ある男を転生させた話
宙に浮く天空要塞。
全宇宙の中心と言える場所、宇宙の理を通り、何百万と存在する宇宙の根を保つ要塞。そして―――監視者。
(暇だ、暇だと言うと、余計暇だ)
この城管理するのも退屈。ずっと同じことばっかしていると、飽きてくる。
主城の主の命令とはいえ、こたえる。
同じことをするのは退屈だ。かといって、逆らうわけにもいかない、逆らえばまずい。
全てが退屈。
同じことのくりかえし。
私の人生は一本道かぁ? そんな事あるわけがない
もう5000年は経つ。
流石に長すぎる。
時間をいじろうにも、主の許可を得なければならない。それって、めちゃくちゃ、だるい、厳しい。
だからいつもやることは同じ
『傍観』
たまには、何か刺激が欲しい。
私は人ではないが、意志のある生命体だ。感情があり、
地上の人間やエルフ、それか魔族がなすような、歴史に残るとんでもない偉業を!
人間どもみたいになにか偉業とか成し遂げてみたい。
......人でないから無理だった。
(はぁ......非常、天空からこうやって、地上の人々を、ずーっと眺めるのが、こんな退屈とは思わなんだ。やることがない、飽きる)
男の目に、高級レストランのVIP席でしか食べられないような、お肉が見えた。
あー、あの飯も食ってみたい、おいしそうだ。
でも、食べられません。
「だって私、人間じゃないんだもーーん!!!」
冷たい風が流れる。
俺を嘲笑ってるのか? ふっ、悲し。
とにかく、遊べるモノを探そう、暇すぎて鬱になる前に!
と、言っても、なにするかは、簡単には思いつかないのである。
人間界は見飽きたし、モンスターも、国々の文化も見飽きた。
見物も人類が長年かけ研鑽した技術も見飽きた。
最強の魔法使いに剣神、エルフの大魔法使い、そんな奴らも多く見た。
他の神々は俺と違って、地上で国を作って自由に統治。
聞くだけで、羨ましい!!!
あと、ソレ、そうそう、魔法! 炎とか、雷とか、めちゃくちゃ派手でかっこいーじゃん、すげーじゃん!
俺なんか、五大元素のどれも違う。
俺の使える魔法は『時』
なにそれ? 時って、何するん?
と、このように使い道がなく面白くない。
身動き取れないのに、時止めたり。未来に行ったり、もしくは過去、はたまた時間の流れをあやつったりと。
今の俺には、必要ないイン。
なんせ、私はここから動けないからな、封印ではないぞ?。
(まったく不自由よ......)
なんか面白いこと起きないかな?
ハプニングでもなんでも、それかなにか面白い人とかいないか……‥。
男は寝転がり、空を見上げる。
空は夜空、満点の星空。
まぁ、見るだけで、心が浄化される景色、と言って見ようか。
星星が輝いている、星神頑張ってんなーファイトー!
(あ、もう死んじゃったんだった)
これは、失敬......でも、ふっか―――ん?
夜空の星空を一つの光が照らす。
間違いない、他とは違う、興味が湧いた。
その光に釘付けになった。
(あれれ、あれ、魂じゃんね?)
炎包まれ今にも燃え尽きそうな、か弱い魂がそこに。
瞬時にそれに気づく。
普通の人は全くと言って気づかないが、こいつは毎日毎日、
世界を見て暇を潰しているので、他より敏感なのだ。
「へぇ、面白そ」
気になるな。
うむ、よし行ってみよう、暇つぶしにはなるだろう。
いや、いくより、ここに呼び出した方がいいか。
なったって、俺は『凄い』から。
手を出し、貯める。
その瞬間、先ほどの魂が瞬時に手のひらへと飛び込んだ。
今から、この魂について調べるのだ。
男は凄いニヤけた顔で、魂を上から下、中まで、ジロジロ見て調べていく。
光景は......酷い。
「この魂的に人間だな、しかしこの世界の人間とは異色……‥逆におもしろい! 異世界人か!」
異世界人はめったに会えない、なにせこの世界は閉鎖(日本で言う鎖国)されている。
なので、外から遮断されている。
そんな状況に巡り合わすは、暇を極めた、身勝手な神。
当然暴れる。
(久しぶりに、気持ちが高まってきた!
興奮してきたゾォ!!!
さぁさぁ!!! 中を見させてもらおう!)
男は隅々まで調べ尽くす。
(む、この魂、本体ではない......これは、魂の断片、となると......本望はどこへ?)
まぁ、よい。
どこかにいるだろう。
今はこれを調べるのみ。
(ふむ、15歳男……日本? お、主人が言っていた単語だ、気になるなぁ、どれもこの世界には存在しないものだ。ふふふ、興味深いじゃあないか)
まったく、不思議な出会いをしたものだ。
別の世界、私たちや、魔法など存在しない世界があるとは。
これも運命か? 赤い糸で結ばれた?
(さすがにないか、それよりもだ!)
主人が言っていた話、まさかホントだったとは。
いや別に、主人を信じてなかった、というわけではないからな?
決して、勘違いするなよ?
プライベートだから、国家機密、ね?
ワクワクするぞぉぉぉぉぉ!
(ほぉ、こいつ、体が病弱なのか)
生まれた時から、体が弱く病弱、そして貧弱。
動くことさえ、大変。
しかも病気にかかり、つい最近死んだばかりだとわ。
間接的に似てはいないが、今の状況私に似ている。
これも運命?
