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尾道、坂の上神様斡旋所  作者: 柿元俊人
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見えた解決の糸口②

自然とページを捲る指を止まった。



「今昔物語集・・・猿神退治・・・・・。」



挿し絵だろうか、何やら毛むくじゃらの異形が刀で切りつけられている。


「巻二十六第七話、美作國神依猟師謀止生贄語(みまさかのくにのかみりょうしのはかりごとによりていけにへをやめしこと)・・・。今は昔、岡山県の美作国というところに、中参と高野という神あり。中参は猿、高野は蛇の姿でもって、毎年一度生け贄を求めん。其の生け贄は国人の娘で、未だ嫁がぬ者である・・・。」



未だ嫁がぬ者、つまり、未婚の若い娘を生け贄として求める神がいたと言うことか。


「けったくそ悪い話・・・・。」


自分と同じ年頃の女の子が犠牲になった歴史があると思っただけでも不愉快になる。


こういう時、犠牲になるのはいつの時代も女ばっかりだ。

原始から今のところまで、人間を産めるのは人間の女性だけなのに、どうして女は軽視されて来たのだろう。

どうして、女は畏怖と蔑視をその裡に孕んでいるのだろう。


「まあでも、綺麗な生娘を求める当たり、この猿神とかいうのはエロジジイだわ。」


脳内で鼻の下を伸ばしている、皺くちゃひひじじいに舌打ちをする。

あ、蛇の神様もいたか。何にせよ同罪である。


でもまあ、読み進めるとすっきりとやられてしまったし、これはまあ五万歩譲って勧善懲悪めでたしめでたしでは無いだろうか。



「先に連れてかれちゃった女の子達は可哀想だな・・・・。」


そこまで言って、ふと思った。


ー連れていかれちゃった、女の子達。




「・・・・・あ?」


山の中の神様。連れていかれた女の子達。


『そんなわけで、わらわ様というのが幽霊でなかったとしても、元が人間の神や妖怪である可能性はあるわけです。』



生け贄の生娘達は正気だった。皆、家族や村人に災いが及ばないために、承知で山へ向かった。



『探さないでください。』




「・・・・・女の子を山に呼ぶ、妖怪・・・。」


ドキンと胸が鳴った。単なる偶然だろうか。


言い様の無い不安が胸のなかに広がっていく。



「・・どうかしたんですか?」


「?!」


頭の上、すぐそばだった。声に驚いて上げた顔の鼻先に、私を見下ろす顔。


「これ、猿ですね。人間の女性を拐かす妖怪の伝説は古今東西多々ありますが、猿の妖怪の伝承も多く残っています。例えば・・・これですね。」


目の前にコピーが出される。

白くて長い指が、「狒々」の文字を押さえている。


「これは山中に棲んでいて、怪力があり、大型の猿のような姿をしているとも、年老いた猿がこの妖怪になるとも言われていますが、よく女性を攫います。狒々は獰猛でよく人を襲いますが、人を見ると大笑いして、唇が捻れて目まで覆われるそうですよ。なので、狒々が「わらって」目が見えなくなった所を突き刺せば勝てるんだとか。この『妖怪談義』にはそう書いてありますね。」


白い指は次のコピーを出す。


「こっちには、中国にも同じく狒々という妖怪がいる、と書いてありますね。その姿は人の顔で唇が長く、人を見ると笑う。」


笑う、妖怪。


「狒々は知能が高く、人と会話をしたり覚のように人の心のうちを読んだりするんですね。ここには、山でわらうものであることから、「山わらわ」から山童(やまわろ)に転じた、山童と混同される事もある、と書いてあります。」


「山、わらわ!?」

間に合わんな、これ。


そろそろイケメン男子高校生の正体に、読んで下さった人達が気付いてくる頃かなーと思ってます。

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