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第17話 悪魔崇拝者とコレクター05/10。

気付いた時は手遅れも手遅れだった。

サンスリーを無力化させようと、鉄塊で殴りかかってきた男の攻撃で剣が折れてしまい、火魔法で焼き尽くそうとした時に魔法が発動しなかった。

自身の疲労を疑い、魔法力を必要としない常設の収納魔法から予備の剣を呼ぼうとしたが、発動しない事で魔法が封じられた事に気付いた。


「魔封じか!?よくやる!」


そう言ってしまうのは、魔法封じは大魔法に位置付けられていて、特にサンスリーのような実力者の魔法を封じられる魔法使いなんて、世界には数少ない。こんな岩山までくる奴は皆無だ。

仮に王都の魔法師団が出てきたとしても、持久戦で揺らぎが見えて、魔法が使えた瞬間に相手を殺してしまえる。


だが、その気配もなく魔法を封じるのなら、それこそ悪魔崇拝者が魔法使いを殺したい時に使う、魔法封じの儀式の為に生贄を用意した事になる。


基本の生贄は範囲外に置いておき、燃料になる生贄は今まさに現地調達でサンスリーが殺している。


こうなるとドルテも出てこられない。

気が付くと、今のサンスリーにはドルテの声も聞こえなくなっていた。


だが、ここで諦めるサンスリーではない。

敵が向かってくる限り、魔封じの生贄だと分かっていても、拳や現地調達の武器で相手を返り討ちにしていく。


魔法を使わずに何百人と殺させられたのは何年ぶりだろう。

そんな事を思い出してしまう。

大体そういう時はよくない。


サンスリーは意識を周りに向けると、何かがおかしい事に気付いた。

敵の数が少ない。


ようやく終わりを迎えたか?

だが、辺りを覆う殺気は途絶えていない。


そう思った時、サンスリーは倒れ込んでいた。

風上から薬物を散布されていた。


倒れたサンスリーに近づいてきた男は、口にマスクを当てていて「ようやくかよ。人喰い鬼でももっと楽に捕まえられるぞ?本当に人間かコイツは?」と言い、部下達にサンスリーの回収を命じていた。


「しくじったか…、だがいい。殺せと言われていないのなら、俺を捕えろと言った奴に会える。作戦変更だ」


サンスリーはそう言いながら「寝るとするか」と思って久しぶりに思い切り眠る事にした。



サンスリーの意識がキチンと戻ったのは体感で7日後の事だった。

爪の伸び方で把握しているので、大体合っていると思いたい。


上半身裸で下半身はズボンのみ。

拷問用の椅子に括り付けられている。

手足も動かせない。


散々不満を口にしたが、ドルテの声も聞こえないので、魔法は未だに使えない事がわかる。



人の気配と共に「起きたかね?」と呼ばれる。

声は後ろからきていて、サンスリーの前に出てくると、それは身なりからでも権力者だとわかる初老の男だった。


「アンタか?執拗に俺を狙ったのは?」

「そうさ。友好な関係の為にも自己紹介からかな?私の名はシューカシュウさ、君は?」


サンスリーが「ゲイザー」と答えた瞬間に、シューカシュウの平手がサンスリーの頬を殴り、「いけないなあ、君はサンスリーだろう?」と聞いてきた。


「その名は捨てさせられた。元当主からはゲイザーと名乗れと言われた」

「なるほど、キチンとしている。それならば殴った事は詫びよう」


相手はサンスリーの存在を知っている。

恐らく【自由行使権】も知っている。

そしてこの名前は何処かで聞いた事がある。


「いや、それでこれは?」

「ふむ。有り体に言えば、君をスカウトしたいのさ。だが君には断る事ができてしまう」

「そうなる」


「だが、私は君を諦められない。あの恐ろしい悪魔崇拝者達を寄せ付けない戦闘力。敗色一色だった領地戦を単独で勝利に導き、怨み玉に囚われた鉱山の華麗なる奪還。そしてこの数ヶ月の戦い。それを知って諦め切れるわけがない」


サンスリーは鉱山と諦め切れるわけがないという言葉から、ようやくシューカシュウの事を思い出していた。


悪評に事欠かない権力者。

だが小物すぎて記憶にもそう残らない。


異常さを垣間見せるコレクター。

欲しいと思ったものは、金に糸目を付けずに手に入れる。

そして手に入れると金銭の補填の為に、王都から目をつけられないギリギリで悪事を働く。


そして鉱山と聞いて、リャントーのいたダイヤモンド鉱山を思い出し、そこでシューカシュウの名前を聞いて、少しばかり調べた事を思い出していた。


「ダイヤモンド鉱山…、クレームか?」

「いやいや、枯れかけたダイヤモンド鉱山なんてまだコレクションに無かったから問題ないさ。それにあの鉱山が手元に来たから、君の事を知るきっかけになった」


リャントーの雇い主が自死を選び、次にあのダイヤモンド鉱山を買わされたのがシューカシュウだった。

父が売ったものが原因で、それが回り回って自分の元に戻ってくる。

正直笑えなかった。


今もシューカシュウは、「君の情報は、ダイヤモンド鉱山よりも高くて驚いたよ」と言って笑っている。


「この先は?」

「ふむ。君は洗脳魔法すら解けるときくし、この部屋は沢山の生贄によって、魔法無効空間にしてあるから、洗脳魔法はそもそも使えない」


仮でも嘘でも付き従うなんて言ってしまえば、魔法契約をされてしまって身動きが取れなくなる。


「君から私のコレクションに加わってくれると嬉しいなぁ」


ニタニタと笑うシューカシュウに、サンスリーが「ないな」と言うと、「だと思ったよ。古典的な方法だが、洗脳は魔法に頼らずに他にもやりようがあると聞いてね。それを行う事にしたよ。気が変わったら早めに言うといい。私はコレクションを大切に扱う人間さ」と言ったシューカシュウは去っていき、代わりに老人が入ってくる。


老人はサンスリーにいきなり注射を打つと、部屋を真っ暗にして騒音を鳴らしながら、耳元で「お前は誰でもない。シューカシュウ様の忠実な下僕だ」と呟き始めた。

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