※違います
私の体は病弱ではない、筋肉があり、この世界の人類どもを超越する最強最大のパワーァがある!
それゆえ、間接的に人類と接触する事を禁止され、今やこの城から抜け出すこともままならないのである。
つまり、私も動けない。
やはり似ているな。
この男も私と似たようなものなのかもしれぬな。
ん? こやつ願いがあるのか。
この魂の中には、強く光る願いがある。
この年で、これとは......あいや、おそれいった!
早速見てみよう。
男は、慣れた手つきで、魂を弄り、中を拝見。
魂が持つ願い、それは......!
『来世では健康に生きたい』
……‥ふむ、その願い、切実、そして心の底からの願いと見た。
なかなかの漢よ......いいじゃないか。
こりゃ、来たかもな、優良物件。
男は足を踏み鳴らし、大きな音を、全体に響かせる。
その願い叶えてやろうがこの私!
この出会いは確実に運命!
お前のその願い、私が叶えてやる!!!
この世界で新たな人生!
そう!『二度目』の人生というものを体験さてやろう。
これがせめてもの私からの恩、暇つぶしのお礼と、お前の強き思い。
しかとうけとれぇい!
男は叫んだ。
それと同時に、沈黙した。
すると、どこからか、謎のルーレットを取り出す。
カラフルなルーレットだ。虹色で綺麗。
「さぁ、まずお前の性別……いや、記憶を持っているから男のままで良いだろう、さすがに配慮しないと......」
男の心を持ったまま、女の人生を歩むのはちと大変だろう。
いや、多分過酷な人生だろう。
それにこの男の中を見る限り、そういうことで興奮する変態ではない、これは事実だ!
そこらにいる病弱で平凡な少年!
性別は男! はい次ー!
「家族、どこの家に生まれるかをルーレットで決めて見せよう!」
そしてルーレットにある文字が、アホみたいに細かくなる。
この世界、家系はゆうに万を越える。
目を細めても見えわしない!
しかし!この私にはそれができる!
なぜなら!
この私は全ての人類を超越した、
究極の生物なのであるr
ルーレットが回っていく、これにより、この魂の人生が決まる。
実に勝手である。
そしてたいに家系が決まったのである!
「うむ、お前の家系は『ルジェンテ家』である名門な貴族だぞ! よかったな! 父! 母! そして妹のいる家だ! お前は長男として転生させてやる!喜べ家族ができるのだ! 新たな人生が始まるのだ! ワッハッハ!」
この決定により、この魂はクリフ家の存在しなかった次男として、
新たな人生の幕を開けることになった!
「さて、これで設定はあらかた完了した、名前の方は両親に決めてもらえる、安心しなさい」
この魂、言葉ははっせないが、意識はあるのである。
つまり、ここに来てからずっと意識がある。
今は、この男の奇行にドン引きの嵐真っ最中だ。
それでもそこに存在している。
そしてそれを決めた張本人はその魂を大きな掌に乗せて、話す。
さっきよりも真剣に。
散々勝手にやられていたから、何か言いたかったが、今は無理だ。
無力! 話を聞くことしかできない!
「いいか! お前はこれから第二の人生を送ることになる、それは前世とは違う感覚だろう! しかし、それと同時に前世とは比べ物にならないほどの体験をするだろう!」
さぞ何かわかってるように話す。
この場面『まるでお告げだな』
初めて神々しく思った。
「しかし! 挫けてはならんぞ! 諦めず進むのだ! もちろん挫けることもある! しかし、それでも一度もう一歩進んでいくものが、真の強者なのだ!」
みにしみる言葉。
この言葉は忘れることはないだろう、残り続けるのだ。
頑張る過程となる。
いくぞ! やるぞ! ヨッシャー!
ワッシャー!!!!!
「おっと、このことに関する記憶は全て消させてもらうぞ、邪魔だからな! これにより、お前は死んだ時から新たな人生を迎えるのだ!」
消すなぁぁぁぁぁカスがァァァァァァ!!!
みに染みたのニィィィィイ!!!
「よし準備完了した! これで転生できる、準備はいいな?」
ちょっと不安だがオッケーです。
「よし! 最後に何か一言言っておけよ、喋れるようにしてやったぞ!」
「あ」
本当だ喋れる。
よっしゃ、これでこのジジイに愚痴と文句言い放題だ!
まぁ、新たな人生を提供してくれた人にそんなことは言わないが。
かと言って、長い言葉も邪魔になるだろうし。
うーん、こういうときに、心が暖かくなる、言葉、これをいってみたい! という言葉を模索中......。
うーんそうだな。
日本語デー、感謝。
あ、あるじゃん。
これで、いいか。
よし! 一発一言、言っとくか。
「さぁ、言ってみよ! なんでもいいぞ!」
......まぁ。
「ありがとう」
「......ふっ、あいわかった! それでは第二の人生楽しむがいい! うんさらば!」
そして魂は今の出来事を完全に忘れ、この世界のルジェンテ家へと生まれ変わった。
新たな人生を送るため。
ジジイと言われたものは一人椅子に座り、この世界を見下ろす。
「頑張るがいい少年よ、お前の人生はお前のものだ、お前が決めるのだ」
なにか、誇るように、しかし切なげに言った。
この少年が将来大きな事を成し遂げるかもしれない。
それにワクワクしながら。
「えーと、少し応援するか、なるべく響く言葉を......あ、あの男の世界だと、そうだな……‥うむ、よし」
「少年よ、大志を抱け」
「なにか、あったか?」
「いや、なにもないぞ? 主よ」