ダンジョン 35階ウォータイガー 40階古竜
そんな調子だったので俺らはすぐにボス部屋の扉の前までこれた。
「ここが35階のボス部屋か」
「先に体力を回復させておく?」
「うーん。キリはあとどれくらい残ってる?」
「えーと、残り4560」
「そうか。俺はぁっと、5210か。ボスもかなり強くなってきているしここらで休憩して体力が回復してから行くとするか」
「うん。それで良いよ」
「それじゃあ、ご飯にする?」
「やったっ!」
おおめっちゃいい笑顔。キリはかなりの美人で蒼色が銀髪と白い肌にとても似合う。こんなに可愛い女の子なのに、こんなにスラッとしているのに、すごい食欲を持っている。
今も宝物庫から出した30階で倒したエレファント(マンモスのような魔獣)の肉、多分1kgはあるだろう山盛りの肉と迷路で遭遇したソウチュウバナの花(花びらがレタスのようになっている)とウッドマンの実を5個ほどがキリの目の前にある。そしてそれらがみるみる減っていく。
「んんっ⁉︎んん!んん!」
「ど、どうしたっ⁉︎」
「の、喉が...」
「...あのなー」
呆れながら宝物庫から薄い青色の水儒核の小さな破片を取り出してキリに渡す。キリが顔を上に上げて口を開けて水儒核の破片を顔よりさらに上に上げると水儒核が薄っすらと光、水儒核の破片の先から水がチョロチョロと出始めた。
水儒核は魔力を流すとそれに比例して水が出るという物で、33階のボスだった五輪儒核の核の一つだ。火、水、風、電気、回復の5つの核がゴーレムの胸にソフトボールくらいの大きさの球体で五角形の形ではまっている魔獣だった。
「ん、ん、ん...ぱあっ!ありがとう東」
「気を付けて食べろよな」
「えへへー、ごめんなさい」
俺に謝ると再び食べ出すキリ。こりゃ懲りてないな。
俺はもう諦めて宝物庫からエレファントの肉とソウチュウバナの花を取り出して食べ始める。うめー。ゴブリンの肉の何十倍も美味い。
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「さ、体力も回復したし行くか」
「うん」
俺とキリは互いに扉を押して扉を開く。扉を開けて中を覗くとクリスタルが光、部屋の中が明るくなる。
30階からボス部屋にはクリスタルが置かれてあり、扉を開けると光出すようだ。回収しようと剣の頭で叩いたりしたが全く壊れなかった。ウォーミルを使おうにも水がないからか効果がなかった。
さて直径約9メートルのボス部屋の奥の壁の方を見ると水が膨らんだ何かが起き上がった。その姿はまさに虎だった。身体は水で出来ており全長4メートルくらい高さ2メートル半くらいの虎。
目に力を入れる感じで魔眼を発動させる。
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ウォータイガー:攻撃準備
Lv.63
特殊:身体全部が水
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ラッキー。身体全部が水ならウォーミルが使えるな。
「キリ、すぐに終わらせてやるから見てな」
「え?」
俺はそれを言い終えるとウォータイガーへと走り出す。
「ガアァァァァァァ!」
ウォータイガーも俺が近付いて来たので戦闘体勢へと構えてからこちらへ走って来た。
「ガアァァッ!」
「よっ、っはぁ!うえっ⁉︎」
ウォータイガーが左手の水の爪で攻撃して来たのを避けて剣でその腕を手首くらいのところを切りつけたが、腕は切り落とすことが出来たが切り落として腕から離れた水の腕が水になってまるで水風船を割ったかのように水が散乱した。その水をまともに食らってしまいベタベタになってしまった。
しかも切ったはずの左手がすぐに元に戻ってしまった。
「この野郎っ!」
剣で斬りつけたが避けられてしまった。だが俺は諦めずに追って攻撃をしていく。要はシャイニングジャクと同じようにするのだ。
....今だ!
