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「めずらしいなあ、旅人なんて。父さんから外の世界の種族の話は聞いたことがあるけど、実際に会うのは初めてだよ。」
そう言いながら水を沸騰させているのは、獣人族のルタさん。
真っ白な長い髪に赤い瞳。頭の上にある獣耳、腰にある尻尾が、狐の獣人であることを示している。
この村に宿はあるかと質問したところ、ないからウチに来なよと、そのままルタさんの家にお世話になることになった。
首に巻いたマフラーをはずし、重ねて着ていた上着を脱ぐ。
椅子に腰をかけ、あたりを見回す。
木造の家。案内された部屋には暖炉があり、とても暖かかった。
それ以外には目立つものが何もない。飾らない人なのだろう。
「はい、どうぞ。」
手渡されたコップには暖かくて茶色い飲み物が入っていた。
「これ、なんですか?」
「紅茶って言うらしいよ。貴重なものだから、私はほとんど飲んだことはないけど。」
紅茶。僕もあまり飲んだことはないけど・・・・・・。
熱そうなので、ゆっくりと口に含む。甘くておいしかった。
「さて、色々と質問してもいいかな。」
コップを机に置き、ルタさんが話しかけてくる。
「はい、いいですよ。」
僕もコップを置き、その質問に答えるのだった。




