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リヴィニア恋歌  作者: ゆえこ
一章・幼年期編
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3.回避そして邂逅

そうそう、なんと驚き!この世界には魔法がある。らしい。

アリアーシュの記憶、知識ではアリアーシュは水魔法を得意としていた。わたしも早く元気になって魔法を使ってみたい!!


生前は魔法なんか興味もなけりゃ、もし使えたらとかも考えたことがなかったんだけど、それはいくら努力しようが手に入らないもので考えるだけ時間の無駄になるからだ。

しかし魔法が使えるとなれば話は別!使えるなら使ってみたいじゃない、魔法!


魔法には魔力があれば誰でも使える生活魔法や、属性との相性により得手不得手に分かれる戦闘に使える属性魔法、支援魔法、結界魔法、回復魔法など様々ある。らしい。


寝たきりのわたしはクリーンという生活魔法で体を清潔に保ってもらっている。

回復魔法があるのなら体を元の健康状態に戻してもらえばいいと思ったけど、それはわたしが魔法無知なだけだった。


魔法にもそれぞれ等級があり、わたしの体を回復させるには欠損した部位も戻せるメガヒールか骨折を治せるハイヒールを重ね掛けするしかないらしい。切り傷や感冒症状を治せる程度のヒールではいくらかけても効かないらしい。


医師はヒールまでしか使うことができず、ハイヒール以上の回復魔法を使える人は少なく貴重で聖教教会で管理されており、たくさんお布施をするなど教会に貢献していないと派遣してもらえないし、派遣の際、多額の料金がかかるらしい。それこそ国しか出せない金額程必要らしい。

つまりハイヒール以上の回復魔法が使える人は、戦争や国が依頼する魔物討伐などの時しか派遣してもらえない。


まあそんな感じなのでわたしは自力で回復するしかないのだ。

わたしは自分で動けないので侍女のルリアに主に身の回りの世話をしてもらい、時々アルバートがお手伝いしてくれたりして順調に回復していった。


そんなある日。

「お嬢様、ヴィクトル王子殿下がお見舞いにおいでになられました。」

「…?」

ヴィクトル王子殿下?誰よそれ?


………


ヴィクトルですって!?

わたしのなんとおめでたいことか!?わたしをこんな体にした元凶の事を忘れるなんて!!


王子が来たの!?あの唯我独尊暴君王子が?なんで?どうして?

ああ、そりゃわたし婚約者だからね。てか王子裁かれてなかったのね?


わたしとしてはもちろん会いたくない。

アリアーシュのあの記憶を見せられて会いたいとは思わない。

殺される未来しか見えない!!


会いたくない!会いたくない!会いたくない!

だけど相手は王子で婚約者だ。断れるはずもない…。

それに…。

アリアーシュなら例え会いたくなくても会うだろう。

公爵令嬢として、王子の婚約者として、王子のどんな仕打ちにも耐えてきたアリアーシュなら…。

だったら、アリアーシュとして生きていくわたしの取る行動は決まっている。


「会いたくない」

「畏まりました。旦那様が対応されておりますのでそのようにお伝え致します」

わたしの消えそうな呟きを拾ったルリアはそう言うと一礼し部屋から出て行った。


え?わたし今…。

会いたくないって言ったのわたし?


