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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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責任、そして理由

 

 青年は少しの間考えるような仕草をする。


「つまり精霊様の言ったことを聞く気はないと?」


 そう皮肉気に言う。

 その言葉に思う所はあったが、それよりもつい先ほど初めて精霊様に会ったばかりの彼に言われることにムッとする。

 確かにこのままでは精霊様の命を全う出来ない。

 しかし彼の考えは理解した。

 知らなかったのだ。知らなかったから、あの忌み子と共にいたのだ。

 でなければ普通、いつこの国を滅ぼしかねない者の近くに居ようなどとはしないだろう。

 だが、今回のことはワシの責任でもある。

 忌み子が生まれたことを知らなかったで済ませて良いものではないが、あの愚女が人間と関係を持ち忌み子を生んでしまったのを知ったのが遅かったことが悔やまれる。

 ましてその後が問題だっただろう。

 ワシはあの愚女が忌み子を生んだと知った時に、総出で忌み子を処刑しようとした。

 しかしワシらが愚女に追いついた時には、すでに忌み子はいなかった。

 あのまま探しはしたが、森の中で子供が生き抜けるとも思っていなかったため捜索を断念させた。

 愚女を見つけた所は里の外ですでに精霊様の加護下外なため魔獣にも遭遇する危険があった。

 が、やはり探すべきだったのかもしれんな。今こそだからだが、ああして忌み子は生きていたのだから。

 まあ、言い訳をしていてももう遅い。

 だからその責任は今から取らねばならない。

 少なくとも彼の考えは理解出来たのだから、あとは説き伏せれば遅くなったものの忌み子を処刑出来る。

 そうだ、やはりワシは初めから間違ってなどいなかったのだ!

 例え精霊様の命にそぐわなくとも、青年は生きている。そうすれば災いも起こらず、精霊様から見放されることもない。

 うむ、あとはこの青年さえなんとかすればそれで───


「.......っ!」


 チラリと青年の方を見れば、先ほどと変わらず考え込んでいる。かと思えば、そんな彼が底冷えた睨みでこちらを見てきた。

 まさか、心を読めるような能力など持ってはいまいな.....?

 そう思えるほどに彼は唐突に、ワシを睨めつけてきた。


「......どうかしたか?」

「....いや、なんでもない」


 青年が訝し気な表情を浮かべるが、ワシはそうとしか答えられんかった。


「はぁ.....で、どうするつもりなんだ?」


 しばらくの沈黙の後に、青年がそう切り出してきた。


「どう、とは?」

「俺の考えを変えることもあんたの考えを変えることも出来ていない現状で、あんたは精霊様の命令に対してどうするつもりなんだ?」


 彼は半ば投げやりのようにそう言った。

 やはり考えを変える気はなし、か。そうなればやはり精霊様の命を無視して忌み子を殺すか。

 ほぼ確実に青年はこの森の敵となるだろうが、忌み子はその比ではない災いを呼ぶ。

 別に国を救った英雄になりたい訳ではないが、どちらを取るかなど悩むまでもない。

 だが、確実に精霊様からの信頼は低下するな。

 はぁ.....この青年たちが現れなければ、精霊様の信頼を失わずに....いや、災いが起こる前に処刑出来るのだから良しと......

 そういえばこの者らは、何故里に来たとだったか?わざわざ忌み子まで連れて。どうなるか分からんでもないだろうに。

 確か報告では忌み子の親、愚女に会いに来たとのことだが。


「時に貴様、何故忌み子を連れて里を訪れた?」


 青年の問いを無視して、こちらが問う。

 そのため彼は一瞬だけ微妙に眉根を寄せた。睨んでいるのもあるため本当に少ししか動いていないため分かり難いが、エルフの動体視力を舐めるでないぞ?


「ユキナの親を探しに来た.....ていうのは、入り口で警備のやつらから切り抜けるためで、本当はとある事情があってそれを解決出来そうな魔道具を借りに来たんだよ」


 青年は睨めるのを止め、再び投げやりな言い方でそう吐く。

 なるほど。確かに前文だけは報告通りではある。


「どんな魔道具を所望している?」

「.....出来れば嘘をついていないって証明出来る物が良い。嘘発見機とかあれば、ありがたい」

「ふむ......」


 嘘を看破する魔道具。そんな物、一級の裁判でしか使われん品だ。

 一級というのは、国家転覆罪や国王暗殺未遂などでの容疑がかかった者たちを裁く際、人間たちが見極め易くするための(レベル)である。

 この青年を見る限り一国の王にも見えんし、まず関係すらあるとは思えん。

 そこまで重要なことで必要だから貸してと言って貸されもせんし、まず貸し出された例などないだろう。

 しかし───


「用意しようと思えば、用意は出来る」

「っ⁉︎本当かっ⁉︎」


 思った通り青年は食いついた。

 あとはこれを利用するだけ。



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