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「これで良かったんですか。あなたなら、力づくでも止められたんじゃないですか。」
「良くはないよ。けど、いいんだ。」
静かな食堂。今ここにいる人間は、二人。
「私の話を無視して勝手に城から出ていくくらいだ。何か思うところがあったんだろう。最終的には魔王を倒してくれればいい。それが最低限の願いだよ。」
「そう、ですか。」
あれから、1年が経った。
「魔王討伐、必ず成し遂げてくれ。」
「はい。頑張ります。」
整えた真っ白な服装。腰には剣をさし、必要なものは背中のリュックに詰め込んだ。
城門の前で、王子と別れの挨拶を交わした後、町を歩いていく。この町並みも見慣れたものだ。
ゆっくりと時間をかけた。そして、町と外の境界に立つ。今から、旅に出るんだ。そう考えると浮かぶのは、やっぱり不安だった。
1年前、ここを通ったあの人は、その時に何を思ったんだろうか。旅の途中で、再会できるのだろうか。
考えてても仕方ない。
「よし、行こう!」
勇者ソラは、こうして第一歩を踏み出した。