〜1話
『ごめんなさい。もう会えません』
スマホの画面を見た瞬間、優斗はスマホを床に叩き付けた。
「また会いましょうって言ったくせに!あれはウソかよ!」
マッチングアプリでやっとデートまで漕ぎ着けたのに、たった一回会って振られた。
うなだれた視線の先には、サイドボードに飾られた学生時代の写真が。仲間達と楽しそうに笑う自分。彼女はいなかったが気の合う仲間はたくさんいた。その横の鏡に映る自分を見てさらに肩を落とす。太い眉毛に団子っ鼻にデカイ顔。
「結局女なんて顔だよな」
学生時代の仲間の中に気になる子がいた。
「大森くんて、歌は超上手いし、性格もいいし⋯⋯顔がああじゃなかったら、付き合ってもいいよね。フフフフ」
女同士の残酷な会話を耳にしたあの時、男としての自信は吹っ飛んだ。
粉々になったスマホの画面が蜘蛛の巣のように広がり、凶器となって優斗を襲う。
「俺はこのまま一生、誰にも愛されないのか……」
仕方なく、新しいスマホを買いに家電量販店へ。
『新時代のスマホ・Changer』ののぼりに目が止まる。
「いらっしゃいませ。こちらはなんと、好みの顔に変身できちゃう優れ物!しかも、A I搭載で、顔に合った行動を指示してくれます。人生をリセットしたい方にはもってこいの商品です」
優斗は即決した。こんな人生、もう嫌だ。
「顔は三つまで変えられて、リセットするまでは何時間でもその顔でいられます。ただ、同じ顔は無いので、もしスマホが壊れた場合は、新たにChangerを買って別の顔になるか、元の自分に戻ることになります。でも、そう簡単には壊れませんし修理は永久に可能です。無くさないようにだけ気を付けてくれれば、そんなに心配はいりません」
凄いスマホだ。だけど、本当にこれでいいのか?いや、もうこんな人生、終わらせたい。
店を出ようとガラスの扉に手をやると、細い眉毛に切長の目、まるで韓国アイドルのような顔がそこには映っていた。
「これが俺か……」
優斗はニヤッと唇を上げた。モテない惨めな俺は、もういない。
その時、ブルっとスマホが震えた。画面を見ると、
『この顔にジャージはN G。カッコいい君にピッタリの洋服を選んだよ。これを買って。Good luck』のメッセージと共に、ネットショッピングサイトのU R Lが。すぐにタップすると、ダボっとした今風のお洒落な洋服の購入画面。すぐにポチった。
「すげぇな」
家に帰ると早速優斗は、スマホを自分に向け自撮り。自分じゃない自分の画像に、期待と不安が竜巻のように心の中で暴れる。
「これが俺か……」何度も顔を手で触る。マネキンでも触っているかのような感触に、心がチクっとしたが、ワクワクがそれを拭い去った。
すぐにマッチングアプリの写真を変えた。その途端、続々とメッセージが入った。
前から気になっていて、何度もメッセージを送っていたが、一度も返事をもらえなかった莉子からもメッセージが来た。
「やっぱ顔かよ」
まるで女優みたいに端正な顔立ちの莉子。
「今の俺なら、お似合いだ」
優斗は早速返事をした。
『初めまして、メッセージありがとう。優斗です』
「ま、俺は初めましてじゃないけどな」
メッセージを送ってスマホを机に置こうとした時、ピロリンとスマホが吠えた。
『初めまして。莉子です。お返事ありがとう。とっても嬉しいです』
「はやっ!やっぱイケメンには神対応か」
モヤモヤが心の奥から立ち込めた。
スマホを操作する指が、スピーディーに動く。
『莉子さんて、イケメン狙いですか?やっぱ、性格より顔重視ですよね』
唇を上げた優斗。
「なんて、言えるわけないだろう」
すぐに文字を消した。
『莉子さんのプロフィールに趣味は手芸とありましたが、どんなものを作ってるんですか?』
「やっぱ最初はここからスタートでしょ」
ピロリン。スマホが笑った。
『バックやアクセサリーが多いです。編み物も得意で、レース編みとか……』
『いいね〜。今度見せてくださいよ』
『ええ、喜んで』
『じゃあ、いつがいいですか?』
『週末ならほとんど空いてますよ』
『じゃあ、次の土曜日なんてどうですか?』
『大丈夫です』
「ふ〜ん……イケメンになると、こんなにチョロいのかよ」
―リンリンーまたスマホがアピールしてきた。画面を見ると、A Iからだった。
『このお店で食事して、二次会はこのバーいいよ。もっと親密になりたいなら、ここがお勧めだよ』
「ほぉ。お前、俺の心が読めるのか?」
優斗の目が鋭く光った。
〜つづく〜




