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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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レイオ、そして操作

 

 そんな地獄の中を出歩いている者がいた。

 メリッサだった。

 彼女はこの天候の中、口を大きく開けて何かを叫んでいる。

 生憎と強風と豪雷の音によって彼女の声はかき消されていた。故に、ワシが興味を持って外を見なければ恐らく誰も彼女が出歩いているのを気がつかなかっただろう。

 ワシはそのことを両親に伝えると家にワシを残して、二人でメリッサの方へと駆けて行った。

 そして残されたワシは、じっとしていることなど出来ず先ほど同様、扉を少し開けて様子を窺っていた。

 両親はメリッサと何かを話しているが、なかなか戻って来ない。

 とりあえずその場は危険と判断してか、父がメリッサを家の方へと連れていこうとするが彼女は抵抗していた。

 しかし力で勝てないと悟ったメリッサは、自分の服に手を入れ、握り拳を作って出した。

 その手を父の顔めがけて振り、途中で手を開いた。

 途端に父は顔を背けたが回避することが出来なかったようで、思わず手を離して顔を抑えだした。

 その行為に母が怒ったよで、いつもワシを叱る時と同じ顔になった。

 しかしメリッサはそれを無視し、二人から離れるように駆け出した。

 その時だった────

 両親の頭上に一匹の光の蛇が落ちた。

 それに遅れて再び耳を劈くような轟音が鳴り響いた。

 その時は理解が追いつかなかったのが幸いといった方が良いな。

 何故、両親が倒れているのか。何故、黒い煙を上げ、倒れているのか。何故、メリッサが振り返り驚愕の表情を浮かべているのか。

 当時は理解していなかった。

 メリッサが慌てて二人に近寄り、胸に耳を当てたり、ぐったりしている腕を持ち上げて手首に指を当てたり、胸を強く叩いたりしていた。

 普段の両親なら、そんなことをされれば何かしらの反応を示すはずなのにその時は何の反応も示さなかった。

 ワシは二人が何故そうなっているのか知りたくて、家から出た。

 そんなワシに気がついたメリッサは何か叫んだがちょうど強い風が吹いて、上手く聞き取れなかった。

 次にメリッサはワシのことを無視して辺りの家の戸を叩いていった。

 家の中から血相を変えたその家の亭主や息子などが出て来た。

 そして倒れている両親を担いで、メリッサの家の方へと向かって行った。

 ワシもついて行こうとしたが、周りの主婦らに止められた。

 それから半刻ほどして両親が亡くなったと報された。

 初めは悲しさもあったが、やはり理解が追いつかなかった。だが、次第にその意味を理解していくうちに、ワシは泣いた。

 泣いて、泣いて、泣いて。本来なら数日は泣いていただろう。

 しかしそれは叶わなかった。

 ワシが両親の死を理解し、泣け暮れていた時だった。

 まだ止まない風の音の中から、薄っすらと声が聴こえた。その時の長の声だった。

 気になったワシは扉を開け、外を見た。

 外には大勢の里の者たちが居た。

 家から外に出、皆が集まっている場所へと向かった。

 何かを言い争っているようだった。大人たちをかき分けて進めば、皆の前にいたのはまたしてもメリッサだった。

 彼女は里の男二人によって取り押さえられていた。

 話を訊いてみた所、今朝方からレイオの姿が見当たらなかったという。

 今なら分かることだが、だからあの時メリッサは外を出歩いていたのだろう。

 そして再び探しに出たが、見つかった。

 しかし当然こんな天候の中探しに行けるはずもない、と里の者たちに止められたが聞く耳を持たなかったメリッサをやむを得ず捕らえたという訳だった。

 メリッサは叫んだ。

 何故、行かせないのか。何故、私の周りからは人が居なくなるのか、と。

 そんな彼女の訴えに皆、顔をしかるのみだった。

 そうして皆が何の反応も返せないでいると、一人の少年が皆の前に現れた。

 レイオだった。

 雪のような白い髪が風でなびき、その金色色の瞳でワシらを見つめておった。

 それを見た里の者らは....何故か怪訝の表情を浮かべていた。しかしそんな中一番喜んだのはメリッサだった。

 そしてメリッサが男たちの拘束から逃れて、レイオに近寄ろうとしたが里の者たちに全力で止められた。

 ワシは何がなんだか分からなかったが、その時のレイオは何故か、恐かったのを憶えている。

 手を我が子へと伸ばし、叫び続けるメリッサ。それに対して里の者らはまるで彼から遠ざけるように彼女を押し留めた。

 そしてその時だった。

 今度は視界一杯に光が覆った。

 それに遅れて耳を劈くような轟音が鳴り響いた。

 強い光によってしばらくの間視界が白く塞がる。その間にも鳴り響く轟音と風の音。

 そして何かが焦げた臭い。

 次第に目が見え始めた頃、ワシの目の前には再び地獄が広がっていた。

 先ほどまでメリッサの周りにいた大人たちは誰一人として立っていなかった。

 ある者たちは両親のように煙を上げ、ある者たちは腕や半身が失くなっており、服の部分が焦げていた。

 またある者たちは木や岩で押し潰されており、血の池でも作るのかと思えるほど大量の血が流れていた。

 地面は(えぐ)れ、木々は焼け焦げ、抜け、折れ、倒れていた。

 一体何が起こったのか理解出来ていなかった。

 そんな状態で固まっていると横から悲鳴が聞こえ、我に返った。

 隣を見ればメリッサの家の近くに住んでいる夫婦の娘だった。歳は既に二百を超えていたはず。

 また周りを見れば何人かの大人が立ち(すく)んではいるものの、生きていた。外傷は全くない。

 それはワシも一緒だった。

 後ろを見れば何軒かの家も無事だった。

 .....そう、後ろの何軒か、は。

 それ以外の家はもちろん周りの木々や畑、地面までもが巨大な何かに踏まれたように抉れ、地面ごと引っ張られたかのようにぐちゃぐちゃだった。

 その光景に周りの者らも呆気に取られていた。

 そんなワシらの前に先ほどと同様レイオが姿を見せた。

 そして彼は言った。「これが僕の能力なんだ」と。

 続けて彼は木に雷を落とすと言って指差した。それに釣られて全員の視線がそちらへと向いた。

 そして一閃の光の後にズドドドドドガガガアアァァァァァッと轟音が轟いた。

 しかしその光が落ちたのは、彼が差した方角とは全く違う場所だった。

 ......ワシらの真上だった。

 しかしワシらは無事だった。

 傷を負うこともなければ、地面が抉れるようなこともなかった。

 まるで不思議な力によって護られたようだった。

 その後もレイオは力を披露しようとしたが、その示す先に力は向かず、ずっとワシらの方に向いていた。

 この時、残った里の者らはワシらだけじゃったが、皆思った。

 レイオは“能力を操作(コントロール)出来ていない”っと。



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