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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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警戒、そして探り合い

 

 だがしかし、面倒な状態だからといってこちらも退く訳にはいかない。

 戦っても良いのだが、それでさらに面倒なことになるだろう。

 仮に黙らせて無理矢理通ったとしてもこの事態が継続するだけで時間を取られる。

 そろそろ日も暮れかけているので、森の中ではエルフに優位性が生まれる可能性も十分にある。

 それに全員を倒した所でそんな俺に長が魔道具を渡してくれるはずがない。場所を知らない俺らではその場合非常に困る。

 探すにしろかなり時間を取られる。

 なるべく計画のための時間などは多く取っておきたいので、ここで時間をかけ過ぎるのは避けたい。なかった場合他の里も訪れなくてはならないのだから。

 と、なればどうするかだが、やはり堅実なのは攻撃を回避しつつ説得といった所だろう。

 説得と前述の行動で考えるなら圧倒的に前者が望ましく、良い結果を得られる可能性が高い。

 とりあえずはこれを第一として説得しつつダメだった場合用を模索しよう。

 俺としてはそれで通ってくれれば幸いなのだが....


「撃ちたいのなら勝手にすれば良い。しかしこちらには進んで戦う気はないことを覚えていて欲しい」


 まず、こちらに戦う意志がないことを伝えなくては意味がない。

 だがそれではむざむざとやられてしまうこともあるだろう。

 だからこちらから行く気はないが、そちらが先に手を出した場合はやむを得ずやるという脅しも加えた。

 それが効いたのか中央の男は眉をひそめた。

 それは多分三つの意味から捉えたからだろう。まあ、そう取ってもらわないと困るのだが。

 一つはこれを単なるブラフ、はったりか何か、か。

 一つはそれだけ豪語出来るほどの実力がある確固たる自信からか、もしくはただの傲慢から、か。

 そして一つは本当は俺らに悪意がないのでないか、か。

 この三つのどれかかもしくは全部か。

 いずれにしろ近い考えでこの発言の意味を理解したのは間違いないだろう。

 ならばそれらを踏まえると次はどうするべきか、となる。

 一番最初の場合は問題とならないが、残りはそう易々と無視出来ることではない。

 そうなれば取る行動はおおよそでだが検討がつく。

 それは───


「隊長!まだですか!もう撃っても良いですか⁈」

「ダメだ!私が合図するまで撃つ事は許さん!」


 ヨハンがいた場所の中央の男との間にいるストレートロングの男が中央の男、隊長を急かすがそれは却下された。

 当然ではある。

 どんな手を持っているか、そして先ほどの言葉の意味を汲み取ってしまえば迂闊(うかつ)な行動はより避けるだろう。

 いや、普通ならどんな手を持っているかの時点で慎重な行動を取るのは当然か。

 それに“ホルスト”という名前はここでは禁句なのだろう。それを俺が知っていると分かったのだから、その情報源も知りたいはずだ。

 だからここから始まるのは腹の探り合いだろう。


「貴様、名を何という?」

(あずま)だ」

「ふむ、私はエンリュという。それで貴様らはホルストという者を探しに来たと言ったが、何故この里にいると踏んだ?」


 ここは素直に答えても問題ないだろう。


「偶然だ」

「....先ほどの者とはどういう関係だ?」

「ただの他人だ」

「何故他人であるあの者とここへ来た?」

「それも偶然だ。ここに着く少し前に魔獣との戦闘中に出会っただけだ」

「魔獣....どんな魔獣だ?」


 ふむ、多分こちらの力量を図るつもりで訊いているのだろう。

 戦闘した魔獣によって扱いも変わってくるだろう。


「マダルノ蛇の希少種だ」

「「「「「「───っ⁉︎」」」」」」


 その名を聞いて全員が息を呑んで驚愕する。

 数十秒ほど固まっていたが、一番最初に隊長のエンリュが我に返った。


「この森の長と出逢って行き逃れられたとは....運が良かったな」

「ああ、さすがに二頭相手にするとは思わなかったよ」

「っ⁉︎....そうか。それにしても災難だったな、長に出会すとは。それでだが、その二頭のそれぞれの色は何色だった?」


 エンリュが再び驚くが、すぐに眉根を寄せて何かを考えた後、そう尋ねた。


「俺の方は黒と藍色だったな」

「!....ほう。それにしても貴様、余程腕に自信があるのだな。この森の長であるマダルノ蛇の希少種を二頭と出会してもその状態で逃げ出せるとは」


 エンリュは何かに気がついたようで、一瞬だったが声のトーンが戻った。その声はどこか嘲笑しているような、見下したような声だった。

 そして俺の言葉を聴いた他の者たちもようやく我に返った。しかもこちらも嘲笑の笑みを浮かべて。

 さらにエンリュは続ける。


「魔獣の件は理解した。それで、ホルストに何の用だ?」

「.....それをお前らに話て、どうなる?」

「貴様らが通って良いか判断するためだ」

「他人の話の内容まで訊く必要があるとは思えんのだが?」

「それはの貴様が探している者が、この里の──」

「黙れ、ボイラン!」


 俺の言葉が癇に障ったのかボイランが怒鳴りながら何かを言おうとしたが、慌ててエンリュが止める。


「確認のためだ。何かやましい事を起こされては、困るのでな」

「.....」


 やましいこと、か。多分彼が考えているのはそんなこととは違う気がするな。

 だが、それよりも今の質問の返しをどうするか。

 ......やっぱりユキナに頼むしかないか。辛い目に遭わされる恐れがあるが、全力で俺が守る。


「ごめんな、ユキナ....」


 そう詫びてから彼女の首に手を伸ばす。



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