表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/516

ダンジョン 12階ヘドロスライム 18階ガルダワニと騎士団

 荷物をまとめて次の階へ行き石段を慎重に降り、石段から少し顔を出して洞窟内の様子を窺う。

 洞窟の真ん中に茶色の水たまりの中に赤色の水たまりがあるだけだった。

 なんか日本の日の丸国旗みたいだな。

 白じゃなくて茶色だけど。

 赤色の水たまりの大きさ直径は10センチくらいで茶色の水たまりの大きさは直径80センチくらいはある水たまりにしてはかなり大きいが問題はそこではない。

 この洞窟には2階上にある池のような物はないし上から水が落ちているような音も聞こえない。

 周りを見ても水が流れ集まっている様子もない。

 それにも拘わらず洞窟の真ん中に茶色の水たまりがあるのだ、ましてや赤色の水たまりは茶色の水たまりと混ざっていないのだから、これはもう魔獣だろう。

 いつも通りのやり方で『魔眼』を発動させる。


 __________________

 ヘドロスライム:就寝

 __________________


 スライム...スライム⁉︎

 スライムってゲームとかで勇者とかが最初に戦うモンスターだろ?

 ゴブリンの次か、その前くらいに出て来るようなモンスターが半分より下の階にいるって....かなり強いのかもしれないな。

 まあスケルトンも切っただけではダメでも頭蓋骨を割ったあと(よみがえ)らなかったし、俺の薄いファンタジー知識はあんまり役に立ちそうにないな。

 さてスライムだと倒し方が思いつかないな。

 だって水の魔獣ですし。

 どんな魔獣なのかがよく分かっていない以上は最終手段として、火で蒸発させるになるかな。

 剣は鞘に納めて戦うことにする。

 相手がスライムじゃ剣は使い物になるか微妙(びみょう)だしね。


「(火は事前に上の階から持って来ておいた方が安全だな)」


 そう思いスライムに気づかれないように慎重に石段を登って行き上の階へと着いた。

 ...カランカラン...カランカラン

 二本で良いかな?


「それじゃあ行きますか!」


 独り言を呟いて石段を降りて再び顔を少し出してヘドロスライムの様子を窺う。

 ヘドロスライムはさっきと同じ位置で大人しくしている。

 俺はヘドロスライムに気付かれないように石段を慎重に降りて行き一番下の石段まで降りたがヘドロスライムはまだなんの動きもない。

 今までならこの時点でバレることもあった。

 そのまま俺はなるべく足音を立てずにヘドロスライムへと近づき、ヘドロスライムから50センチくらいという距離まで近づいても一向にヘドロスライムは水たまりのままである。

 俺が思うに多分これは(トラップ)なのだろう。

 侵入者が水たまりだと思って足を入れた途端にガブッって感じのしょぼい罠か何かなのだろう。

 目に力を入れる感じで再び『魔眼』を発動させる。


 ______________________

 ヘドロスライム:攻撃準備

 ______________________


 これ攻撃準備なんだ。


「(俺の予想通りなら松明を食べさせてみるか。多分倒せないだろうし)」


 そう思い手に持っていた松明を一本、ヘドロスライムの赤い水たまりへと放り投げた。


「キュアラアァァァァ!」


 ヘドロスライムは火のついた松明が水たまりに当たった途端、水たまりだったヘドロスライムは球体になってから平たく潰れた饅頭(まんじゅう)のようになった。

 それにしても外側が茶色だから中は見えないと思ったのだが普通に体内の松明の様子が見える。

 て言うか、あの赤色の水たまりは球体の形で、だいたい野球ボールくらいの大きさだ。それがヘドロスライムの中心に浮いているけどあれって一体いいぃ⁉︎


「キュアラアアァ!」


 松明がヘドロスライムの中で溶け始めているし、なんでかヘドロスライムからシュゥゥゥゥって音も出ている。

 それにいつの間にかに火も消えているし、木が溶け始めている。

 あの身体は酸か何かで出来ているのか?

