拠点
「ん!!んまい!!」
「本当に美味しいですね。この料理。」
僕たちはギルドのお姉さんにおすすめされたフレバーズのサンドウィッチに舌鼓を打っていた。サンドウィッチにはシャキシャキしていて甘みがあることが特徴の野菜“フェリタス”と甘辛く味付けされたホッグブーが挟んであり、たまらない。夢中で食べてしまい、気づいたらぺろりと食べ終えていた。
「さてとレイズ様。食べ終わったのでとりあえず工房に行ってみましょうか。中がどんな様子かも気になりますし。」
「そうだねぇ。丘の上だっけ。」
町外れにある丘、そこに昔使われていた工房があるらしい。昔使われていたって何年くらい前なんだろう。話を聞く限り相当な年月売れてなかったらしいけど…。
「え、意外と綺麗じゃない…?」
「それにまぁまぁ大きめですね。」
外見は洋風の綺麗な家だった。雑草が生えている大きな庭、重厚な両開きドア、日当たりが良さそうな大きな窓。長年買い手がついていないと言った割には綺麗だった。
「入ってみましょうかレイズ様。」
「そう…だねぇ。」
アルベルトに促され、入ろうとすると後ろからたったったっと誰かの足音が聞こえてきた。アルベルトが辺りを見渡し僕を庇い、守るように立つ。自分より大きな背中に守られながら、長い足の隙間から凝視をしていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「レイズさーーーん!!!!!アルベルトさーーーん!!!」
「えっ!?あ!?お姉さん!?!?!」
走って丘を登ってきたのは受け付けのお姉さんだった。彼女は大きなバックを背負っておりとても重そうだ。息を切らせながら僕たちの前に立つ。
「ぜぇ…大事なことを……はぁ……伝えて………忘れていました……げっほごほ!!」
慌てて背中を撫でながらお姉さんをいたわる。肩で大きく息をしながらも何かを僕たちに伝えようとするお姉さん。
「だ、大丈夫ですか!?大丈夫じゃなさそうですね!!アルベルト!!水!!水ない!?」
「大丈夫です…!すぐに……ぜぇ… ふぅ…落ち着きました。」
「落ち着かれたようで何よりですお嬢さん。そんなに急いでどうされたんですか?」
アルベルトが心配そうにしながらもお姉さんに何事かと問うと、お姉さんががばっと顔を上げた。
「申し訳ありません!!!大事なことを伝え忘れていました!!!!」
「大事なこと…?」
「はい…それが、整備を長年していなかったんです…。」
「えっ?でも割と綺麗じゃ…」
「見た目は綺麗なんです。ただ中の整備が少なく見積もっても10年ほど整備されてなくて…」
「なるほど。しかしそれを伝えるためだけにそこまであなたは息を切らせながらも私たちに会いにきたんですか?」
「受け付けには伝達義務があるんです…!それなのに忘れてしまっていて…この類の物件には掃除用具を貸し出す義務があるんです。それを持ってきました!!!!それでは!!!!!!!!」
そういい背負っていた大きな荷物を下ろし、にこっと笑いながら下ろし笑顔で去っていった。アルベルトが荷物を解き何が入ってるのかを確認し出した。
「すばらしく…ガッツがあるお姉さんだったね…」
「そうですね…あっこれ全部掃除用具ですね。箒2本とちりとり、あと雑巾とバケツ。掃除用具が支給されたというとは相当、中が汚いんですかね。」
「うぁ~。覚悟決めて中に入ろう。」
そう僕が宣言をし、アルベルトが重厚なドアを開ける。開けるとすぐに埃っぽい空気が流れてきた。
「あっはは…これは…埃っぽいなぁ。」
「窓開けましょう!!!!すぐ全開にしましょう!!!!!!!」
アルベルトが勢いよく工房に飛び込み工房内の窓という窓を全開にし工房内に空気を循環させ始める。続くように工房内に入り辺りを見渡してみた。左半分が石造りでおそらく作業場だ。大きめの作業台が2つ、鍋が2つ、棚が3列、小箱を取り出すタイプの棚が2列ならんでいた。水場も完備されており工房はすぐに稼働できるレベルだった。
「多少埃かぶっていますが洗えば全然使えますね。2階はどうなってるんでしょう。」
「階段は…普通に隣にあったわ。入り口近くに階段あるの便利だね。」
アルベルトが先導し、2階に上がる。備え付けのキッチン暖炉や丸机はあるが、それ以外は辺り一面に魔導書のような分厚めの本が散乱していた。
「おお…すごい量の本だね。でも家具が暖炉と机だけか。」
「とりあえず本を一旦どかして床掃除しましょうか…」
「そうだねぇ…」
アルベルトが本を整理、僕が箒で床を履き始めた。
「どんな家具を買った方がいいのかなぁ。」
「とりあえずベッドと本棚ですよね。散乱していた本を片付けたいですし。それとも本全て売りますか?。」
「いや捨てるにはもったいないよ。なんなら僕が読みたい。」
「さようですか。それなら買うべきはベット、本棚、タンスそれとキッチン用具ですね。」
「キッチン用具?何を買うの?」
「食材やらをいれる棚と冷蔵庫、あとはオーブンとか…ですかね。」
「アルベルトは料理できるの?」
「ご安心を。故郷で家族で料理屋をしていました。腕によりをかけて美味しい料理を作りますよ!」アルベルトがドヤ顔で答える。相当料理に自信があるようだ。
「わぁい!」
「ひとまずこの床掃除が終わったらベットを買いましょうか。寝室は…あれですね。」
「寝室見てきていい?ベット置くなら部屋見といた方がいいしさ。」
「確かにそうですね。私も一緒に行きます。」
そう言い僕たちは揃って寝室に向かった。まぁ全然近い場所にあるんだけど。