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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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牽制、そして探り合い

 

 頃合いを見計らって、声をかける。


「良いか?」


 ワシが声をかけるとそれまで広がっていた二人だけの空間が閉ざされ、ばっと青年が離れてこちらへと顔を向ける。

 少々紅くした頬の顔は居心地の悪そうな顔、ではなく睨まれた。

 邪魔したからだろうが無視しておくか。


「ワシはこの里の長を勤めている。長として、改めて礼を言わせてもらう」

「アズマだ。冒険者をしている....こっちこそ怪我の手当てをしてもらったんだ。ありがとう」


 互いに礼を述べると短い沈黙が訪れた。


「.....ここがどこか、教えてもらえるか?」


 沈黙を破り、青年は問うてきた。

 ふむ、会話を所望するか。


「ここは牢樹。主に犯罪者を入れる場所だが、怪しい来訪者などもここに入れられる」


 青年は納得したような表情を一瞬だけ浮かべ、すぐに考え込むように俯いた。

 ここで時間をかけずに飯の方を促せば、怪しまれる恐れがある。そのためまだ続けるようなら会話を続けるしかあるまいか。


「里の長が俺に会いに来れるってことは、あの女は去ったきり帰って来ていないんだな?」

「ああ。あれ以降姿を見たとの報告も受けておらん」


 戻らないとはいえ、まだ完全に去ったとも思えんから警戒はしている。


「そうか....でもまだ去ったとも考えられないし、何か手を打った方が良いんじゃないか?」

「警戒を強め、道具などもいつでも使えるように整えてはいる。しかしあの女と真っ向から相手出来るのは、恐らくアーツェだけだろう」


 そう言いながらアーツェへと視線を向ける。

 青年も釣られてそちらに目をやる。


「私でも勝てるか怪しい相手でした。もしあの能力を初見で受けていれば、()くて重傷だったかと」

「なるほど。俺もあの能力はどうしようもなかった。剣で防ごうとしたら、剣が切られて腕も切られた」

「里の建物の様子からしても相当の斬れ味であろう。逆によくあれを喰らって腕だけで済んだものだ」

「こっちもギリギリだった。両手で済んだのは、奇跡みたいなもんだ」

「それでもあそこまで戦えていたのだ、こちらとしても里への被害を減らすことが忙しいかった故、貴様が相手してくれたのは助かった」


 本音半分、建前用の嘘半分である。


「たまたまだ。被害が新しい方に向かって行ったら、たまたまいて、戦う流れになっただけだ」

「ほお.....ワシの気のせいだろうが、あの時あの女は“ 私の目的はアズマだよ”と言っていたのを聞いた覚えがあるなあ」


 ワシがそう言うとその場に再び沈黙が訪れる。

 これは他の者にも言うておらんこと。そのためアーツェも怪訝の表情で青年を睨んでいる。


「.....さてな、俺もあいつのことは初めて観た。まあ、冒険者だからどこかで恨みを買われただけかもな」

「そうか」


 果たして冒険者だからと言ってそう恨みを買うのか、ワシには分からん。

 少なくとも前に里を訪れた『ボアアガロン』と名乗る者たちよりは善良そうに見えるが、だからと言って信用は出来ん。

 それに忌み子を連れている以上、この者も災いを招く恐れがある。

 あの強さを振るわれては、こちらも叶わん。

 そう青年を危険視していると、ふいにぐうぅぅっ!という音が、静寂の牢樹内に響く。


「まあ、ワシの聞き違いじゃろう」


 そう言ってワシは踵を返す。


「あの女が完全に去ったと判断出来るまでは貴様らをこの牢から出す訳にはいかんが、精々ゆっくりしていくと良い」


 それだけ言って、ボーモクの上に乗る。

 ワシに続いてアーツェも上に乗り、次に忌み子が乗る。

 最後にレベーラが乗るが、青年を名残惜しそうに眺めていた。

 ふむ、この女も乗るということはもしや飛行系の能力ではなかったということか?

 しかしもう時期ここで処刑するのだ。このことは知れて良かったな。

 そう少しだけ歓喜しつつ、魔道具を起動する。

 その光景を眺めていた東は「ユキナ、出て行って良いのか」と思ったのだった。



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