 でないとあいつの今いる地面は溶けていないと...いや、だったら水たまりの時にすでに地面が...止めておこう、頭痛がしてきた。

 さて、だとしたらどう倒すか。


「キュラアァァァァ!」

「くっ!」


 ヘドロスライムがその場で触手のように自分の身体を伸ばして来たのをギリギリで避ける。


「(もう少し観察しないとこの魔獣はさすがに無理だな。一旦上へ逃げるしかないな)」


 そう考えヘドロスライムの様子を窺いながら急いで石段を目指す。

 途中で逃すまいと触手を伸ばしてくるので、払い除けようともう1本の松明で触手に触れた。

 すると火がある部分から松明の半分ほどを触手内に取り込むと、溶かして始めた。

 即松明から手を放し、次からは触れないように逃げる。

 そして急いで階段を駆け上がる。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 上の階に着くと石段から距離を取って、息を整える。


「さて、どうやって倒すかな?そう言えばヘドロスライムの身体の真ん中くらいに赤色の球体があったけどあれは一体なんだったんだろうか?」


 ああいう体内にある赤い球状の物って漫画とかだと核って言われてて、それを壊すと動かなくなるとかあるけど...まさかね。

 まあ他に方法もないしこれで行くか。

 松明が溶け始めるのに10秒くらいの時間がかかっていたからその間にあれをどうにかしないとな。

 とりあえず剣で、いや剣が溶かされないとも限らないな。

 仕方がないから松明で何とかするか。

 剣で松明の火の付いているところを切り落としてから小刀で木の先端部分くらいを(くい)のように削る。

 幸いなことに松明の形が正四角柱だったのでかなり削りやすかった。

 一分もかからないうちに杭が出来上がった。

 さて、行きますか。

 再び下へ行くための石段を慎重に降りて行く。

 洞窟内を見るとヘドロスライムは再び水たまりの姿へと変わっていた。

 松明が当たっても水たまりの状態の時は効果がなかったし、なんとか饅頭のようにしないと攻撃が通じないのだろう。


「(とりあえず小石で良いかな?)」


 そう思い地面に落ちていた小石を2個拾い、ヘドロスライムから1メートルくらい離れたところまで近づき、ヘドロスライムへと小石を一個軽く放り投げる。

 真ん中より少しこっち側くらいに小石は落ちた、その瞬間だった。


「キュアラアアァァ!」


 ヘドロスライムは再びあの饅頭の姿へと変わり小石を体内へと取り込んだ。


「キュアラアアァァァ!」

「っと!」


 ヘドロスライムは自分の身体を触手のように伸ばして、俺の腹くらいを狙って来たのを後ろに軽く飛んで回避する。

 ヘドロスライムにはあまり力がないようで俺に当たることなく地面を攻撃し、攻撃された地面はヒビも入ることはなかった。

 ヘドロスライムはすぐに伸ばした自分の身体を元の?饅頭の形へと戻した。

 多分今狙っても避けられるだけなので石壁で何とかする。

 小石をヘドロスライムの後ろの石壁めがけて投げる。

 ドォンッ!ドガッ!ドン!


「キュアラアァァ⁉︎」


 ヘドロスライムは石壁を壊して出来た瓦礫(がれき)が次々と落ちていくのに驚き目はないが多分そちらに気をとられている今がチャンスである。

 今の俺とヘドロスライムの距離は1メートル半くらいある。

 外す訳にはいかないので右足に目一杯の力を入れて地面を蹴る。

 ドォンッ!


「キュアラアアァァ⁉︎」


 俺はヘドロスライムへとみるみる近付いて行く。

 地面を蹴った時の音でヘドロスライムはこちらを向いた(と思う)がもうすでに杭を投げられる距離まで近付いていたので左足が地面に付く瞬間に俺は核めがけて杭を投げた。

 ....パキンッ!

 ガラスが割れたような音が洞窟に反響した。


「キュアラアァァァァァァ⁉︎」


 その直後ヘドロスライムの甲高い叫びが洞窟内で反響しヘドロスライムの姿が茶色の水たまりへとなったが今までのと違い、茶色の水たまりの真ん中に赤色の水たまりの代わりに赤色の水晶のような破片が散らばっていた。

 目に力を入れる感じで魔眼を発動させる。


 ________________

 ヘドロスライム:死

 ________________


「良し!死んでるな」


 魔眼の力を弱める。

 俺はこの場にかがんで破片を手に取る。


「この破片は何かに使えるか?」


 とりあえず破片を手に取れるだけ手に取り、それを質屋でもらった小さな革袋に入れて紐を結んでさらにそれをボクサーバッグに入れる。

 その後は何事もなく18階まで降りてこれた。

 そこで何人かの騎士団の人たちが戦っているところだった。


「くっ!(ひる)むな!体勢を整えろ!」


 右手に1メートル20センチくらいの片手剣、左手に病院の地図記号の形の縦1メートル横80センチくらいの盾を持った右眼に刀傷の跡がある、俺を怒鳴って追い返そうとした多分騎士団長だと思うあのおっさんが魔獣から距離をとって戦っている団長と同じなりの騎士たち、ざっと30人くらいの騎士たちに大声で指示を出していた。


