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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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木、そして心配

 

 目が覚めると薄っすらとした灯火の光とその奥に広がる暗闇が視界に映る。

 重たい身体を起こそうとすると全身に痛みが走る。それを我慢して上半身だけを起こす。

 かけられていた布が落ち、包帯のように細長い葉っぱが全身に巻かれている。

 視線を左右に向けると、右腕は引っつけられているようだ。しかし動かそうとしているがなかなか動かない。

 完全に治っていないか、時間経過でダメになったか。

 出来れば前者を願いたい。

 左手は『ウォーミル』が解けていないのでずっと凍ったままなため治せなかったらしい。

 目が覚めたことで徐々に痛みが襲ってくる。

 次にまだぼんやりする視線を瞬きで整え、周りに視線を向ける。

 誰もいない....と、思う。

 暗くて見えないため解けていた『魔眼』を発動させる。

 やはり誰もいない。

 俺は三角柱のような形をした木製の、いやこれ木か!木の中にいるのか。

 高さは、かなりあるな。十二メートル以上はあるか。

 地面はわらのような物を編んで畳のような造りだ。

 手触りは畳よりも滑らかで動物の毛並みのような感触だ。

 その上に茶色のシーツ、いやこれは木の皮か?薄っすらと伸ばした木の皮が何枚も重ねられ、それを糸で縫いつけてあるのか。

 木の皮ってこんなに粗さが少なく柔軟性の高く、そして温かいものなのか。

 ....いや、それもあるが一番目を見張るのはこれを加工している技術力の高さか。

 というかここはどこなんだ?

 目新しい物に気を取られていたが、今自分がどこにいるのか分かっていないのにこんなことしている場合ではないな。

 扉は....なさそうだな。ということは上から入れられたのか?

『千里眼』を使って上の方を確かめるとテカる木の面に薄っすらとだが木目のようなのが見える。

 あそこから出るのは少し難しいか。

 木の面には液体、樹液のような物が満遍に塗りたくられている。多分滑って上がれないようにしているのだろう。

 そうだとするならここは独房のような役割の部屋なのだろう。

 てことは信用されなかったか....

 まあ、もともと強引にあの女を捕らえに行っただけだからな。

 ....ユキナは別室なのだろうか?まさか信用されなかったからと言って酷い目に遭わされているとかではないだろうな?

 ......いやそんな目に遭うなら、俺もこんな状態にはしないか。

 ユキナは無事。今はただエルフたちには用があっていないか別室にいるだけ。

 そう自分に言い聞かせる。

 さて、そうと(勝手に)決めれば俺はこれからどうするか。

 脱出する時用にルート抑えておいた方が良いか?いや、それよりも先にユキナの安否が先か?なら今のうちに腕を治しておくのもありだな。

 そんなことを考えていると遠くの方から足音が聴こえた。

 その音が徐々にこちらへと近づいてくる。音的に四、五人くらいか。

 うーん、この身体ではあまり抵抗出来なさそうだな.....

 ならせめてゲートで、ってそういえばゲートリングどこやったっけ?

 えっと確か戦闘中に失くして、それで気づかず氷漬けにしたんだったな。

 そうなると脱出も難しくなるな。

 っとそうじゃない。今は近づいて来ているやつらをどうにかしないと。

 そう自問自答を繰り返しているうちに足音が止まった。

 そしてズザザザザァァッという音を立てながら、あの木の目のような場所が扉のように開いた。


「ユキナ!」

「⁉︎アズ、マ!」


 そこから顔を出したのはユキナだった。

 彼女も俺が声を上げたことで俺がいることに気がついたようだ。


「っ‼︎⁉︎」


 すると彼女は何をとち狂ったのか、そこから飛んだ。

 その衝撃な光景を見て、反射的に彼女を受け止めようと動く──ちなみにこの時は不思議と痛みを感じることはなかった──。

 しかし彼女の落下スピードはかなりゆっくりだ。

 まるで見えない空気の膜が彼女のスピードを落としているようだ。

 ....!違う。彼女は自分の能力を使って降りて来ていた。

 手に縄のような物が握られており、さらにその縄はクナイのような物に巻きついている。

 確かにあれなら途中で邪魔されているのではなく、元から縄とユキナが一緒にいたから問題ないか。

 そう納得しているとユキナが降りてきた。その際まだ空中にあるクナイをピンっとデコピンをして落とした。

 そして勢いよくこちらに抱きついてきた。


「っ!!!」


 かなり痛い。

 しかしそんなことを今のユキナに言える訳もない。

 飛びつくと彼女は泣き出してしまった。


「良か、った....っ、アズマ、が急にた、おれた、からひっ....心ぱ、いで。名前よ、んでもぉっ...起きない、し.....ずっと寝、たきりだ、ったか、ら死んじゃ、うのか、と思った.....」


 嗚咽混じりに彼女は言った。


「ごめんな、心配かけて....」


 未だ嗚咽を漏らし、泣く彼女を左手のない左腕で優しく抱きしめる。



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