表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
168/516

準備、そして被害

 

 とりあえず青年は牢へと運ばせることに。

 怪我人であり一応里の危機を追い払ってはくれた相手なので、せめてもの敬意として慎重に運ばせた。

 この里での牢とは中が空洞になっている樹木で、その裏面には滑りと少々臭いの強い樹液がたっぷりと溢れている。

 またこの木は成長するにつれその深さが大きくなり、樹液の濃度も上がるためより脱出が不可能となる。

 我々はその樹木を牢樹と呼んでいる。

 そして彼を入れるのは、樹齢四二七年。この里で最年長の牢樹だ。

 そこならばいくら彼でも脱出は出来まい。

 さて、青年はそことして、問題はあの女。

 先ほども述べたがあれは即刻処刑したいが、青年が邪魔だ。今出来ることはいつでも処刑出来るように準備しておくくらいか。

 とりあえずエンリュに伝えておくとして。


「わた、しは何、すれば良い?」


 エンリュに準備のことを伝え終えると、ワシの元に忌み子がやって来た。

 そういえばなんでもすると言っていたな。

 里の家の復興を手伝わせるか?……いや、この女に手伝われては皆も不安がるか。


「大人しくしておれ。貴様に手伝われる方がこっちにとっては迷惑じゃ」

「………ん。分かっ、た」


 忌み子は肩を落として、青年が運ばれていった牢樹方へと向かって行く。

 ふむ....


「おい!」

「....?」


 とぼとぼと立ち去ろうとした忌み子を呼び止める。


「手伝わせる気はないが、あの青年が目覚めた時のために飯でも作ってやってはどうだ?」

「!」

「「「っ⁉︎」」」


 ワシの思わぬ発言に忌み子はもちろん、ワシの声が聴こえた者たちも驚愕の表情を浮かべる。


「誰か、この者を食糧庫へ連れて行け」


 そう命令を下すと、困惑状態ながらも警備隊の一人が動き、忌み子を連れて行く。

 忌み子はペコリと頭を下げてからその者に連れられて行った。

 ある程度離れ、こちらの声が聞こえない位置まで離れるとエンリュの部下の....名はなんだったか。

 .....そうだ。ボイランだったな。彼が血相を変えて駆け寄って来た。


「お、おお、長、様ぁ⁉︎な、なぜ....なぜ、あの女のために我々の大切な食糧庫の食糧を分けるのですかっ⁉︎」

(たわ)け。ワシとて分けるのは心許ない....だが、あの青年を始末するためには、致し方ないのだ」

「?......!なるほど!申し訳ありませんでした」

「申し訳ありません、長様。こいつはまだまだ考えが足らないもので、私が目を離した隙に....」


 そうボイランの隣に立ち、頭を下げる男。確か....ヨン、近いな...ヨハナ....ヨンハ....おお、そうだ。ヨハンだ。


「気にせずとも良い」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 そう再び頭を下げて二人は去って行った。

 その者たちがエンリュに叱られているのを横目に、先ほどの考えについてさらに先を考える。

 あの忌み子に食糧庫の食糧を使わせてまで食事を作らせるのは、単純にワシらが出す料理よりも信用してあの青年が食べるからだ。

 そうなるならば、その前に料理にさらに強い毒を混ぜれば、それで良い。

 そしてあの忌み子は青年と同じ牢樹の中にでも入れておけば、上から処刑出来る。

 それが叶うのなら、食糧をくれてやるなどどうでも良いことだ。


「ふふふ」


 我ながら素晴らしい作戦だ。

 そう自賛する。

 ちなみにだが、ボイランは長の考えを理解していなかった。

 先ほどの「なるほど」はこれ以上長に、自分の醜態をされさないための言葉であった。

 そのためエンリュからの説教の後に、改めてヨハンに長の決断の意味を知った。

 さらにあの場で長の考えが理解出来なかったボイラン以外の者も、その説明を盗み聞きして、納得したのはまた、別のお話。


 ────────

 ─────


 東が牢樹へ運ばれてから十数時間が経過した。

 その間にエルフたちは壊れた家の復興や怪我人の介護に勤しんでいた。

 ほとんどの家は綺麗に切断されており、根本から切られている物も多々あった。そのため総出で切り倒された木を退け、新しく作り直した。

 木で出来た家、家樹(かじゅ)は精霊様の加護の元成り立つ木だが、周囲の魔素を吸って成長している。

 そのため切られた部分から魔力を流せば、木の自然治癒力が向上し、再生する。

 だが、あくまでこれは自然治癒力を上げての再生なのですぐに治る訳ではない。

 そのため復興が終わるまでは仮の寝床を用意しなければならない。

 そのため回復班と仮の住居の製作班へとさらに分けられる。

 また怪我人は多々おり、死者もかなりの人数出ている。さらに行方不明の者も数人出ている。

 その怪我人や死者たちは、斬られていたり切断されていたり、倒れてきた木の下敷きになったりして負ったようだ。

 その報告を受けたワシは、一人になりたいと告げ自分の家があった場所へと向かい、能力で土を盛り上げて椅子を作る。

 そしてただただ嘆いた。

 なぜ?ワシらが何をした?なぜ、何もしていないのに、こんな目に遭わねばならんのだっ!

 この里で平穏に暮らしていたワシらが、なぜ!なぜ、こんな.....

 あの女は何が目的で....里に何か怨みでもあったのか?いや、ほとんど里の外に出ることがないワシらが疎まれることはまずないじゃろう....

 ならなんで....?

 やはり忌み子か?.....そうか、やはり奴が、奴はやはり災いを呼ぶ存在だったか!

 絶対に許さん。あの青年を始末次第、貴様はオレ(・・)の手で直々に処刑してやる!

 せいぜい自分の手製の飯で、愛しい者を手にかけることだ!

 そうユキナに勝手な憎しみを抱き、その闘志を燃やしている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