「(最初に比べてかなり減っているなぁ。洞窟内に倒れている人がいないってことは他はこの下の階でやられたのか?)」


 騎士たちに疑問を思いながら目に力を入れる感じで魔眼を発動させる。


 ________________

 ガルダワニ:攻撃中

 LV:38

 特殊:頑丈(がんじょう)な牙と(うろこ)

 ________________


 ガルダワニの見た目は全身赤色の鱗に覆われており、眼はオレンジ色に輝いている。

 高さ1メートル全長3メートル、尻尾を入れると4メートルくらいはある。

 頭部だけでも買い物カゴくらいの大きさがあり口から上下に2本ずつ15センチくらいの牙が出ている。

 尻尾には左右に三角柱の横10センチ縦15センチくらいの薄い黒色の(ひれ)のような物が尻尾の先の方まで等間隔でいくつも並んでいる。

 ガルダって確か炎のように光輝き熱を発している神鳥じゃなかったっけ?

 何度か魔眼を使っていくうちにレベルが上がり、相手のレベルと特殊な場所が表示されるようになった。

 魔眼の力を弱める。


「ガアァァァァァァ!」

「「「「「「くっ⁉︎」」」」」」

「うっ⁉︎....(ひる)むな!死角から斬りかかれ!」

「「「「「「おおっ!」」」」」」


 ガルダワニが口を開き地面が揺れるくらいの大きさで咆哮(ほうこう)を放ったため騎士団長と騎士団たちは思わず両手で耳を(ふさ)いだ。

 俺はガルダワニから2メートルくらい離れてはいるが咆哮はそれでもこちらにまで届いて来たので俺も耳を塞いだ。

 騎士団長は咆哮が止むと騎士団たちに命令を出し、自分も剣を構えてガルダワニへと走って行く。


「っと、俺も見ていないで戦わないと」


 剣を鞘から抜いて石段を急いで降り、騎士団たちと戦っているガルダワニのところへと走る。


「うわぁぁぁぁ⁉︎」


 一人の尻もちをついた騎士にガルダワニが尻尾を振り上げて攻撃しようとしていた。


「ちょっと借りるぞ」

「えっ?」

「ガアァァァァァ!」

「うっ⁉︎」


 ドン!


「ガアァァァァァ⁈」

「んっ!間に合った」

「...え⁈」

「何だあいつは?」

「...はっ!何をしている!敵から目を反らすな!」


 向かっている途中で倒れている騎士から盾を借りてガルダワニの尻尾での攻撃を防いだ。

 かなり重い攻撃だったらしく俺の足が攻撃を食らったせいで5センチくらい地面に沈んでしまったが、俺は別に辛くはない。

 いきなり現れた俺に少し周りがざわついたがすぐに騎士団長が命令し、騎士団たちは次々とガルダワニへと意識を集中し始めた。


「た、助かった。ありがとう」

「いえ。それよりも早く立って体勢を立てないと死ぬ、よっと」

「あ、ああ」


 助けた騎士がお礼を言って来たのを軽く返してからすぐに攻撃へと移った。


「おらっ!っ硬⁉︎」


 ガンッ!

 騎士の一人が降るった剣と鱗がぶつかり鈍い金属音が響いた。


「身体は無理だ!脚を狙え!」

「おらっ、がっ⁉︎」


 ドンッドンッドドドドド!

