帰り道
それはいつもの帰り道。
小学校から変わらない帰り道。
幼馴染との帰り道。
「あたしってば最近忘れっぽくてさー」
「んー」
「土曜だ!って思ったら、もう月曜!ってなるんだよねー」
「んー」
「もー!ちゃんと聞いてる?」
「んー聞いてる聞いてる」
隣で喋りかけてきた少女の言葉を適当に返す。
それは彼女を蔑ろにしているわけではない。
安藤文也にとって隣にいるのは小学の頃の付き合いであり幼馴染である。
「じゃあ私が話したことを一文でまとめよ!」
「亜里沙が老けた。」
「老けてないし!忘れっぽいって言っただけじゃん!!」
「認知症じゃね。」
「そんな歳じゃないですー!」
こんなくだらない会話を小さい頃から繰り返していた。
素直に心地がいい。ずっと喋っていたい。
そして俺は亜里沙が好きだ。あの時からずっと。
だけど幼馴染というものは凶悪で、なかなか壊すのが難しい。
「ねえ」
先ほどしていた会話と違い少し亜里沙の声色が変わる。
「ん?どうした?」
やはり、どぎまぎしてしまう。男の子の性なのだ。
しかし平静を装って返事をする。
「私たちって小学校からこんな関係だったよね。」
「そうだな。確か亜里沙が男子にボッコボコにされてたんだよな」
「それ助けてボッコボコされてたの文也じゃん。」
「それからもいろいろあったけど、あの頃から」
亜里沙は一歩前に出てこちらに振り向く。
ドキッと心臓が動く。
「私、文也のこと――――――――」
「………え?」
それ以上の言葉が続くことはなかった。
何故なら交差点から飛び出してきたトラックによって鮮血に彩られていたから。