奇妙な二刀流剣士、そして策
外に出てみれば、すでに傷だらけのキリと先ほどから倒れていた男たちと同じ服を着て、左には中央へ向かって対称の線がいくつも伸びるデザインのロングソードを右には普通の剣よりも幅が細く、どちらかといえばレイピアに近い剣を持つ男が対峙していた。
彼の右腹部辺りの服から血が滲んでいる。キリにやられたのだろう。
キリが中段くらいの構えに対して男の構えは、両方の剣先をキリへと向けており、左手はキリと同じく中段で右は右頬の横くらいまで上げている。
また左手の握りは天に、右手は地に向けている。
俺がその場に着いたとほぼ同時に男が駆けた。
「おらあぁっ!」
その独特な構えから放たれた初撃は、ロングソードを突き出すと共に腕を回転させ、右回転のなぎ払いを放ってきた。
やり方は槍を扱う際の一手に似ているが、手首も回しているため軌道がズレる。
構えも伴ってさほど威力はなさそうだが、あの構えと直前までの動きから突きが来るかと予想していたため虚を突く攻撃としては有効なのかも知れない。
しかしさすがはキリ。そんな攻撃も油断なく対処する。
初撃は威力がなく、剣で弾くように払ってしまえば簡単に対処された。
.....いや、様子からして初撃ではないな。
「はあー....っ!!」
しかしその一撃が弾かれる寸前のタイミングに、右の剣が一矢のごとく突き放たれる。こちらが本命なのだろう。
事前に引いているため弾みが良く、威力は格段に高い。
その突きが彼女の首目がけて迫って来る。
「っ⁉」
彼女はそちらも当然警戒していたので最小限の動きで避けようとしたが、速度が予想以上に早かったらしく完全に避け切れなかった。
ん?今の避け切れなかったのか。動きからして避けたと思ったんだが....
彼女の首からツゥーっと血が滲む。
キリはバックステップを三歩刻んで、彼から距離を取る。
しかし男も逃がすつもりはないらしく、すぐに地面を蹴って詰める。
「ふっ」
そして今度はロングソードを左袈裟懸け斬りを仕かけてくる。
それをキリは慌てることなく剣で止める。
「ふおぉー.....」
「....⁉︎」
男は再び右の剣で突きを放とうと、あの構えを取る。
対するキリは先ほどよりも互いの距離が狭いため、最小限で避けることは出来ないと判断したのだろう。
そのためロングソードを弾く、もしくは流して身を引こうとするだろう。
しかし彼女は、そのような動きをしようとしない。
むしろ彼女は何か焦ったような、それでいて悔しそうな表情を浮かべている。
「っ、!」
そこに突きを放とうとしたその寸前で、背後からの俺の攻撃を受け止められてしまった。
後ろも向いていないのに、器用なことをするな。
男は攻撃を止め、両方の剣を引いて横へ飛んで離れる。
「ほほうー、まだお仲間さんがいたのか」
「東、早かったわね。気をつけて!彼の攻撃方法は特殊よ。避けたと思った攻撃が当たるし、剣を流す事が出来ないの!」
「?」
キリの言っていることが分からない。
しかし彼女が伝えたいことはなんとなく理解出来る。先ほど俺も避けたと思った攻撃、そして今危うくなった状況からして何かしら行っているのだろう。
だが───
「お話はそこまでー!あなた達をとっとととっ捕まえないと、ワタシが怒られちゃうんだよねー。だから、大人しくしてろ!」
「そっちがな!」
「ちょっと、東っ⁉︎」
男が駆けるのに対して俺もキリの静止を振り切って地を蹴る。
悠長に相手の手の内を探っている暇がないので、真っ正面から相手をする。