「ウォーミル!」
「ガアァァ⁉︎ガアァァァァッ!」
「っう⁉︎」
「東!」
ウォータイガーの左首くらいを右手で触ってウォーミルを発動させたのは良いけれど、その隙を突かれて水の爪で腹の辺りを切られてしまった。
「大丈夫、東⁈」
「いてて、ああ何とかな。だがあいつに触ることが出来たからもう大丈夫だ」
右手に勢い良く力を入れる感じでウォーミルの温度を上げる方を発動させる。
「ガアァァァァッ⁉︎」
ウォータイガーの触ったところから湯気が出始めた。
「これでどうだっ!」
「ガアァァァッ⁉︎」
右手の力をさらに強くするとウォータイガーがさらに苦しむ。湯気の量も増える。
しかし少ししてから湯気はなくなったがウォータイガーはピンピンしていた。
「なっ、何で⁉︎」
「ガアァァ、ガアァッ!」
「うわっ⁉︎」
「きゃっ⁉︎」
ドォンッ!
ウォータイガーが口を開けると水の玉がが口の中に出来たかと思うとこちらへ撃って来たのを避けたは良いが威力が強かったらしく地面の破片と煙が飛んできたので俺とキリは驚いた。地面を見ると20センチくらいの穴が空いている。
「あははー、どうやって倒すんだ?」
「東でしょ、すぐに終わらせてやるから見てなって言ったの」
「あははー、面目ない」
「まあ今はあれを倒さないとね」
「ああ、そうだな」
「ガアァァァ、ガアァァッ!ガアァァッ!ガアァァッ!」
「っよ!っと。っふっ!」
「っふ!」
ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!
再びさっきの水の玉を3発撃って来たのを互いに反対の方へ逃げる。俺に2発キリに1発。
くっそー。どうやって倒すかなー。水、水の特徴は100度くらいで沸騰、0度で凍る。電気を良く通す。
.....
「ダメだ!分からん!」
「蒸発させるのは?」
「ウォーミルが効かないから多分普通の火でも無理...無理じゃないかも!」
「え?」
「ガアァァァァァァ!」
「っく、このっ!」
ウォータイガーの攻撃を避けて攻撃しながらキリと話しているがあることに気づいた。てか今の状況ってあの騎士団長と変わんねーや。
「ど、どうするつもりなの⁈」
「キリ!悪いけどあいつの気を引きつけておいてくれ!」
「?...分かった。...はあーっ!」
キリは俺の言葉を信じてくれた。俺は宝物庫から赤色の小さな破片を数個取り出し視線をキリたちの方へと移すとキリがウォータイガーの攻撃を躱して攻撃をしようとするがウォータイガーがもう一度攻撃して来たのをまともに受けていた。
「キリ!もう良い!」
「大...丈夫。これで終わるから」
「...⁉︎」
キリがそう言い終わると一瞬でキリの姿が見えなくなったかと思うとウォータイガーの足元まで来ていた。いつの間に⁉︎
「はあぁ!」
「ガアァァァ⁉︎」
キリがウォータイガーの後ろ右脚を切り落とした。
「キリ!ありがとう!こっちまで来てくれ!」
「うん」
ウォータイガーから1メートルくらいのところにキリを呼ぶ。今度のキリはウォータイガーを警戒しウォータイガーの方を向きながら後ろ飛びで俺の方へと来る。
「でもどうするつもりなの?」
「キリが言った通り蒸発させる。これを使って」
「それってあの時のゴーレムの火炎核?」
破片をウォータイガーの方へと向けて破片に力を送る感じで破片の力を使う。すると破片が次々と赤く光り出し破片から火がいくつも出て合体し炎となってウォータイガーの方へと向かって行く。
「ガアァァァァ、ガアァァッ!ガアァァッ!」
ジュウゥゥゥゥ!ジュウゥゥゥゥ!
ウォータイガーがあの水の玉で炎に攻撃しているが炎の方が威力が強いのですぐに蒸発する。
「ガアァァッ!ガアァァァァ⁉︎」
ジュウゥゥゥゥ!
