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冒頭01:大魔法

 マジックガーデンは魔法を教える学校である。


 『魔法』とは呪文を唱えて火を起こし、水を呼び、地面を割ったり、傷を癒したり、身体を強化したりするものであるとされる。

 それは、間違っていないし、マジックガーデンでは生徒にそう教えている。


 だが、校長の心の教科書では、そうではなかった。




 『魔法』の原点とはそもそも、自然の摂理への崇拝であり、礼賛である。


 そして『魔法』という技術の究極的な深奥にあるのは人の心の多様な形であった。



 それは、道端に転がる石に神性の畏怖を覚えることであり、

 野山に吹く風に安らぎを感じること、あるいは世闇を恐れること。

 人を好きになること、嫌いになること。


 ただ世界のルールを侵すことだけが魔法ではない。

 世界の有り様を、己が心のままに感じること。それこそが原初にして究極の魔法なのである。


 だが、マジックガーデンは、そんなことを教えない。

 それは、魔法の研鑽の歴史において、唾棄され、次第に遠いどこかに置き去られたものであった。


 積み上げられた技術と論理が、自然の摂理を凌駕する。それこそが魔法の神髄であるかのように教えている。

 マジックガーデンの校長マーディアスは、その事実を容認しながらも、やはり原初の『魔法』を愛していた。


 マジックガーデンが教えているのは『技術』なのだと思う。

 それは石を打って火を起こすことと同じこと。


 『魔法』って言葉は、もっと特別なことに、できれば、もっと素敵なものに使ったらいいと思うのだ。もっとも個人的な思いであるし、校長という立場上、決して外では言わないが。



 だから、こんな麗らかな昼下がり。

 決裁期限が差し迫っている、尋常じゃない数の書類の山に囲まれながら、

 校長はのんびりと、伸びをしながら「暇ですねー」と、呟いた。

 締切に迫られる緊張など微塵もなく、心は羽となって陽光降り注ぐ窓の外へと飛び立っている。

 まぁ、ありていに言えばサボっているのだった。



 それは、声がでかくて、暑苦しくて、小うるさい、教頭がいないときだけに使う

 校長の大魔法であった。

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