声、そして失う
なかなか決着が着かず、また決め手となるような一手も与えられないままどれくらいの時間が経過しただろうか。
先ほどまで暮れかけていた日はもう完全に沈み、月や星たちが輝いているが、ここは森の中。
かなり暗い。
それが少しでも決着に影響を及ぼしてくれることを願うばかりだ。
「良いね、アズマ!楽しい、楽しいよ!さあ、もっともっと楽しもうよ!」
そう彼が叫ぶと、一線を振りながら突っ込んで来た。
これは距離を取って一線は流そう。
そう考え、横へ飛ぼうとした時だった。
『避けないでっ!』
「っ⁉︎」
その声は脳に直接のような強い口調で言われたような声が響いた。
そしてその声に気を引かれてしまい、一瞬動けなくなった。
その間に攻撃はもう避けられない位置まで迫って来ていた。
「ちっ」
理由の分からない言葉のせいで状況が悪くなったが、もう避けられない以上、真っ向から受けるとしよう。
その場合少なくとも一線の攻撃は剣で流そう。流せるかは不明だが....
そして彼の攻撃は『ウォーミル』で防御力を高めた腕で防ぐ。隙があれば『麻痺』で決め手を取る!
そう意を決して腕に『ウォーミル』を発動させる。
相変わらずの激痛は、この際放っておいて次に剣を構える。
「(まずはこの線を流す!)」
横一文字で放たれた線を剣で上へ流せるように剣先を天へ向け、剣の高さはそのままで俺だけ姿勢を低くする。
バキンッ!
「っ⁉︎」
しかし現れた結果は思っていたものとは違った。
いくら長い間使っているとはいえ、前日整えてもらったはずの剣が折れた....
線の方はなんとかなったが、その威力が強かったためか中央辺りで折れてしまった。
そのことに驚いていたため、彼の存在を一時的に忘れていた。
そのため彼の攻撃への受けが『ウォーミル』のほとんど影響を受けていない部分に当たってしまい、左の手首から上が飛んだ。
「あ、がっ!!!⁉︎」
切られたと認識してから左腕に激痛が走る。痛みや熱さを感じながら、叫び出してしまいそうな声をぐっと堪える。
「アズマッ!」
手が落ちたことに驚愕し、血相を変えてユキナがこちらへ駆け寄って来ようとした。
それを右手で静する。
それで彼女が止まったのを横目で確認してから右手で宝物庫へ手をやり、水儒核を取り出す。
それに魔力を流して水をドバッと流し、それと並行して『ウォーミル』を使う。当然俺は使用前にジャンプしている。
牽制用の氷を張り巡らせると、彼はすぐさま後方へと飛んでいた。
それにより手までの道が出来たので、そこへ行き右手で『ウォーミル』を発動させながら一面凍っている所から手を取り出し、それを氷漬けにする。
そして氷漬けになった手を宝物庫へ入れ、再び水儒核に魔力を流す。
次は腕だ。
血がドバドバ出ている腕に水がかかる。かなり滲みるかと思ったが切られた痛みの方が上なようで、さほどだ。
その水に再び『ウォーミル』で凍らせる。
ほい、処置完了っと。
治すのは後だ。先に彼を捕らえる。
そう自分に言い聞かせて、痛む左腕を無視して歯折れの剣を構える。
主人公よく腕失くすな〜って書いてて思いましたね。




