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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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悩み、そして彼女の覚悟

 

 ファブルさんとリリーが去った部屋の中で、東は必死に頭を働かせていた。

 リリー奪還の方法を。

 そこで先に思い至ったのはユキナを助ける時のように武力行使による奪還。

 しかし今回はあの時のように上手くはいかないと予想出来る。

 理由はギルドが(から)んでしまっているから。

 リリーはギルドにとってアンタレス王国からのお尋ね者として扱われている。それでファブルさんが来たのだ。

 だからリリーを武力行使による奪還をすればギルドを敵に回すことになる。

 助けた後はリリーにはユキナに頼んでペンダントを着けていてもらえばバレることなく暮らせるだろう。

 しかし俺一人で済めば良いのだが、残念ながらそんなことをすればキリたちにも迷惑をかけてしまう。

 それでは困る。彼女らは何も悪くないのだから。

 そうなるとこれは最終手段にして他に何か考えないといけない。

 思いつくのは───


「──んっ⁉︎」

「ねえ!アズマ!」

「....うおっ⁉︎ビックリした!」


 考え込んでいると両の頬をパンッという音と共に痛みが走った。

 それにより考え更けていた意識が目の前の狐の少女へと向けられた。


「サナ....勝手に部屋に入ったらダ....」

「ちゃんとノックしたわ。五回くらい。いないと思って開けたらあなたがスゴい顔で悩んでたの」

「そうか....それは、悪かった」

「こっちもごめんなさい──それで、リリーはどこへ連れて行かれたの?」

「⁉︎なんで!」

「ニーナが教えてくれたのよ」

「ニーナが.....」


 そう言って視線を扉の方へ向けるサナ。それに続くように俺もそちらへ視線を移す。

 そこには心配そうにこちらを観ているみんながいた。


「あの子が廊下からリリーが連れられて行くのが見えたって言うから来てみたの。それで、何があったの?」

「──いや、ちょっとしたことでリリーが連れて行かれただけだ。気にしなくて良いよ」

「本当の事を話して」

「....悪かった、実は───」


 彼女の真剣な表情に誤魔化しは意味ないと悟った。

 先に手で椅子に腰かけるように促してから、さっきあったことを全員に話。

 それに加えてさっき俺が考えていた武力行使についても話ことにする。最悪の場合はそれを取るので、それにより多分みんなにも迷惑をかけてしまうからだ。

 数分ほどで話終えるとみんな困惑や(いきどお)り、東と同じように打開策を考え込んでいる。

 そんな中サナが厳かに口を開いた。


「理由は分かったわ。だから尚更(なおさら)アズマに言っておくわね」


 そう言い出すと全員の視線がサナに集まる。

 彼女は少し間を置いてから先ほどと同じように真剣な面持ちで続けた。


「あなた一人で解決しようとしないで。リリーは私達の大切な仲間なの。それはあなたも同じよ、アズマ。あなたの考えだと私達とはもう会わない気だったんでしょ?」

「.....」


 俺は何も良いかせなかった。サナの言っていることを考えての最終手段だったからだ。

 そしてその無言は肯定を意味したのだと()んだ彼女はさらに続ける。


「そんな事私達は望んでいないわ。あなたとも、リリーとも離れ離れになる事なんて。だから一人じゃなく皆でなんとかならないか考えましょ、ね?」

「そう...だな.....悪かった。みんなの気持ちももっと組むべきだったな」


 サナの言葉に他の全員が大きく頷いている。

 その顔には覚悟の念が窺える。

 彼女に(さと)され、見ようとしていなかった物を観せられた。

 彼女らだって自分と同じくリリーのことが心配なのだと。そして多分全員が最終手段としていた武力行使で()してでもリリーを助けたいのだと。

 ただそれだけの覚悟が必要なほどアンタレス王国では罪人となることは危険であるのだと認識させられた。

 数分前に抱いた淡い希望は多分(つい)えた。

 なら一刻も早く何か練らなければならない。

 必ずリリーを無事に助けるために。


「.....ねえ、アズマ」


 そう意気込みを固めた所でユキナが声をかけてきた。

 彼女の方を見るとその表情は不安と恐怖で(おび)えているような、そんな暗い表情だった。


「どうした?」


 無理もない、そう思いながら彼女に言葉を返す。

 数秒間を置いてから彼女は恐る恐る口を開いた。


「わた、しが危な、い目にあった、ら。助けて、くれる?」

「当たり前だろ、何かあったのか?」


 不安と恐怖が入り混じった表情のユキナ。

 そこからさらに彼女は続ける。


「もしわた、しが、悪い子、で嫌われ、てても、一緒に、いてくれ、る?」

「もちろん一緒にいるさ。それにユキナは悪い子なんかじゃない、だからそんな暗い顔をしないでくれ」


 それを聞いたユキナは少し(うつむ)いて震えている。

 それに手を伸ばそうか少し迷っていると、ふいに彼女は顔を上げた。


「最後の、確に、ん。リリーを助、けられるかも、だけど、可能せ、いが低い。それで、も聞く?」

「「「「⁉︎」」」」


 その言葉に全員が反応した。

 彼女はリリーを助けられる方法があると言った。それは今必死に策を考えている彼らにとって興味を引くものだった。

 今は可能性ではなくより多くの策が必要だからである。

 多ければ多いほどその中で可能性は変化する。

 作戦は幾千幾万と組み立て変えられるものでもあるからだ。

 全員の反応を、特に東の反応を観ていたユキナ。東が頷いたのを観た彼女は覚悟決めて口を開いた。


「な、ら、エルフの里、に行こ」


 その言葉に一同はさらに驚愕した。


エルフの里、私も行ってみたい。


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