 攻撃をしようと向かって行った騎士の一人にガルダワニが身体を少し回転させ尻尾を横に振り、吹っ飛んだその騎士はさらに地面にバウンドしさらに地面を削って1メートル以上飛んで行った。


「ダメです!脚だけを狙おうにも相手の攻撃の方が速くて狙えません!」

「くそっ!A隊とB隊が敵の気を引き、その間にC隊と私が攻撃をする!C隊は尻尾や口を狙え!A隊は前に出て攻撃を防ぎB隊は隙を突いて攻撃をしろ!」

「「「「「「はっ!」」」」」」

「(おいおい、いくら敵がこっちの言葉を理解出来ない魔獣だからと言っても攻撃の方法を大声で叫ぶなよ)」


 最早騎士団長に呆れることしか出来ない俺は剣を構えて様子を窺う。

 騎士団長失格だな。

 騎士団たちは命令された通りに動き始めた。

 A隊って言うのが盾を持っている人たちらしく十人くらいがガルダワニの前に出て腰を低めて盾を構え、その後ろに剣を持った六人くらいが攻撃の隙を窺っている。

 ガルダワニの後ろ周りで残り八人くらいの騎士たちと騎士団長が剣を構えて、全員が隙を窺っている。

 俺も騎士団長たちとガルダワニの後ろで攻撃出来る隙を窺う。(4連発はひどい 別の単語を挟もうよ 探るとか)


「ガアァァァァァ!」

「「くっ!」」

「今だ!」

「おらっ!」

「このっ!」

「おらっ!」

「はあっ!」

「ガアァァァァァァ⁉︎ガアァァァァァァ!」

「「がはっ⁉︎」」

「ぐふっ⁉︎」

「ぬっ⁉︎」


 ガルダワニが目の前の騎士団たちへと攻撃しに行き騎士多分A隊の人が盾で防ぎ、さらにその盾で耐えている騎士の後ろでB隊だと思われる騎士が腰を屈めて肩でその騎士を支えている。

 その隙を突いて騎士団長が指示を出し、三人の騎士と騎士団長が攻撃しに行き剣で足に剣を突いたり切ったりした。

 それにより怒ったガルダワニが身体を横へ移動し尻尾を横に振り攻撃して来たのを三人の騎士たちは腹に食らっ?ていた中で騎士団長だけが持っていた盾で何とか防いだ。


「体勢を整えて攻撃!A隊はマキシ玉を使用しろ!」

「「「「「「はっ!」」」」」」


 攻撃を何とか耐えた騎士団長が再び指示を叫んだ。

 確かマキシ玉って言うのは特殊な加工がされた物で少しレアなアイテムだったかな?

 それを握り潰すか地面に叩きつけると特殊な匂いが発生する。

 その発せられた匂いは魔獣の好みな匂いらしく、その匂いのする方に意識が向いてしまう物だったはず。

 現に今、騎士の一人が腰の小さな革袋から緑色のピンポン玉くらいの大きさの玉を取り出して、それを地面へと叩きつけていた。

 すんすん

 うぅぅん、ハチミツみたいな匂いだな。


「ガアァァァァァァ!」

「くっ!うおっ⁉︎」


 ドン!ドドドドド!

 マキシ玉を投げた騎士の方へとガルダワニが攻撃しに行き、それをさっきのように防いだが攻撃がさっきのよりも強かったらしく攻撃を防いだ騎士とその後ろで支えていた騎士もろとも吹っ飛んで行った。


「くそっ!おい小僧!貴様も戦わんか!」

「ふぅぅん。どうなっても知らんぞ?」

「何だと?」


 足に力を入れて前へ飛ぶ。

 ドン!

 地面にヒビが入り穴が5センチくらい空いた。


「まず尻尾っ!」

「ガアァァァァァァ⁉︎」


 ぐしゃっ!

 生々しい音が洞窟内に反響した。

 ガルダワニの尻尾を根本から切り落とした。


「ガルアァァァァァ!」

「おっと!次は後ろ左脚ね?...ふっ!」

「ガアァァァァ⁉︎」


 ぐしゃっ!

 生々しい音が洞窟内に反響した。

 ガルダワニの後ろ左脚の関節くらいを切り落とした。

 地面が紫色の血で満ち欠けている。

 次は眉間で終わらせるか。

 頭部は眉間より少し上くらいまでは鱗で覆われている。

 なので眉間を狙うのだ。


「ガアァァァァァ!」

「っと。...はい、終わりっ!」

「ガアァァァァァァ⁉︎」


 ガルダワニが前左脚で攻撃して来たのを上に飛んで避ける。

 最近飛ぶ高さがかなり上がって、今では1メートル半くらいは飛べるくらいにまでなった。多分レベルが関係しているのだろう。

 飛んでガルダワニの頭の上に飛び乗る。

 剣の刀身を下に向けて眉間めがけて突き刺して再び俺は飛んで1メートルくらい逃げる。


「離れないと攻撃されるぞ!」

「...はっ⁉︎全員散開しろ!」


 俺の言葉に意識が戻った騎士団長が騎士団たちに指示を出す。


「ガアァァァァ⁉︎ガアァァァァァ⁉︎ガアァァァァァァ⁉︎ガアァァァァ⁉︎」

「くっ!うおっ⁉︎」

「ダメだ!壁側に寄るな!」


 ドン!

