お前らの紙飛行機
なろうラジオ大賞投稿作品のため、1000字以内の超短編となります。
「お前ら何をしている?」
卒業間際の放課後。
教室で使わなかった今年のカレンダーをビリビリと破る生徒たち。廊下から聞こえてきた楽しそうな声が響き、教室中には散らばる紙の山。
「うっわっ!サトケンがいるじゃん!!」
「えーなんでいんのー?」
「おいおい。それはこっちのセリフだ」
バシッと手に持っていた担当の教科書で近くにいた生徒を軽く叩く。たいして痛くもないのに大きなリアクションを取る男子生徒に教師として下校を促す。
「早く帰れよ。明後日卒業式だろ?教室紙くずだらけにするぐらいなら放課後デートでもして最後の青春味わっとけっ」
「せんせーいっ彼女いない俺には辛いっす!」
「青春は自分たちで決めまーす」
「っていうか古くない?放課後デートって」
「いいから帰れよ」
(お…珍しい。加藤もいるのか)
俺は教室の隅にいる生徒を見つけて驚いた。彼女はどんな行事にも参加せず、クラスの中で浮いていた。
(卒業ってなると人を変える…のか?まあいい。お前ら早く帰れよ、当直の俺が怒られんだからよ)
「ほらほら、さっさと片づけて帰れよー。教室の鍵しめっぞ?」
「やっべっ!ありゃマジだぜ!!」
「えっ!先生待ってっ!今やるから!あと5分!いや、2分で片づけるから!!」
鍵をチラつかせてニヤリと後方の扉に鍵をかけた。あとは前方。
三年間いろいろあったなと生徒の成長を感じ、担任でもない俺ですら焦って片づけをする生徒たちの姿を見ながら哀愁に浸ってしまう。
* * *
卒業式当日。
滞りなく式は終わり、卒業生は教室。
俺は校庭から卒業式に出席していた在校生の下校を見守っていた。
「おー、気を付けて帰れよ~」
『さとやまああーせんせええええーーーい』
突然、校舎のベランダから俺を呼ぶ生徒たち。校庭がざわつく中、俺は該当の教室へと視線を向ける。
「先生!!これは私たちの気持ちです!!うけとってくださーーーーい」
すると一人ずつ、紙飛行機を俺に向かって投げてくる。
「おいおい、これを回収しろってか!?」
一つ手に取って広げれば表はカレンダー。ご丁寧に俺の担当した日に〇があった。
裏には俺へのメッセージ。
「頼むから色紙あたりで止めてくれ」
在校生がかき集めてくれたおかげで回収完了。最後に渡された紙飛行機には加藤の名。
顔を上げればベランダの彼女と目が合って―。