大打撃、そしてもう一つの弱点
サナが少女を連れて走り出した一方、キリたちはマダルノ蛇がサナを追わないように連続攻撃で邪魔していた。
「ふうっ!」
「っ!、ン、ジシャアッ!」
「くっ⁉︎」
キリが木々を枝伝いで跳び渡り、マダルノ蛇の死角へ回ってから一気に斬りかかろうとしたが寸前の所でキリの攻撃は避けられた。
さらにマダルノ蛇は身体をくねらせ死角から襲ったキリの方を向き毒弾を三発飛ばしてきた。
その毒弾を空中で身を返し避ける。
キリが着地をする頃にはすでにユキナが双剣で斬りかかっていた。
「んっ!」
「ジシャッ⁉︎、シャアッ!」
「させません!」
「ジシャッ!」
マダルノ蛇がキリに集中しているうちに近づき、右横からクロス切りをお見舞いした。
しかしその攻撃は予想よりも浅く入る。
そして攻撃されユキナの存在に気がつき攻撃を仕掛けようとしたがそれをニーナが能力で作った三十センチほどの土槍を二本、マダルノ蛇の腹部に目がけ投げ飛ばした。
察知していなかった攻撃を受け、ユキナへの攻撃を止めニーナを方を見、突進した。
その際に一番近くにいたユキナがマダルノ蛇のその突進のスピードについて理解した。
突進する少し前にまるで人間のように身体を引き、尾に踏ん張りをつけ跳んできていたのだと。
突進してきたマダルノ蛇の左へ跳び避ける。
ダンッ!
そう大きな音が鳴るとすでにマダルノ蛇の進路はニーナの跳んだ方角へと向いていた。
「っ!ごはっ‼︎⁉︎」
「「ニーナ⁉︎」」
辛うじて反応し跳んだが間に合わず横腹に当たり、その威力にニーナは吹き飛ばされた。
「このぉっ!」
キリはそれに怒り、マダルノ蛇が茂みの中へ吸い込まれるように入っていた場所へ蹴って近づき剣で一閃する。
茂みが切れ、葉が舞うがそこにはすでに蛇の姿はなかった。
「ニーナ、大じょ、う夫⁉︎」
「ごほっ!ごほっ、けほっ...大丈夫、です」
四つん這いになり血を吐き出してから擦れた声でニーナが答える。
残念ながらその声からは大丈夫とは思えない。
「あっち、で回復し、よ。『標的』」
「きゃ!」
ユキナが能力でニーナを木の陰まで飛ばす。
魔力を調整すれば威力を出さずに飛ばすことが出来る。
「治癒か、く持っ、てる?」
「ひゅぅ....はぁ...だ、大丈夫、でごほっ!....持ってます」
まだ呼吸が満足に出来ていない。だが今の咳で血を吐いていないのと会話出来ているため多分肺はやられていない。
「(なら治、癒核でなん、とかなるは、ず)」
本当は自分が治してあげたいが今ユキナが回復へ回るとキリ一人でマダルノ蛇の相手をしなくてはならない。
保ちはするだろうがそれでも厳しいことに代わりない。
「ごめん、なさい。自分でが、んばって」
ニーナにそう言い残してユキナはその場を去る。
「はああぁぁっ!」
「シャ⁉︎ン、ジシャッ!」
「っ!」
「こ、のっ!」
「!ジシャッ!」
マダルノ蛇の背後からキリが数十の突きを繰り出したがあまり深く刺さらなかった。
その攻撃を受け、キリへ振り返ったと同時に毒弾を三発放ってきたがなんとか空中でそれを避ける。
キリに集中しているマダルノ蛇に向けてユキナが隠しナイフを取り出し左右の手から三本ずつ『標的』を使い投げ放つ。
が、キリに集中していたと思っていたがマダルノ蛇はその攻撃を身体をくねらせてそれを全て避けた。
能力によりかなりの速度で飛んだナイフを全て、だ。
そのため投げられたナイフはあらぬ方向へと飛んで行った。
「ン、ブシャァッ⁉︎」
「甘、い」
ユキナに向けて毒弾を放とうとしたが背後から予期せぬ攻撃を受け、それが止まる。
身体中腹の背中に二、尾の辺りに三、右中腹に一本と刺さった。
『標的』を使っての攻撃は途中で邪魔されないかそれに込められた魔力が尽きない限り追い続ける。
本当に避けられるとは思っていなかったが当たらないことは想定して攻撃するようにしていたのが幸いした。
「一気に行くわ!」
そう言いキリが能力、『迅速』を使って一瞬にしてマダルノ蛇へ近づき一閃、否三閃を振るう。
「えっ⁉︎」
「ジシャッ⁉︎」
しかし攻撃した三箇所を見てキリが思わず驚きの声を上げたのとダメージを受けたマダルノ蛇が痛みの声を上げたのが重なる。
キリはさっき、三閃で一周するように切ったのだが内の二閃、背中に当たる場所だけが浅く入ったことに驚いたのだ。
腹にのみ深く入ってはいるが残念ながら致命傷にはなっていない。
キリは一旦距離を取り、森へ身を潜めながら木々を避け走り先ほどニーナを休ませた木の陰で様子を窺っているユキナの元へ戻る。
どうやらキリの攻撃がさほど効かなかった時に彼女も同じ考えでいたようだった。
「ニーナ、大丈夫?」
「は、はい。心配をおかけしました。もう大丈夫です」
そこにはニーナもマダルノ蛇を警戒しながら木陰に立っていた。
先ほど擦れていた声もいつもの彼女の声に戻っている。回復後に水を飲んだためだ。
「多分弱点はお腹だわ」
「背な、か硬い」
「ですね。私の能力もお腹なら効きました」
キリは自分の考えを肯定されたので曖昧だった考えは確信へと変わった。
「なら私とユキナでまずは攻撃するからその間にニーナは特大のをお願い。出来次第戦闘に参加して、ユキナはそれと同時に後退してその槍を能力で飛ばして。その後すぐに攻撃を再───」
「ジャシャアァァァッ!ン、」
キリが作戦を述べているとマダルノ蛇が今までよりも大きく叫ぶと毒弾の時のような溜めに入る。
しかしこの場合マダルノ蛇はキリたちの位置を把握していなければ毒弾を放とうとはしない。
ではなぜ今マダルノ蛇はキリたちがいるであろう方向とは別の方を向いているか。それを疑問に思っている時に答えは出された。
「シャアァァッ!」
「⁉︎」
それは薄紫色をし木々の間から刺す光によってキラキラ美しくもある毒の霧。
キリたちは今相手しているマダルノ蛇が希少種のマダルノ蛇であったこと悟らされた。




