危機一髪、そして撃退
キリたちはマダルノ蛇についてそこまで詳しくなかった。
そのためなぜマダルノ蛇がキリの方へと突進して来たのかが分かっていない。
マダルノ蛇の種としての能力に『熱源感知』というのがあり、それが感じることの出来る器官が舌なのだ。
本来地球の蛇が舌を出しているのは臭いを感知するためなのだが、マダルノ蛇はそれに加えて上記の能力もあるそうだ。
「!」
真っ向から受ける状態になったがキリは『迅速』を使いその突進を寸前の所で避けた。
しかしマダルノ蛇はまたしても進行方向を変え、キリの方へと跳ぶ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ....」
だが残念ながらキリはもう動けない。
残り僅かとなっていた魔力を使っての回避だったためしばらくの間彼女はまともに動くことが出来ないのだ。
せめて直撃しても防御だけはしておこうと刀の側面を左腕で脇を絞めて支え、踏ん張りの効く体勢でその一撃を待つ。
「はああぁぁぁぁっ!」
「グジャッ⁉︎」
グジャリッ、と生々しい音と共に口から吐血を吐くマダルノ蛇とそのマダルノ蛇の吐血を吐かせる拳での一撃を入れたサナの姿がキリの視界に映る。
「サナッ!」
「無理しないでっ!今度は私が相手をするからっ!」
「ギャジャアッ⁉︎」
キリの方を向かずにそうサナが言いながら宙返りをし今殴った所へかかと落としを繰り出した。
「ユキナ、キリの事をお願い!ニーナ、あなたは私の援護を!」
「ん」
「はい!」
サナは的確な指示を出しながらもマダルノ蛇の注意を自分に向けるように立ち回る。
時折視線がキリの方へと向きかければ小石などを飛ばしてこちらへ意識を向けさせたりをする。
「お姉ちゃん!そのマダルノ蛇は希少種だから気をつけて!」
「了解っ!っ、はあっ!」
「ン、ジシャッ!」
「っ!」
ニーナの助言を聴きながら数回のスッテプで距離を詰め、姿勢低めのボディーブローを放とうとしたがあと二歩の間合い所で二発の毒弾で狙われたため後ろへと飛び退いた。
「えいっ!」
「!」
サナが後ろへ飛び退いたのとほぼ同時にニーナが能力で作った長さ一メートル、幅三十センチの土槍を五本投擲する。
しかしマダルノ蛇は身体をくねらせてそれを避ける。
「まだです!」
だがそれも予想していたニーナは能力を解除する。
すると圧縮されていた土が一気に解放されマダルノ蛇の身体の上に募る。
その量は巨体であるマダルノ蛇の身体を三分の二以上を埋めるほどの量。そしてその使った土には水が混じって泥状になっている。
「お姉ちゃん!」
「はああぁぁぁぁっ!」
「!...⁉︎ギュジャッ⁉︎」
その重みによって身体を動かすことが出来ずにいる所をサナが渾身の一撃をマダルノ蛇の頭にぶつけた。
しかしマダルノ蛇は倒れない。
泥で身体が抑えられているとはいえ頭から少しは動かすことが出来る。
つまりまだマダルノ蛇は戦えるということだ。
硬い頭部だったためサナの渾身の一撃でも完全に倒すことは出来なかったのだ。
今のサナのレベルなら大岩でも今の一撃でなくとも粉砕出来るほど。それでもなお出来なかった硬さ。
それに驚愕を隠せなかったサナ。
「えいっ!」
「ジャシャッ⁉︎」
驚愕し止まってしまったサナの背後からニーナが長さ一メートル強、幅三十センチほどの木槍を投げる。
その槍はマダルノ蛇を穿ち、柔らかい腹から投げられたため背中まで貫通した。
それが決めてとなったのかついにマダルノ蛇が倒れた。
「お...終わった」
「つ、疲れたよ....」
動かなくなったマダルノ蛇を見ながら荒くなっている息を整える。
「良かった、勝てたのね」
「みん、な頑張っ、た。お疲、れ」
すると背後からユキナに支えられながらキリが二人の元へとゆっくりと歩いて来る。
まだ魔力不足によって自分の力では満足に動けないのだ。
「あの女の子は?」
「大丈夫、ちゃんと村の人に任せてきたから」
「アズマさんには会いませんでしたか?」
「ええ。何やってるのかしらね」
サナがそう不貞腐れたように言い、全員で村の方へと歩いて行く。
マダルノ蛇はユキナの能力で先に村まで飛ばしておく。
泥槍より土槍の方が良いかな?っと思ったので土槍としました。




