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似た境遇

3行でまとめる今の状況。


・僕レイズ・クラークは正家から脱出!


・知的好奇心が満たされる森に着く!!


・森に人が倒れている!!!


………現実逃避をしている場合じゃないことは重々わかってはいるんだ。本当にそれはわかっているんだがいかんせんこんな状況にあったことがない。どうして森に人…お兄さんが、それもぐったりと木に体を預けているのか。というかこのお兄さん服もボロボロだけどびっくりするくらいイケメンだな。だいぶ髪の毛が傷んでいるが前はたいそう綺麗な銀髪だったのではないだろうか。とりあえずこの状況をどうにかしなければならないし、話しかけるか…?




「もしもーし…?えっと大丈夫ですか?聞こえてますか…?」


「ゔっ…うぅん…」


よいのはどうかはさておき、だいぶ濁点付きで返事が返ってきた。これならもう少し声かけたら起きるような気がする。


「お兄さん。お兄さん。」


僕はお兄さんの方をぺちぺち叩きながら声をかけ続けた。


「っあ。え…?子供…?」


「あっ。気づきました?お兄さん。」


ぱちっとお兄さんの目が開く。うっわすっごい綺麗な蒼の目だ。宝石のような瞳ってこういうことを言うのだろう。…欲を言えばもう少し近くで見てみたいな。いや待てよ普通に考えてこんな場所にいるんだ。お腹が減ってるはず…




「初めまして。僕は…レイズです。お兄さんのお名前は?」


「アルベルト・エッジだ。えっと、どうして君はこんな森に?子供が来るような場所じゃないはずなんだが…」


「なぜいるかは追々話します!えっとアルベルトさんお腹減ってませんか!?!?!?」


「はっ!?お腹!?減ってる…け…ど」


ぐ〜〜〜〜〜〜〜〜


「びっくりするくらいお腹鳴りましたね。めちゃくちゃパンをかっぱらってきたんで食べましょう!!!!」


「へっ!?かっぱらった!?!?どこから!?」


僕は背負っていたボストンバックを地に下ろし鞄からパンを漁った。このボストンバックは魔法のバックでバック内は時が止まるようになっている。商人御用達のバックなのだ。パンをいっぱい出しアルベルトさんに差し出した。


「はい!どうぞ!!!いっぱい食べてください!!!」


「待って!?そのパンが入ってた鞄の中に宝石じゃらじゃら入ってない!?」


「落ち着きましょうアルベルトさん!まずは食べて元気になりましょう!」


僕の押しに負けたのかアルベルトさんはパンを食べ出した。相当お腹が減ったのかものすごい勢いでガツガツ食べている。そして…僕は後ろを向きボストンバックを漁りだした。このスピートじゃ今渡したパンだけじゃ足りないだろう。








数分経ちアルベルトさんは満足したようだ。この人相当お腹が減ってたんだな…


「ありがとう。レイズくん。それと…見苦しい真似を見せて申し訳ない。」


「いえいえ!良い食べっぷりでした!」


「君は…優しいな。ところで君はどうしてこんな森に?それに宝石だったり…」


僕は家の名前は濁しながらもどうしてここにいるのかなどの経緯を説明した。


「なる…ほど。だからここに…苦労してきたんだねレイズくん。」


「あっはは!苦労は…そこまで。僕がここに来た理由も話したんですからアルベルトさんも話さないとフェアじゃありませんよ!もちろん話したくないのであれば無理にとは言いませんが…」


「いや君が話してくれたんだ。話そう…」


そういいながらもアルベルトさんの手は震えていた。まるで何かに怯えるように。僕はそっとアルベルトさんの手に自分の手を置きそっと握った。

「ッ!」


そうしてアルベルトさんは僕の手を握り返しながらポツポツと語り出した。


「私がかつて住んでいた場所…サクエル村はとても豊かなところだったんだ。しかしとある国の王族はサクエル村に住む種族を脅威に思ったのだろう。数百年前その国に滅ぼされた。運良く逃れた私は色々な国を転々とした。それでも村を滅ぼした国は大きく影響力も強くその村の出身とばれてしまえば武器を向けられ魔法を放たれ…散々だったな。その後どこぞのお貴族様に数十年地下で奴隷になってたんだ。でもちょうどね、数週間前にそのお貴族様が亡くなってどさくさに紛れて逃げてきたんだ。私たちは少し似ているね。逃げてきたところとか。」


僕は何も言えなくなった。確かに僕とアルベルトさんは似ていた。どさくさに紛れてきたところとか。不幸を比べる気はないが、アルベルトさんの方が苦しい。しかしどうしても問いただしたい点があった。




「アルベルトさん…今何歳!?!?!?!?」


「もう数えてもないけど…ざっと500超えてるんじゃないかな?」


「500!?僕よりいっぱい年上だ…」


「私たちは長命種だからね。もっとも生き残りは私だけのようだけど」


「長命種かぁ…」


僕はアルベルトさんに顔をグッと近づけた。やっぱりこの距離から見ても綺麗な目だ。僕がボストンバックに突っ込んできたアクアマリンにとてもよく似た瞳だ。


「王族も馬鹿だね。こんなに綺麗な人たちを、住んでた場所を滅ぼしたんだ。きっとアルベルトさんのご家族もお友達もとっても綺麗だったんだろうね。」


アルベルトさんの顔が一気に赤くなった。


「あれ。アルベルトさんもしかして照れてる?」



「れ、れい、レイズくんあの…」


「からかいすぎましたね。ごめんね?それにしても是非行ってみたかったな!そのサクエル村。綺麗な場所だったんでしょ?」


「あ、あぁ。いっぱい…いっっぱい綺麗な場所だったんだよ」

そういうとアルベルトさんは自分の故郷のことをたくさん話しだした。




「でも…ねぇレイズくん。私のこと…怖くないのか?」

突然アルベルトさんがそう問いかけた。

「どうして?そりゃその数百年前の王族はアルベルトさんたちを脅威に思ってたんだろうけど…というかアルベルトさんたちってなんで王族n」


僕の言葉はそこで途切れた。アルベルトさんが僕を押し倒したからだ。そして両手で僕の首押さえてくる。


僕の首に手をかけた状態でアルベルトさんが話し出す。


「レイズくん。私が少しでも力を入れれば君の首は簡単に折れるのだろうね。」


「…アルベルトさん?」


「どうして当時の王族が我々を脅威に思ったんだと思う?理由は簡単。それだけ我々が強力だった。昔は…いや今も我々は“化け物”そう呼ばれているんだ。」


アルベルトさんの顔が僕に近づいてくる。それに伴い雰囲気がどんどんと変わっていく。アルベルトさんの綺麗な瞳が僕を捉えるたびに、脳内で本能がカンカンと警鐘を鳴らす。でも僕は…


「ねぇアルベルトさん」

















「どうして今にも泣きそうなの?」

どうしてもアルベルトさんが泣いてるようにしか見えなかったのだ。

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