阻止、そして落下
視点変更
時間は少し戻り、煙幕が張られた頃。
忠告をしたが女はそれを断り、ワイバーンに乗って街の方へと向かって行く。それらの動きは本来なら煙幕で見えないが、俺にとっては特に問題ない。
煙幕が張られた時点で『魔眼』で透き通し見えるからだ。
まあ、そんなことはどうでも良くて...
あー、なんで行くんだよーっ!
ドゴッ!
怒りで思わず地団駄を踏んでしまった。そのせいで地面が数センチ陥没してしまったが今はそんなこと気にしていられない。
眼に魔力を流し『千里眼』を発動させ睨むように彼女らを見る。
飛び立ったワイバーンは三頭。それぞれに人が乗っているが、一頭だけに二人乗っている。
まあ、途中から『魔眼』で全員がまあまあの知り合いってことは気づいていたけどまさかワイバーンもグルとは。
....いやグルって言うのか?
とりあえず飛ぶか。
そう思い眼で見えたワイバーンの先の所にゲートを繋ぎ空中に出る。
視界には俺を観て驚いている四人が映る。
能力発動のため手に流している魔力を多くする。
「落ちろ」
「「「グギャラァァァァッ⁉︎」」」
「「「「っ!」」」」
『麻痺』の能力で三頭のワイバーンの翼の機能を麻痺させる。それにより飛べなくなったワイバーンはまるで石化したように落ちていく。
乗っていたやつらの実力ならこの高さでも死なないだろうけど、俺のせいで死んだら夢見悪いし使っておくか。
宝物庫から風尚核を取り出す。
これを彼女らが落ちるだいたいの位置にゲートで先送りし、そこで一気に魔力を注ぐ。
それにより強風が起こり、落下の威力を抑える。その代わり木々が数本浮いたけど、大丈夫だろ。
だがその風だけではさすがにワイバーンまで十分に落下の威力を抑えることが出来なかったようでドオォンッと地響きが響いた。
さて............あんまり考えずにゲート繋いだけど、降りる時どうしよう?
そう思い、それの対策を考えながら落ち始める。
うーん、パッと思いつくのは二つ。一つ目はさっきの強風で威力を抑える。二つ目はゲートで落ちる間の距離をカットする。
前者は成功率は高い。まあ、さっき実行しているが成功したかは知らないから本当に高いかは不明だけど。
後者は成功率が低い。物体が落ちる時に距離が長ければ落ちる物の威力は増す。隕石も似たような物だろうしー憶測ですー。
その増す部分をゲートで限りなく減らし、威力を落としてダメージを減らす。
怖いから他に何か、策は...
よし!湖に行こう!
確かアトラス州行く途中にちょっと離れてはいたけど湖があったはず。名前なんだっけ?
まあ名前は後で良いけど、とりあえず湖へ飛ぼう。
そう決めて落下の先にゲートを開く。
「んぐっ」
俺がゲートで繋いで飛ぶのは水の中だ。
水の表面は落下威力によっては硬さはコンクリートに匹敵するらしい。だから水の中に潜れば大丈夫と踏んでだ。
ただゲートから直で水の中に入るのは結果として落下からのダイブと変わらないから先に風尚核を送り鯨の潮吹きみたいなのを起こす。
うん、これが間違いだった。
本当はスライダーみたいに水の中に入れると思っていたのだが、逆の結果となった。
スライダーではなく水柱が生まれてしまった。それもかなり高威力の。
それにより落下威力は軽減されたが、代わりに今度は水柱によって飛ばされてしまった。
数秒くらいで風尚核に流した魔力がなくなったため水柱も弱まり再び落ち始めた。
「あー、そろそろ日が暮れかけてるな。早く帰らないとな」
そう思うけれどたった今考えた打開策が無理だったと証明してしまった以上他を考えるしかない。
「うーん、何か良い方法は....あ!」
ある名案を思いついたので宝物庫から水儒核を取り出す。
一気に魔力を流しかなりの水を出す。さっきの水柱ほどではないがそれでも大浴場の湯船を満たす以上は出ている。
これに、『ウォーミル』を使う。
それにより水柱は氷柱になる。後はその氷の柱に一角狼の角を刺すだけ!
「っふ!と」
ぷらーんと吊られた状態だがこれでもう落ちる心配は....
パキッ
「?パキッ?」
何かガラスのような物にヒビが入ったような音が鳴る。
ピキッ....パキキッ.....
「!も....もしか、して.....」
俺は嫌な予感を抱きながら音が鳴っているであろう方向に恐る恐る視線移す。
「いっ⁉︎やっぱりっ⁉︎」
こういう時の嫌な予感ってなぜかよく当たる。
視線を向けた先には一角狼の角が刺さった場所から徐々に氷にヒビが伝って行っているのが映った。
そして俺が慌てている間にヒビは伝わり続け、氷柱はバキンッと盛大な音を立てて折れた。
ただそこまで地面との距離がなかったのが幸いして怪我などせずに着地出来た。
それとちなみにだがヒビの入った氷に『ウォーミル』を使用してもヒビは修復出来ない。ヒビは水ではないからな。
まあ何はともあれ無事だったのだから結果オーライということにして、さっきまで戦っていた場所へ飛ぶ。




