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「ソラ君は旅をしてここにきたんだよね。だからまずは、旅のことを聞かせてよ。」
「ルタさんは旅に憧れでもあるんですか?」
「うん。もうすぐ私も旅に出ようと考えてて。小さいころからの夢なんだ。」
そうなのか。……夢、か。ちょっとうらやましく思う。
「僕も半年前に旅を始めたばかりなんです。中央大陸を出発して、南大陸、東大陸、そして今この北大陸につきました。」
「へえ、いいなあ。南大陸はとても暑いって聞いてるけど、どうだった?」
「ええと……」
すごい質問攻めだった。どんな場所だったとか、そこにある建物、食べ物、景色、それらをどう思ったか。なんてことを、どのくらいの時間話していただろう。
すごく楽しそうに話を聞いてくれるルタさんに、もうすぐ旅に出るのなら自分の目で見て、体験するほうがいいんじゃないですか、なんて言えなかった。
「そういえば。」
ひととおりこれまでの旅のことを話終えた頃、ルタさんが聞いてきた。
「ソラ君がなんで旅をしてるのか、聞いてなかったよ。」
確かに。旅の感想のことばかりで、聞かれていなかった。
「よかったら聞かせてよ。」
話していいか少し迷ったけど、別に隠すようなことでもないと思い、話した。
「ルタさんは魔族の活動が活発になってきたという話は知っていますか?」
「知ってるよ。最近この近くにも現れたって報告があって、毎日この村の人たちが交代で見回りをしてるんだ。今日の夜は私の両親が当番だから、家に一人なんだ。」
夜の見回りか。こんなに寒いのに。
「その理由に、魔王が力を取り戻しているということがあります。僕はその魔王討伐のために、旅をしているんです。」
「ええっ!?……なんか凄いこと聞いちゃったよ。魔王討伐だなんて。」
信じられない、といった感じだった。まあそう思うのも仕方がないことだけど。
「でも、そんな人がなんでこんな村に?」
しばらく呆けていたルタさんが、我に返って聞いてくる。
「各大陸に存在する精霊を探しているんです。魔王討伐関連で必要なことで。ここには、火の精霊に会いに来ました。」
「へえ。そうなんだ。」
精霊のことには驚くこともなく答えたルタさん。
「火の精霊のこと、知ってるんですか?」
「え、そりゃあ知ってるよ。」
当然、といった反応に、僕は疑問を持った。
「なんでですか?」
「精霊はヒト型族の力の源、5属性をそれぞれ司っている存在で、誰でも知っていることだって、小さい頃両親から聞かされてたんだけど。」
初耳だ。精霊が誰でも知っている存在だなんて。
「それに、そのヒトが持つ力を高めてくれる、試練を課す存在であるとも聞いてるよ。この村のヒトたちは皆、18歳のころその試練に挑んだって聞いた。現に、2日後私がその試練に挑戦するからね。」