眼で、そして使い方
視点変更
時間は少し遡り、ニーナの作戦を聞いた俺たちはすぐに行動へと移る。
俺は先ほどニーナに言われた通り、一人でコマチュリ草を探している。
『魔眼』で辺りの草がコマチュリ草なのかどうかを見極めながらただ適当に走り周るだけ。
簡単そうに見えるが、実際は非常に厳しいやり方でやっている。
見える草から出る名の表示は一眼で数十ほど。
それをパッと見であるかないかの判断をして、次に映る表示を処理しなくてはならない。
うーん、微妙に異なる絵を次々見せられて、その中にある目的の絵を見つけようとしてる感じ。
それに森の中を駆けているので木々も避けなくてはならない。
とても効率的とは呼べないやり方だが、ニーナの作戦は時間との勝負なのだ。
コマチュリ草を早く見つける方が得。でないとゲートで戻り、みんなに追いつくのが間に合うかどうかだからだ。
ニーナが提案した作戦は、まず俺が『魔眼』を使ってコマチュリ草を探す。
その間にニーナが少女の説得。それが苦戦しているようであれば他の皆も参戦。
説得するのはもちろん冒険者についての誤解を。
一番大変な役目だが、ニーナに「女の子とは女の子に任せてください」と言われたので彼女たちに任せることにした。
そのため俺はタイミングを見計らって合流しなくてはならないのでなるべく早めにあちらに追いついておかなくてはならない。
なので頑張って探しているのだがさっきから目と頭が痛い。極力瞬きを抑えて探しているからなのだろう。
「!」
探し回っていると左奥、そろそろ中腹に着く辺りから魔獣の気配を多々感じる。
この量はマズいな....
分かるだけで一八か。この量が復興中の村に行けばまず間違いなく崩壊への道を再び辿る。
リリーのこともあるが見えている危機を放っておくのは気が引けるし、何よりもユキナにこれ以上辛い目には会って欲しくない。
時間がかからないようにしないとな。だからなるべく面倒じゃない魔獣であってくれよ。
そう思い眼を魔獣の方へと向け見る。
「.....トンドンカエルの群れ」
『千里眼』で見たのはダンジョンで戦ったトンドンカエル。
いやそれよりも小さいな。ダンジョンじゃあ三メートルほどだったが、今見ているトンドンカエルは二メートル弱ほど。
確かこいつらの冬眠って....なら.....
どれくらいかかるか分からないがとりあえず、
「まずは一頭目」
「ぐぇ....」
一番近くにいたトンドンカエルが俺の方を見る前に縦一文字に切る。
切り分けられた肉が倒れ落ちた音でか、それとも俺の存在を既に気がついていてかかは分からないが、他のトンドンカエル全てが俺の存在に気がつき敵と見定めた。
「ぐおぉぉぉぉっ!」
「「「「「ぐおっ!ぐおっ!ぐおっ!」」」」」
低く唸るような鳴き声で共鳴を始める。
一頭やられたから何も考えずに攻め立てて来ると考えていたんだが、まさか囲まれるとは...
「良いぞ!かかって来い!」
俺がそう叫ぶと同時に囲っていたトンドンカエルたちがこちらに攻めてきた。
──────
周りに伏せる魔獣の死体を見ながら剣についた血を振り払う。
「そんなに時間かからなかったな」
数分でさっきまでいた魔獣たちを倒すことが出来た。
そこは良い。魔獣に出会すくらい予想外という訳でもなかったのでそこは差して問題ではない。
ただ気がかりがあったとすれば一撃で倒しきることが出来なかった個体が一、二体ほどいた。
レベル差的に圧倒なはずなんだけど、切り方でもミスったのか?
....と、そんなことよりも、
「トンドンカエルがこんなにいるなら、近いな」
『魔眼』を再び使って周り見る。
地球の蛙の冬眠は湿った土中や木の葉などの下などが一般的だ。
対してコマチュリ草は日当たりが良くない栄養の豊富な水捌けの良い場所。
一見すれば価値合わない条件なのだがこれはあくまで地球の蛙での話だ。
トンドンカエルは贅沢なのか目覚めた時のためなのか日当たりが良く、栄養豊富で水捌けが良い土場だが水場の近くというなんとも都合の良い場所に眠てくれる。
なのでトンドンカエルが群れでこの場にいたのだからその条件の場所は近い。
なら後は水場を探すだけ。そこを中心に条件に見合いそうな場所を検討し探せば間に合うかもな。
そうと決まれば即行動だな。
俺は『千里眼』を発動させる。ただし今回のはいつもとは違う。
そもそも『千里眼』の能力は遠くの景色を見ることが出来る能力。
しかしそれは目で見ている一直線上のものだけしか見ることが出来ないか、と最近になって思っていた。
確かに眼とついている訳だし目の範囲だけと思えてしまうのだが、能力にそう書かれていなければ使えるのではないだろうか?
ほら、ゲームのバグ?とか裏技みたいな感じで。
なのでちょうど良いので今試してみようと思った。まあ出来なかった時はその時で地道に探すか。
『千里眼』を発動させる時にただ眼に魔力を流していただけだが今回は上に魔力を流す。
自分の上に物があるような感じで、それに流し込むように....
すると目に広く多大な距離が入り込んできた。
「出来た....」
あれだ、ゲームとかにある三人称視点って感じだ。
顔を上げてみると自分の顔が見えるというなんともシュールな状態である。
なぜ上から見ているのかといえば、高い所から探した方が早いじゃんっと思ったからだ。
高い所から見下ろして『千里眼』を使っているのでこれを『天眼』とでも名付けよう。
「それにしてもさっきより頭と目が痛い。長くは無理だな」
情報量がさっきよりも多いからか、痛さが尋常ではない。
だが『天眼』のおかげで湖を見つけることが出来た。
すぐに『天眼』を解除し、その湖の方へ向かう。
この話のほとんどを書いたのは前の視点変更が行われた明後日くらいでした。
なのにここまで遅くなるとは思っていませんでした...




