日常風景
「うし!」
手をパンと叩いて気合を入れた。
構成要素、構築順位、配列安定化手順、全部頭にたたきこんだ。
触媒の結晶指輪の手入れも万全、今日は体の調子もいいし
魔力循環もここ数日にないほどスムーズ!!
絶好の合格日和。
にやにや・・・
「レーブン!!」
「ぎゃわっ!!」
どんなに驚いても貴族の娘があげてはいけない声をあげて
レブンは飛びのいた。
後ろにはさっきのレブンと同じくらい、にやけているグレイスがいた。
「うれしそうね、レブン。テストが近いもんね、Eランク試験。」
「う・・・!」
ランク試験。
マジックガーデンが胸を張って分類する魔法学習得上の5つの大きな区切り。
まずAランクが魔法博士レベル。
常人の分類ではここまでくるとすごいのを通り越して変人にあたる。
なにせ、攻撃魔法を行使すれば小山が砕けるレベルである。
次にBランク。主に教師陣がこのレベルに分類される。
少年少女の生徒でも大天才と呼ばれる者はこれくらいまで上がることもある。
Cランク。Bとの壁は分厚い、一般生徒が卒業認定を得るレベルである。
これくらいでようやく実戦で使えるレベルの魔法使いになる。
Dランクは基礎魔法の課程を修了したものに与えられる初めてのまともな
認定ランクである。
さて・・・Eはというと。魔法を始めて習得したものに与えられる認定である。
まぁ、言ってみればマジックガーデンにおいてEランク認定というのは
入学証みたいなものである。
持っていて当たり前。持っていなければそれこそ異常なのだ。
「同期で入学したのにねー。私はBランク、レブンは・・・」
「う、うるさい!!」
明確な悪意を持って言うグレイス。
悪い人間ではないのだが人の失敗を面白がる悪い癖があった。
今、顔全体に張り付いてる悪魔の笑みは
だいたいいつもレブンを弄るときに浮かんでくるのだ。
「今日は、調子がいいもんね!絶対にすぐ追いついてやる!!
構成要素、構築順位、配列安定化手順、全部頭にたたきこんだ。
触媒の結晶指輪の手入れも万全、今日は体の調子もいいし
魔力循環もここ数日にないほどスムーズ!!どう、完璧でしょ!?」
腰に手を当てて勝ち誇るレブン。
実際こんなにテスト前に自信に満ち溢れた経験は無かった。
今日はなんと言われようと追い風なのだ。
「見てなさい!絶対に合格証を持って自慢しにきてやるんだから!」
グレイスは「自慢にならないだろそんなこと」と心の中でいっぱいに突っ込みながら
すごく重要なことを言おうか言うまいかしばらく考えていたが
自信満々なレブンを見て、とびきり優しい悪魔の笑みでやっぱり言うのをやめることにした。