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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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牢樹、そして叶わず

 

 数十分ほど経過して一同は目的の牢樹へと辿り着いた。

 その牢樹を門番の者らに通らせるよう促せば、数分でその硬く閉ざされた門が重い音を立てて開く。

 牢樹は木の中の空洞を利用した牢だ。

 その深さは木の成長に比例して深くなるがそれだけでは不安だったので、さらに牢樹の周囲に壁を設けた。

 だいたいは三百から七百歳くらいまで育つと想定して築いている。

 また牢樹は管理のし易さから、それぞれを互いの近くに均等に植えられているのだが、壁と門を築いたことで警備はより厳重となった代わりに場所を取るようになった。

 そのため牢樹の数を減らさざるを得なくなった。

 しかし牢樹を使用する機会も少なくなってきていたため、それは痛手にはならなかった。

 また、壁と門が築かれたことと数が減り管理し易い並びにしたためその光景は普通の刑務所と変わらない。

 ただ違うとすればその壁からは木の先が顔を出しているくらいだろう。

 その門を潜り、中へ入る。

 念のため脱走を防ぐため一度門を閉じさせる。

 そして牢樹の門まで続く坂道を歩くだけなのだが、唐突に忌み子が駆け出した。

 ほんの数メートル足らず。さほど距離もないというのに何をそこまで焦るのか。

 しかし彼女は牢樹の入り口で見張りの二名に止められた。


「構わん。通してやれ」

「「はっ!」」


 別に問題もないので、通らせるように言えば二人は忌み子から牢樹の入り口へと意識を向ける。

 そして外にしか取りつけていない取手を引いて扉を開ける。ズザザザザァァッという音を立てながら、扉が開く。

 すると忌み子が、まるで吸い込まれるように入り口へと顔を出す。


「ユキナ!」

「⁉︎アズ、マ!」


 彼女が顔を出した途端にその声が聞こえた。

 間違いなくあの青年の声だ。それに答えるように青年の名を叫ぶ。

 最悪である。これで毒殺を完璧に遂行させなくてはならないからだ。

 あわよくば殺せる薬の実験もしたかったが、もう無理そうである。

 成功することを精霊様に祈るしかあるまいか。

 それにしても中はちゃんとした灯りなどなく、入り口であるここからも壁と木の葉によって日光が遮られているため薄明るい程度の光度だ。

 そんな中でよく忌み子の姿を認識出来たものだ。

 能力か、それともただ眼が良いのか。


「っ!」

「「「「「っ‼︎⁉︎」」」」」


 そんなことを悩んでいると、忌み子が入り口から飛んだではないか。

 この牢樹は最深の木であり、木の高さはすでに二十メートルは超えている。入り口から最深部まででも十四メートルはある。

 そんな高所から人が躊躇いなく飛べば、誰でも驚く。

 ワシ、アーツェ、レベーラも例外なく驚き、どうなったのか確認するべく入り口に駆け寄る。

 するとそこにはまたしても驚くべき光景があった。

 飛んで落下している彼女の落下速度がかなりゆっくりなのだ。

 まるで見えない空気の膜が彼女の速度を落としているようだ。

 手に縄のような物が握られており、さらにその縄は小刀のような物に巻きついている。

 飛行系、もしくは付与系の能力?確かに里の入り口でそんな能力だと戦闘した警備隊からの報告は受けている。

 どちらにしてもやはり忌み子でも体外型の能力は発現するらしい。

 しかしあれも同じ末路を歩む力なのだろう....

 そして下まで行った忌み子は、青年に飛びつくと泣き出した。


「良か、った....っ、アズマ、が急にた、おれた、からひっ....心ぱ、いで。名前よ、んでもぉっ...起きない、し.....ずっと寝、たきりだ、ったか、ら死んじゃ、うのか、と思った.....」


 嗚咽混じりに彼女は言った。


「ごめんな、心配かけて....」


 未だ嗚咽を漏らし、泣く彼女を左手のない左腕で青年は優しく抱きしめる。

 その光景は誰にも邪魔することを許さないという雰囲気が(かも)し出されている。

 しかしそれでもワシらにも目的があるため、動く。

 本来牢樹内では、その高さ故にとある魔道具を使用する。

 水を滑ることの出来る魔道具。我々はこれを『ボーモク』と呼んでいる。

 それを樹液に合わせることで使用可能になる。

 さて、最期の仕上げだ。



やっと長視点が追いつきました。

まだ少しかかりますが、頑張ってください。

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