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みほし

「ねぇねぇ、月君。とっておきの部屋見せて あげるね。こっちだよ」


 夜になると今までより一段と楽しそうに星が言う。

どんな部屋なのかとても気になる言い方だ。


「…うっわー……すごーい!」

「月君も空好きだから喜ぶと思ったんだ」

「うん! すごい、キレイ!」

「よかった」


僕達の街は星が見える里として有名だった。

良く東京とかのいわゆる大都市に住んでいる人逹が観察に来る。

(でも自然にある物を見てキレイって思うのは僕達がいつも不自然な生活を当たり前にしてるから何だろうな)

  星が連れてきてくれたとっておきの部屋は屋根が全部ガラスで出来ていた。


「今日が天気よくてよかったねー」

「うん! いいなぁ。この部屋」

「気に入った?」

「すごく!」

「じゃぁ今日はここで寝よっか?」

「いいの!」

「うん。ふとん持って来よう」


 2人で適当な量のふとんを運んで、適当に並べて、転がった。

 視界には沢山の星がある。


「……キレイだね」

「うん」

「星ってさ…たくさんあるよね」

「うん」

「…僕はあの星のどれかなぁ…?」

「?…ん~…と………」


 僕はぱっと目に入った大きくてキレイな星を指差した。


「あれ…とか?」

「なんであれだと思ったの?」

「何となく…キレイだし」

「そっか。当たってるかもね」

「あの星名前あるの?」

「リゲルって言うんだ。オリオン座の一部だよ」

「へぇー…」


 星は星座とか神話の話に詳しかった。

 僕はその話を聞くのが楽しみだった。


「……僕ね、たまに思うんだ。星は沢山ある でしょ? でも皆がしってる星なんてほんの少しだよね? だから……僕も そうなん じゃないかなって………」

「?」


 僕は星の言っている事が良く分からなくて、返事を返さないでいた。


「僕って言う星を知っている人はとても少ないんじゃないかってことだよ」


 上を向いて寝ていた星がいつの間にか腹ばいで頬杖を突いて僕の方を向いていた。


「月君は、違うよね」

「え?」

「だって、月は一つしかなくて、みんなあれが月だって知ってるじゃない? でも星は、星の名前はみんながみんな知っているわけじゃない……」

「う~ん、でもさ、僕の名前を知ってる人は僕と話しをした事のある人か、僕の家族と中のいい人だけだよ? みんなが知ってるわけじゃないじゃない?星の名前だって僕と同じくらいの人が知ってるでしょ?」

「……そうだね」


 星は笑った。

 僕は星が何を言いたかったのか、あんまり深く分からなかったから思った事をそのまま口にしてみただけなんだけど、星はその答えに満足したみたいだった。


「いっぱいある星の中から、僕は見付かるのかなぁ……」

「どの星が自分かなってこと?」

「うん。月君は、月だもんね」

「どうかな?」

「え?」

「どの月かわかんないよ?」

「でも、月は一つじゃない」

「いっぱいあるよ」

「えー?」


 いつもは星の言っている事がわからなくて悩むのは僕なんだけど、今はその立場が逆になっていた。

 それがなんだか楽しくて僕は直ぐに答えを教えないでクイズにする事にした。


「ヒントでーす」

「なにー?」

「形」

「えー? 形? 月の?」

「そう」

「形…? あ! 分かった!」

「なに?」

「満月とか、半月とかだ!」

「ピンポーン! 正解ー!」


 正解してうれしいのか星が枕を抱えながら嬉しそうに笑う。


「月だってどの月かわかんないだろ? だから星といっしょ」

「いっしょかぁ………」

「うん。みんな一緒だよ。僕の学校の友達にさ『大樹』って名前の子がいるんだけどさ、お父さんもお母さんも別にどの木かは決めてなかったんだって。だからその子もどの木なのかわかんないんだよ」

「そっか…いっしょなんだ」

「いっしょだよ」

「月君」

「んー?」

「ありがとうね」


 いきなりお礼を言われて何だか良く分からなくって星の顔を見る。

 電気を消して、星明りだけの部屋で星はまた嬉しそうに笑っていた。

 白いパジャマを着ているからなのかな? 

 星がぼんやりと光ってるみたいに……本当に星みたいに見えて、それがキレイで……


「…うん」


 僕はただうなずいた。

 それから僕たちは星の話しをいっぱいした。


「ほら、あそこに薄く星の固まりがみえるでしょ?」

「ほんとだー、なんであれだけ固まってるのかな?」

「ね、面白いよね」

「なんか名前ついてるの?」

「スバルって言うんだって。でも外国では違う名前なんだよ」

「外国と日本じゃ星の名前が違うの?」

「そうみたい。英語と日本語の違いみたいだけどね。あの星の固まりはプレアデスって言うんだってよ」

「……スバルの方が簡単でいいなぁ」

「そうだね…」

「ねぇ星、あれは? あの星にはなんか名前あるの?」

「どれ?」

「んー…調度天井の壁のとこギリギリに見えるやつ」

「え~とね、ペテルギウスだと思う。多分」

「ペテルギウス?」

「そう。赤い星だよね?」

「うん。大きい星の中であれだけ赤かったからなんか名前あるのかなって」

「ペテルギウスはね、さっき月君が僕だって言ったリゲルの対角線になってるんだよ」

「対角線? あ、ほんとだ」

「ペテルギウスの横の方にもう一つ明るい星があるでしょ?」

「うん」

「そこから斜めに上がるとまた明るい星。見付かった?」

「うん。 横に三つ並んでるうちの一番端でしょ?」

「そうそう。それからまた斜めに上がるとリゲルになるんだ」

「あー、ほんとだ。あ、ねぇリゲルの横にも明るい星あるよ?」

「うん。それとさっきの三つの星の反対端を通ってペテルギウスまでつなげると真中がへこんだ長四角になるでしょ?」

「うー…と? あー、なったなった」

「それが『オリオン座』冬の星座の中じゃ一番目立つんだって」

「へー」

「星座の元はね、ギリシャって国の神話なんだって。だから星座はみんな神様って事だよね」

「ふーん…じゃぁ星は神様の一部なんだね」

「…僕が?」

「だって、星が神様の形作ってんなら星は神様の一部じゃん?」

「なんか、すごいね」

「うん。すごいじゃん星!」

「うん! ありがとう!」

「オリオン座ってなんの神様なの?」

「んー、なんの神様なのかは良くわかんないんだけど、なんか強かったらしいよ」

「へぇー、あ、ねぇ。なんでペテルギウスだけ赤いの?」

「それはね、ペテルギウスが古い星だから何だって。どうして古い星が赤いのかはまだ僕も知らないんだけど、青い星ほど若くって、だんだん赤くなっていくんだって」

「じゃあ白く見えるのは若いのかな?」

「うん。そうじゃないかな」

「古くなった星ってどうなるのかなぁ?」

「…爆発して無くなっちゃうんだって」

「爆発?」

「うん。爆発しないのもあるみたいだけど」

「地球も爆発しちゃうのかな?」

「わかんない。けど、僕たちが生きているうちは絶対平気だよ。まえテレビで地球映してたけど青い星だったもん」

「そっか。星って何年くらいでふるくなるのかな?」

「んーわかんない。けど地球はもう何億年もあるんだってよ」

「そんなに? じゃぁもうふるいんじゃないの?」

「星にしたらまだ若いんじゃないのかな?」

「星ってすごいね……」

「…そうだね」


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