よほし
話しをしてて気がついた。
星は星が誉められると自分が誉められたみたいに嬉しがるんだ。
さっきみたいに自分を星に例えて考えてるからなんだろうな。
そう俺が思うようになったのは中学を卒業する頃だった。
星とのお隣さん付き合いも長いものでもう八年になる。
「おはよう月君」
「はよー…」
「眠そうだね?」
「昨日明け方近くまでゲームやっちまってさ。 お陰でねみーのなんの」
「あはは、自業自得だね」
「冷てーお言葉ありがとう」
ガキの頃だったから気にしなかったけど、結局星は小学校と中学校には通わなかった。
最近知った事だが、星の父親はやり手の実業家で……つまりは金持ちで、星はその後を継ぐための特別な教育を自宅で家庭教師達に帝王学を習っていたらしい。
「今日抜き打ちでリーダーのテストあるってよ」
「げっ、マジで?」
「うん。職員室で先生達が言ってたんだ」
「ほんとお前には教師ども警戒心ないよな」
「だからこうして情報流せるんじゃない」
ニコニコと星は笑う。
星の強い希望で高校は普通に通う事になったそうだが、それもレベルの高い学校じゃなきゃ許さないと言われ、通学に電車で一時間強かかる有名進学校に俺達は通っている。
つまりは、俺もそこそこ頭良く育ったて事だ。
星は、相変わらず綺麗な顔をしている。
お陰で女どもにはえらい人気だ。
「そーいや、こないだの子どうした?」
「丁重にお断りしたよ」
「げー、もったいない。可愛かったじゃん」
「でも、話した事も無い子にいきなりいつも見てました。恋人になって下さい。って言われてもねぇ。友達になって下さいなら喜んでお受けするけど」
「じゃぁ友達から始めましょう、は?」
「その先に絶対に恋人にならなきゃいけない約束があるならお断り。まずは話しをして、人となりを見てからじゃなきゃ好きになんてなれないよ」
「お前って…相変わらず独特な感性で生きてるよな」
「誉め言葉と取っておきましょう」
人気はあるのに星は一向に彼女を作る気配がなかった。
それと言うのも、今の独特の感性も繁栄されているんだろうが、昔から好きだった星、並びに星座、ギリシャ神話が高校に入ってから好きなだけ学べると言うのが原因のようで、女と付き合うくらいなら好きな事を好きなだけやっていたいのだろう。
今までの家庭教師では自分の好きなジャンルは学べなかったらしく、星は高校に入るなり自分一人で天文同好会を設立した。 もちろん俺も同好会の一員だが。
遊びに来る奴等はいても、会に入ってくれる人間はいなくて、二年になった今でも同好会のままだった。
「そうそう、ねぇ月君。今年さ、流星群が見えるんだよ」
「流星群?」
「要は流れ星が一日に何個も見れるの」
「へぇー、すごいじゃん! あ、でも街中でも見えるのか?」
「わかんない、けどうちのあの部屋なら寒くもないし元々星の見える地域だから見えるかもよ?」
「そっかぁー……なぁ、じゃその時期になったらさ……」
「うん。泊まりにおいでよ」
「やった! サンキュー星!」
「僕も楽しみなんだ」
流星群はそんなに頻繁に見れる物じゃなくて、何年に一度、何十年に一度の確率で見れる貴重な物なのだそうだ。それが見られる年に生きていられるって言うのはきっと凄い事何だろう。
見たいと思っていても時期が合わずに見れなかった天文学者もいるんだろうから……
「そうか、じゃあなるべく綺麗に写真撮って、同好会の活動として提出しろ」
「ええ! やだよ面倒臭い……」
「月ぇ、同好会の顧問になってやった俺の言う事がきけないかぁ?」
「わかった、分かったよ……」
「先生、どうせなら展示会にしませんか?」
「展示会?」
「ええ、写真をパネルにして展示して、星座の説明とか、そう言うのもつけて」
「良いんじゃないか?」
「星! お前何言い出すんだよ! 俺等二人しかいないんだぜ?」
「いいじゃない。楽しいよきっと」
ニコニコと、本当に楽しそうに笑うから、面倒だと思っても、俺は断りきれなかった。
「わかったよ。そのかわり、作成場所はお前の家だからな。うちじゃ狭いし」
「もちろん。ミニ合宿だね」
こうして冬のミニ合宿が決まり、流星群の写真を撮るまでに、他の展示物を作ってしまおうと星の家にちょこちょこと泊まり込みに行っていると何だかそれがクラス、どころか全校的にウワサになってしまい……
「なぁ月、お前星と組んでなんかでっかい展示会やるんだって?」
「あれ? 俺は天体観測ショーやるって聞いたぜ?」
「えー? 泊まり込みで流星群観測会やるんじゃないの?」
「月ぇー、即席プラネタリウムって何時から営業すんだぁ?」
「ちょっと待てぇ! なんだその話しは!」
「違うのか?」
「全部違う!」
「でも……」
「校内ウワサで持ちきりだぜ?」
「マジかい……」
と、こんな事態になっていた。
「どうするよ星…」
「仕方ないね。こじんまりやるつもりだったけど少し規模拡大するしかないね」
「作るのは……?」
「僕達だね」
「勘弁してくれ……」
「ねぇ星君。星君宅で一緒に流星群を見ようツアーってまだ受付してる?」
「ツアーの存在自体が嘘だよそれ………」
要らない期待を一身に背負って、俺達は顧問に場所と期間の拡大を願出た。