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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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探り、そして取り引き

 

 さて、マダルノ蛇の討伐は終わったが、彼をどうしたものか...

 そう考えながら視線をマダルノ蛇から男へと向ける。

 彼は剣で黒と藍色のそれぞれの蛇の頭部を貫いている。自分で死体であるかを確認しているのだろう。

 彼をどうにかしてからでないとゲートは使えない。

 だがまあ、さほど距離が離れている訳でもないのだから走って行けば問題はないか。

 そちらは良いとして、まず彼は何者なのか探るのが先だな。

 魔獣討伐に来た冒険者か村の住人とするならエルフの里について何か知っているかもしれない。キリの勘を疑っている訳ではないが情報は多い方が得だ。

 しかしそれは彼が冒険者か村の住人ならの話だ。

 もし彼がエルフを狙ってここに来ていたり、村の復興を良く思っていない者の差し金...いや、ならマダルノ蛇を討伐したりはしないか。

 ともかく、何かの企みを抱いてここにいる可能性もある。

 だが企みがあるのならそれを素直に教えてくれる訳ない。と、なると会話でそれとなく訊き出すか?いやそこまで時間をかけていられない。

 別行動になってからそろそろ二十分くらいは経つから、そろそろ終わっている可能性がある。

 エルフの里については彼から訊きたいが、それよりもコマチュリ草の方を優先しなくてはならない。いやしかし、エルフの里についてもっと情報が欲しいから話だけでも。

 でも急がないといけないし───


「...私に何か訊きたい事でも?」

「!」


 コマチュリ草かエルフについての情報か、で葛藤していると男が何かを察したのか尋ねてきた。

 しかし顔はこちらに向けず、マダルノ蛇の死体を色々といじりながらだが。


「あー、いや....はぁー、単刀直入に訊くがエルフの里について何か知らないか?」

「エルフの里....?」


 男は作業の手を止め、怪訝そうな表情でこちらに振り返った。

 もうこの際、何か企んでいても良い。

 関わる事だってこれが最後になるはずなのだし、鉢合わせてなおも悪事をするようなら止めれば済む。

 多少誰かが不幸に遭うかもしれないが俺は善人ではない。今は自分のことで手一杯なのだから、そちらに手を回している余裕はない。

 なので俺が今出来るのは彼が冒険者か村の住人であり、なおかつエルフの里について何か知っていてくれることを願うだけだ。

 それを心で願いつつ彼の反応を窺う。

 彼は少し考える素振りを見せてから、厳かに口を開く。


「ああ、知っているよ。それもデマなんかじゃなく、本当に行った事があるやつを、ね」

「⁉︎」


 彼の答えは願っていたものであり、返ってこないかもと思っていたため予想外のものだった。


「教えてくれ!エルフの里はどこにあるんだ⁈」

「そう簡単に教える訳にはいかない。エルフの情報を手に入れるのは簡単じゃ───」

「俺で良ければ何でもする!ただ今はすぐにでもエルフの里に行かなきゃいけないから後にあってしまうが...それでも絶対、約束は守る!だから教えてください、お願いします!」


 勢いよく頭を下げて懇願する。

 自分でもこんな交渉にもなっていないことで許されるとは思っていない。

 それでも今はエルフの里について知りたいのだ。

 ましてや行ったことがあるというのなら、なおのこと知りたい。

 例えそれがデマだったとしてもだ。

 本来ならこんな賭けよりも情報を多く集めて確実性を上げたやり方を取りたい所なのだが、生憎と時間をかけていられない。

 それにデマだったとしても数分くらいでそれを確認出来る。

 条件もだいたいのことなら叶えられる自信はある。

 だから後は、相手次第だ。

 沈黙がしばらくの間続き、頭を下げてからどのくらい経っただろうか。数秒か数分か。

 その長い沈黙を破り、彼は厳かに口を開く。


「分かりました。お教えします」

「!」

「ただし───」


 受け入れられた驚きと喜びで心の中でガッツポーズをしたタイミングで続けられた。

 まるで俺の心の中を読み、タイミングを図ったかのような少しの間の取り方だ。


「エルフの里には私も同行させてもらう。宜しくね?」

「っ!」


 そして彼の提案は今の状況で最も選ばれたくないことだった。

 先ほども述べたがデマだったとしても数分くらいで確認出来る。それは『千里眼』とゲートを併用してのショートカットを使うからだ。

 しかし付いて来られてはゲートを使う訳にはいかない。

 だが俺に断る権利なんて、この場にはない。


「わ、分かった...よろしくお願いします....」


 答えはこの一択しかない。

 しかしそうなるのであれば、こちらもやらなくてはならないことを先に済まさねばならない。


「教えてもらう身で頼みごとをするのも悪いと分かっているんだが、仲間たちに行くことを伝えるために、この近くの、今復興中の村に行きたい。ダメかな?」

「....」


 彼はなぜかこちらから視線を外し再びマダルノ蛇の方を見た。

 もしかしてマダルノ蛇をギルドとかに持って行きたいのだろうか?だから俺の頼みを聞いた場合、死体が腐るかどうか考えているのかもしれない。

 なら───


「マダルノ蛇を売りたいのなら品質は俺が管理しよう。そのままの状態で持ち運べるから」

「.....」


 別に俺には必要ないことなのだ。宝物庫に入れておけば邪魔にもならない。

 運ぶくらいどうってことない。

 しかし男はこちらに向くことはなく、じーっとマダルノ蛇を見ている。

 ん?もしかして違ったのか?


「...いえ、私は別にいらないので」

「....そうか」


 どうやら本当に違ったようだ。

 振り返った彼は無表情で告げたが、苦笑いよりもこっちの方が辛い気がする。



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