 痛みで叫びながら前右脚や左脚の爪で誰もいない方を斬りつけているがすぐに方向を変えて騎士の人たちがいる方を向き再び斬りつけだした。

 壁側にいた盾持ちの騎士に攻撃をして来たので盾で防いでいたが強烈な攻撃だったらしく60センチくらい横へ吹っ飛んで行った。


「ガアァァァァァァ⁉︎ガアァァァァァ⁉︎ガアァァァァァァァァァァッ!」


 ドォンッ!

 少し暴れたらガルダワニがその場に倒れて動かなくなった。

 目に力を入れる感じで魔眼を発動させる。


 ______________

 ガルダワニ:死

 ______________


 魔眼の力を弱める。


「(さ、牙と鱗と爪と尻尾の棘?を回収して次の階へ行きますか)」


 そう思いガルダワニに近付く。


「お、おい小僧!近付くのはまだ」

「死んでいるから大丈夫だよ」

「そんなこと何故分かる⁈」


 うるさいから無視するか。

 剣を鞘に納めてボクサーバッグから小刀を取り出してガルダワニの長く伸びた上下2本ずつあった牙を歯茎から切り取る。

 次に爪を全部切り取り、尻尾の棘も余すことなく全部取った。


「おい小僧!それは我々騎士団の物だ。返したまえ」

「(....何言ってんだ、こいつ?)」

「おい、聞いているのか⁉︎それら全部(すべて)は我々騎士団の物だと言っているのだ!」

「いやいや、最後とかほとんど俺が倒したんだからせめて半分か3分の1は俺がもらっても良いだろ!」

「冒険者風情が我々誇り高き王国騎士団にそのような態度を取りおって、だいたい横から現れて貴様が勝手にこの魔獣を倒しただけではないか!私の指示があってこその討伐だったに過ぎん!」


 ダメだなこりゃ。

 もうどうでも良いか。


「分かった。全部やるよ」

「当然だ」

「ただ一つだけ聞きたいことがある」

「聞いてやろう。何だ?」


 この態度、腹たつが我慢だ。


「このダンジョンは下へ降りて行くはずなんだが、あんたらは何で上の方にいるんだ?」

「それは一体どう言うことだね?」

「そのままの意味だけど」

「外から見たときはこのダンジョンは上へ登っていく物であったぞ?」

「あんたらが入った入り口のすぐ横を見たら掘ってあったんだよ『力ありし者は進め、なきし者は上から進め』てね」

「ふっ!馬鹿なことを。私たちは前々からこのダンジョンの周りを調べ、今回も入り口に入る前に中の様子を窺うために覗き、罠がないか周りの壁も調べたがそんな文字はなかったぞ。嘘をつくな」

「(どう言うことだ?確かにあの入り口にはそう掘ってあった。誰かが騎士団たちが入った後に掘ったのか?でも俺は騎士団たちが街を出て少ししてから追いかけた。だからそんなに時間はかかっていないはずだから、掘っている時間はないはず。これは一体?)」

「やっぱり嘘か」


 これ以上何を言っても無駄だな。


「さあおまえら!次の階へ行くぞ!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

「小僧も来い!」


 騎士団長が後ろを振り返り騎士団たちに指示を出した。

 それは分かるのだが。

 何で俺も誘うんだよ。


「いや、俺は下へ行く」

「何を言っている?下は我々が倒して来ているから何もいないぞ。第一いたとしても貴様のような小僧が勝てる相手ではないわ。我々騎士団が倒すのにどれだけの犠牲があったことか。貴様には分かるまい!ってちょっと待て⁉︎」


 話が長かったのでとっとと下の階へ行くための石段を目指して歩く。

 後ろで騎士団長がわぁわぁ言っているが無視だな。

 でもあの文字は気になるな。

 石段に着いたので降りて行く。


「全くあんな小僧が一人で行ける訳がないがな。まあ我々が倒して来たのだから助かっただろうな」


 騎士団長は独り言を言って騎士団たちを連れて上の階へと向かう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