〜3話
店を出て、最寄りの駅まで並んで歩く。頭一つ分ほど、優斗の方が高い。
(俺たち、背の高さもいい感じじゃねぇか)
老若男女問わず、たくさんの人が優斗と莉子を振り返った。注目の的。まるでスーパースターのような美男美女のカップル、目立たないわけが無い。
(やっぱ目立つって気分いいもんだな)
すかさずChangerが鳴る。
こっそりポケットの中で確認する。
『まだ時間大丈夫ですか?天気もいいし、散歩でもしましょうか。と誘ってみな。あの信号を右に行くと公園がある。ちゃんと都合を聞いてからだぞ』
(今俺もそう言おうと思ってたとこ。手なんて繋いだりしてな)
『それはまだ早い』
(ワォ!マジすげーよお前。心の中で思っただけで全部分かるのな。一体どうなってるんだ?)
「ねぇ、優斗さん」
「あ、はい」
優斗はあわててChangerをポケットの奥へと閉じ込めた。
「まだ時間大丈夫ですか?」
「もちろん」
「じゃあ、お天気もいいし、ちょっとお散歩でもしませんか。すぐそこに公園があるんです」
「嬉しいなぁ。実は俺も、同じことを言おうと思ってたんですよ」
「まぁ嬉しい。私たち、気が合いそうですね」
「ああ。バッチリですね」
まるで優斗の心に金の砂が降り注いだかのように、胸の奥がキラキラと輝き続けていた。
その時、またポケットの中でChangerが呼んだ。
同時に、莉子のスマホも鳴った。
「莉子さん、スマホ鳴ってますよ。気にしないで出てください」
「いいえ。大丈夫です。優斗さんこそ鳴ってますよね。出てください」
「いや、俺も大丈夫です。さぁ、行きましょう」
並んで歩く二人の距離が、少しずつ縮まっていく。
向こうから手を繋いだカップルがやって来た。優斗はサッと莉子の後ろへ行き、カップルに道を譲った。
「すみませ〜ん」
カップルの声が、合唱となって響いて消えた。
莉子は立ち止まり、振り返った。そして、背伸びをして優斗の頬にキスした。
「私、そういう気遣いができる人、大好き。フフフ」
頭が痺れ、思考がストップした優斗。キスされた頬に、自然と手がいく。
(やべ〜やべ〜やべ〜やべ〜)
「フフフ。早く行きましょう」
莉子は、地蔵のようになった優斗の手を引いて歩き出した。
我に帰った優斗は、その手をしっかりと握りしめた。そして指を絡め、恋人繋ぎで公園を闊歩した。
公園にいる誰もが、このキラキラと輝くカップルに視線を浴びせた。
Changerが何度も優斗を呼んだが、優斗の心は莉子に奪われていた。
『おい、まだ早い!もっと冷静になれ!お前は相手のこと、まだ何も知らないままだぞ!』
その文字を優斗が確認することはなく、二人の時間は甘く過ぎて行った。
〜つづく〜




