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「あっつ!!」
差し出されたティーカップを受け取り、口をつけた瞬間、思わず叫んでしまった。カップを落として中身をぶちまけるという最悪の結果は避けられたが。
「大丈夫かい?ほら。」
「ありがとうございます……。」
真っ白なハンカチのようなものを受け取る。
「そんなに固くならないで。もっとくつろいでくれていいんだよ?」
そうは言われても……。どこだここ。
自己紹介をうけ、案内されたのは家の外。その一つのテーブル。こういうのをテラスっていうんだろうか。様々な植物や装飾は綺麗で、落ち着いた雰囲気がとてもいいと感じた。
問題は場所だ。回りを360度見渡すとあるのは空模様とさっき目覚めた一軒の家だけ。
本当に、どこだここ。天国かな?
……なんて馬鹿なこと考えてないでこの人に聞こう。
「あの、スズさんに色々と聞きたいことがあるんですけど。質問してもいいですか?」
「ん、いいよ。……あと、そんなにかしこまらなくてもいいよ。さっきも言ったけど。名前も呼び捨てでいいし。」
「は、はあ……。」
そうは言われても、この場所の雰囲気には慣れない。何か……何かがある。
そんな不安感の正体を確かめるためにもまずは……
「ここはどこなんですか?」
そう聞くと、スズはどこからか地図を取り出して、ある場所を指をさした。
「ここだよ。」
その指先が示した場所は、山。しかもその山は……
「人間界と魔界を隔てている山の、6つのうちのひとつ。地図でいうと左から二つ目の山。」
「でも、その山はとんでもなく高くて、頂上にたどり着いた人は一人もいないんじゃ……。」
「別にここは山のてっぺんじゃないよ?」
「え?じゃあここはいったい……。」
でもここは山の途中という感じは全くない。地面こそ土や植物でできているが、平らだ。さっきあたりを見渡した時も、斜面も見当たらなかった。
「山の斜面を抉り取ったあと、地面を平らに整地して、今のこの状態になってるんだ。」
山を抉り取る……!?そんなことができるのか。この人いったい何者なんだ……。