諦めずに今度は爪でかき消そうとしたが炎によって蒸発した。そしてついに炎はウォータイガーへと届き、ウォータイガーが炎に包まれた。
「ガアァァァァァァッ⁉︎ガアァァッ⁉︎ガアァァァァァァッ⁉︎」
ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
破片からはまだ火が出ている量がウォータイガーの水の量を上回っているらしくもう炎も見えないほどの水蒸気が出ている。
....少しして俺の体力が持たなくなり力が弱まっていき、ついに火を出すことも出来なくなった。火が消えるとそこにはウォータイガーの姿はないが、代わりに普通の虎の丸焼き状態で立っていた。
「はあ、はあ、はあ」
「東、大丈夫⁈」
「あ、ああ、破片に魔力を使い過ぎた。はあ、はあ」
破片を持っておいて良かった。俺とキリは回復の破片で傷を癒す。
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傷を癒した俺たちは少し休んでからダンジョンを進めて行き今俺たちは40階ボス部屋の扉前にいる。
進めて行く上で33階で回復の破片、治癒核を取れたのはとてもありがたかったっと思った。
ここに来るまでに遭遇する魔獣やボスが強くなっていくので傷を負うことは少なくない。魔力は少し休めば回復してくれるのだが俺には一応ドレインがある。ドレインを使えば対象に触れている間だけ体力と魔力を吸って俺の物に出来る。なので迷路で遭遇する魔獣たちからいただいたりすることが出来る。
ついでに迷路の魔獣たちでウォーミルの水の温度を下げるという実験もしてきた。温度を下げるには手の力を身体の方へ流す感じでやれば温度を下げて凍らせることも出来た。
「さ、行くとするか」
「うん」
俺とキリは互いに扉を押して扉を開ける。
ギイィィィィィィ
扉を開けて少しするとクリスタルが光出し洞窟内が照らされた。洞窟の大きさは直径約15メートル
くらい。その洞窟の奥の壁の方に何か黒い大きいものが起き上がった。
「「⁉︎」」
俺とキリはその起き上がったものに目を見開いた。起き上がったのは誰でも知っている大きなトカゲの姿に似ていて全長7メートルくらい高さ4メートルくらいで背中には2メートルくらいの大きな翼が2枚付いているまごうことなきドラゴンであった。ドラゴンって普通ゲームとかだと最後くらいじゃないのか?まあ異世界だから普通が通じないのかもしれないしね。
目に力を入れる感じで魔眼を発動させる。
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古竜:攻撃準備
Lv.75
特殊:硬い鱗と鋭い牙と爪
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レベル75かー。俺のレベルが77でキリが75。勝負はギリギリになるな。
魔眼の力を弱める。
「久しいな、人間がここまで来るのは。何百年ぶりかな」
「「⁉︎」」
俺とキリは声の主を探すために辺りをキョロキョロする。
「い、今声が⁈一体どこから?」
「私じゃよ」
俺とキリは私と言った古竜の方を見る。
「え!この竜が喋ったの?」
「そうじゃよ」
「え!でも!」
「我々竜は歳を重ねていくごとに成長をし、古竜から人間の言葉を話し始める。だから驚くことはないぞ」
「いや、驚くなって言われても」
「さて、そろそろ始めようかな?」
「「んん!」」
古竜の言葉に俺とキリは剣を古竜は攻撃の体勢を構える。
「行くぞっ!」
「っん!」
「っう!」
ドンッ!
古竜が翼を上げ羽ばたきその勢いで飛んで来たのを散開して避ける。
「はあぁぁぁぁぁ、はあっ!」
「っと!」
ドォンッ!
古竜が口から火炎弾をためソフトボールくらいの大きさになったら俺の方に放って来たので横に飛んで避けた。
「このっ!」
「ふっ!」
「っく!」
火炎弾を放って出来た少しの隙を突いてキリが飛んで剣で翼を攻撃しようとしたが古竜は横から尻尾で攻撃してきたのを何とかキリが剣で防いだ。飛ばされはしたが空中で体勢を直して着地する。あいつに触ることさえ出来ればほぼ俺らの勝ちなんだが。
「はあぁぁぁぁぁぁ、はあっ!はあっ!はあっ!」
「っく、うがぁ⁉︎」
「っふ、東大丈夫⁈」
「ああ、かすっただけだ」
今度は火炎弾ではなく火の槍15センチくらいの大きさだがそれを少し避けきれず少し足を切られた。俺に2発キリに1発。あれこれどこかで?
