!」
「っと」
彼がニヤッと笑うと、一瞬で距離を詰めロングソードで下から斬り上げてきた。
結局隙なんて突けなかったな。
間一髪の所で身を引き、それを回避する。鼻先寸前を剣が通る。
「ふぅっ!」
それを開戦の合図とし、横からキリが上段から剣を振り下ろす。
しかしその攻撃は避けられ、左腕の下から右腕の剣で刺突してくる。
キリはそれを剣の側面でガードしつつ後退する。
それと入れ替わるように俺が攻め入る。
「はあぁーっ」
「っ!」」
双剣相手に連続で挑んではみたが、やはり根本的に双剣ではなく二刀流なので二体一でもなんとか相手出来る。




