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冒頭02:校長と教頭

 校長の、のんびりお気楽タイムは時間にして10分くらい。実際のところ、それほど長くは続かなかった。

 分厚い書類に顎を預けていた校長は、訓練された第六感マナセンスと、後は廊下に響く巨大な音を察知すると、一切無駄の無い動作で、立てかけられた羽ペンをとり、インクを付け、その年齢にしては真っ直ぐに整い過ぎな姿勢で書類に向かう。


 その動作完了刹那、どんどんどんと全く品のないノックが校長室に響いた。


 間に合ったな・・・。ふっふっふ、まだまだ青いですねと、少し微笑む校長。入っていいですよーと言う。


 


 「こうちょぉぉおお!!私はもう我慢なりません!!」


 ドアが開く音がすると同時に叫びながら校長室に飛び込んできたのは教頭だった。

 その勢いはまさに校長に飛び掛からんとするほど。目には滂沱の涙である。


 そんな教頭の鬼気迫る様子に内心どきどきしながらも、校長は書類から目を逸らさずに聞く。


 「はいはい。どうしたんですか?教頭。」


 「見てください!!この頭を!!」


 身を乗り出して唾を飛ばしながら、教頭は頭を指差す。

 以前、アフロヘアだった教頭の髪の毛は見るも無残。

 減反令後の田畑のような荒涼とした煤色の頭皮に、炭素繊維にすら見える数本の黒髪が泳いでいるのみとなっていた。


 火炎魔法リトルランタンの焦げ臭いにおいが、うっすらと漂ってくる。


 「ありゃー。どうしたんですか、教頭。イメチェンですか・・」

 「違います!!!」


 「レブンです!!あの生徒が私の頭をこんな風にしたんです!!」


 あぁ。と声をあげる校長。そしてまた書類に目を落とした。


 「なに?痴漢でもしたの?」


 「校長・・・教育者なめんでださい。テストですよ、それもEランクの!!あの娘、よりにもよって火炎弾を私の頭にうちよったんですわ!!」


 想像してふきだす校長。


 「ある意味、ジャストミートじゃありませんか。」


 わざとじゃなければ、きっとあの娘は芸術的なポカをやらかして、対象を定める行程を飛ばし適当に火炎弾を離したのだろう。

 で、あるならば火炎弾が、よりにもよって顔に直撃したのは教頭がツいてるからだと思っている。


 つまりは校長の心の裁判ではレブンは無罪放免。教頭の負けである。


 表情からそれを読み取った教頭は、今度は怒りだけではない、深刻な顔になると、校長に向かって、さらに身を乗り出した。


 「校長。この学校は貴族の子息が通う魔法学園として、国内で1、2を争う名門であると自負しています。魔道を志す者の憧れ、気高き門で無くてはならない。初級魔法すら満足に使うことができない有様の彼女を、いつまでもこの学校に留めておく理由がありますかな。」


 校長は書類を置いて一息つく。

 今まで笑っていた顔が少しだけ本気になった。


 「彼女は、このマジックガーデンに相応しくない。と、そう思いますか。」


 「魔力量は一般人並み。操魔技術は未熟すぎて暴発を許す。魔法構築理論は構築不能の問題外。魔術触媒も、守護属性も、特筆すべき魔法具も持たない故に。」

 「そうであると、思っています。」


 校長は、頭を掻いた。

 煤に塗れた教頭の頭皮が光る。


 教頭は、本当にマジックガーデンを愛しているのだと思った。


 だからこそ―――。


 「ま・・・そうですね。ずっとこのままってのは彼女のためにもならないでしょう。」


 そう言うと、さらさらっと紙に何かを書くと教頭にほいと手渡した。

 今度はそれを見た教頭の顔が変わる。書類と校長の顔を交互に見比べると、信じられないという顔をする。


 「校長・・・何もここまで・・・。」


 「教頭。私もマジックガーデンを愛しています。よろしくお願いしますよ。」


 その校長の言葉に何かを決意したのか、教頭は冷や汗をかきながらもニヤリと笑った。



 校長はそんな教頭を見てニヤリと笑った。


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