「休憩なんぞさせんっ!」
「っく!」
「っえ!」
ドンッ
古竜がそう言い終わると爪で攻撃して来たのをギリギリ避けた。
「ふんっ!」
「っと!...おらっ!」
「ぐっ⁉︎はあっ!」
「おっと!」
俺が古竜の攻撃を避けた後にすぐ尻尾を叩きつけて攻撃して来たのを横に避け剣で尻尾の先端を切り落とす。だが古竜は左爪で攻撃して来たので飛んで避ける。
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「はぁ、はぁ、強い」
「はぁ、はぁ、おりゃあっ!」
「っふ、はあぁぁぁぁ、はあっ!」
「このっ!」
俺の剣の攻撃を避けられて火炎槍を撃って来たが目が少し慣れたので何とか切って避ける。
「やああぁぁぁっ!」
「っふ」
「はあぁぁぁぁぁっ!」
「なっ⁉︎くっ⁉︎このっ」
「がはっ⁉︎くっ」
キリの攻撃を古竜は難なく避けたが、反対の方からの攻撃は避けることが出来なかったらしく左目を切ることが出来た。しかし古竜が痛みに耐えて残り1メートルくらいになったしまった尻尾を振ると、横へ吹っ飛ばされてしまったが何とか空中で体勢を整えて着地した。
古竜を見ると息を切らしながらこちらを見ている。そんな古竜の左目からは見にくいが紫色の血が地面に垂れた。左目の瞼が閉じたままだ。
そろそろウォーミルを使わないとやばい。だが、鱗に触ってウォーミルを使っても何の反応もなかった。多分人で例えるとあの鱗は鎧と同じだからではなく直接皮膚に触らなくてはいけないのだろうがそんな隙はもうみせてくれるかどうか。まず隙を作るために使った小刀はもうないし。さっきの目への攻撃は剣のリーチがあったから届いただけで次も上手くいくとは思えない。
「はあぁぁぁぁぁぁ、はあっ!はあっ!はあっ!はあっ!」
「っふ、っふ」
「えっ!っん!」
火炎弾を連続で何発か撃って来たのをバク転や壁を使って飛んで避けるなどして避けた。
「はあっ!」
「っく、このっ!」
「はっ!」
「しまっ⁉︎」
「このぉっ!」
「はあぁぁぁぁ、はあっ!」
「っく!」
ガンッ、カンッ!
古竜の爪の攻撃を避けた勢いで?攻撃をしたが背中で防がれてしまった。それが原因で剣の刀身がほぼ半分で折れてしまった。
キリは古竜の後ろから攻撃しようと飛んで斬りかかろうとして火炎弾を撃たれたが、剣を使ってうまく?狙いを逸らした。やるー。
何て言っている場合ではないか。剣が折れたのはやばいな。賭け?るか。
「はぁ、はぁ、キリ!一か八かやってみるか!」
「?ああ。分かった。失敗しないでよ!」
「努力するよ」
「はあっ!」
「っく!っん!」
「何っ⁉︎消えた!」
「はあぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐっ⁉︎い、いつの間に⁉︎」
「はあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁ!」
「うあぁ⁉︎くっ、くっ、くっ、このっ!」
「ぐっ⁉︎」
キリに賭け?を頼むと攻撃しに行った。古竜がそんなキリに爪で攻撃して来た所を避け、キリはウォータイガーの時に使ったあの一瞬消えたように見えるあれを使った。これはキリの固有能力の『迅速』と言うそうだ。能力は魔力を使って自分の移動速度を急激に上げる。それを使って古竜の後ろへ回り首から上を切りつけた。さらに追い打ちで数回切りつけたところで古竜の翼の攻撃が当たり?キリが地面に吹っ飛ばされた。
「ふふ、面白い力じゃな。だがこれで終わりだ。はあぁぁぁぁぁ」
「ふっ!」
「がっ⁉︎な、このっ!」
「ウォーミル!うっ⁉︎」
キリを足で抑えて油断が生じた隙を突いて、古竜の頭に壁を蹴って飛んだ勢いを使い折れた剣を突き刺した。そして攻撃される前に右手でウォーミルを発動させたがそのせいで翼の攻撃を避けることが出来なかった。
「があぁ⁉︎」
「はぁ、はぁ、キリ大丈夫か?」
「ええ。だから早くお願い」
「ああ」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ウォーミル、全開!」
右手の骨が壊れるくらいの勢いで力を入れてウォーミルの温度を上げる。
「ん⁉︎んあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁぁっっぁぁぁぁぁ⁉︎」
「すげっ。ほぼ160℃くらいは出ているはずなのにまだ生きてるよ」
正確には心臓と脳を燃やしたんだけどね。
ドォンッ!
古竜が1分もせずにその場に横で倒れた。
「みご....と...だ....」
それを言い終わると古竜はもう動くことはなかった。