違う、わたしは王子と会うって決めたのだ。だったら今のは…。

いやいやいやいや、無意識に勝手に口から出る事ってあるじゃない?それよ、たぶんそれよ。


そんなことよりどうしよう…。わたしは王子の面会を断ってしまった。

まあ、あの王子の事だからどうせ「なぜ俺からの面会を断った?」と無理矢理突進して来そうだけど…。

その後この骸骨みたいな姿を見て醜い、気持ち悪いと罵られるんだ…。

ああ、ホント、会いたくない。


鬱々とした気分で王子の突進を待っていたが、扉が開くことはなかった。


◇◇◇◇◇


王子の面会を断って3ヶ月が過ぎた。あの日以降、王子が来たという報告は受けていない。

結局、わたしのことなど何とも思っていないのだろう。王子にしてみたら病に伏せる婚約者の見舞いに行ったという大義名分は果たしたのだ、もう来る必要もないだろう。


そして今日も同じ時間に扉がノックされる。

「どうぞ」

わたしが入室を促すと花束を抱えたルリアが入ってくる。

わたしのために、とお父様が庭師に頼んでお庭の花を摘んできてくれるのだ。

「今日もありがとう、ルリア」

「旦那様もお嬢様が元気になられるとお喜びになります」

「だけど毎日こんなにいただいていたら、お庭のお花がなくならないかしら?」

「立派なお庭ですので今も沢山綺麗に咲いていますよ」

「ふふっ、そうね、わたしも早く庭に出て沢山のお花を見てみたいわ」

ルリアが活けてくれる花を眺めながら心からそう思った。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




目覚めて1年が経ち、わたしは11歳になった。

侍女やアルバートがお世話してくれるおかげで、元通りとはいかないものの多少お肉が付き、骸骨から脱却できたように思う。たぶん。

他人と比べるとやはりまだ手足は細く胸もお尻もない。


歩くことはできないが座って過ごすことができるようになったので、邸の中を車椅子で移動して庭や書庫で過ごす時間が増えた。


わたしの主な活動内容はこうだ。

ちゃんと朝に起床してちゃんと朝ご飯を食べる。ちなみにご飯はペースト状のものやらゼリー系の飲み込みやすいものだ。目覚めたときはご飯がたべられなくとろみの付いた水分しか飲めなかったから嚥下機能もだいぶ回復したものだ。


食後は少し休憩してから書庫に向かう。もちろん移動は車椅子で自分で漕げないのでルリアに押してもらう。

書庫について読みたい本のジャンルを言えば司書が用意してくれる。その中から2~3冊選んで自室に戻る。


自室に戻ってから読書。読書は自室でする。だって眠くなったら寝れるから。


昼食を食べて昼食後はお昼寝。体力のないわたしには寝ることも大事。


お昼寝をした後はリハビリをしてアルバートと庭を散歩したりお部屋で一緒に読書をしたり、そして一緒におやつを食べた。

自分の足で歩きたいし早く元の生活に戻りたいし辛いけどリハビリは頑張った。だけどわたしをオーバーワークさせないように至る所で使用人が目を光らせていた。

使用人たちの主はお父様だ。なのでわたしが涙目で上目遣いに「言わないで」ってお願いしてもチク…報告される。するとお母様のお耳にもすぐに入り泣かれた。


アルバートと別れた後は再び読書をして過ごす。

わたしの知らないこの国の歴史、技術、産業、文学、芸術…11歳の子供が読むには難しすぎる本に周りは困惑していたがベッド上での暇潰しと言ってごまかした。

わたしが知っているのはアリアーシュの知識だけだ。この世界で生きていくならこの世界の事を知らなくてはいけない。アリアーシュにとって当たり前のこともわたしには当たり前じゃない、だから知る必要があった。

アリアーシュの知識のおかげで何だか分からないこの国の文字も読めた。

知らない世界を知るのが楽しくて、わたしはとにかく本を読んだ。


夕食を食べた後は家族と過ごしお風呂に入って就寝。

うちには立派な浴場がある。

毎日体を綺麗にする魔法をかけてもらっていたが起き上がれるようになってからはお風呂に入れてもらっている。

やっぱり湯船に浸かりたいじゃない?侍女のみなさんありがとうございます。

入浴後はマッサージをしてもらい最高の気分で就寝。


と、まあこんな感じである。


◇◇◇◇◇


「姉さま!散歩に行きましょう」

今日はわたしの天使はお散歩をご所望のようである。

「ええ、行きましょう」

「では、僕が姉さまの車椅子を押しますね」


わたしはルリアに身支度を整えてもらった。簡単な白いワンピースを着せてもらい、薄く化粧を施され、鍔の大きな麦わら帽子を被り、アルバートに車椅子を押してもらい庭に出た。


タウンハウスとは言え、公爵家の庭は広い。

お父様ご自慢のお庭は今日も美しかった。

わたしとアルバートは今日は天気も良く、噴水の近くのガゼポでのんびりすることにした。


「姉さま疲れてないですか?」

「アルこそ車椅子を押しながら来たので疲れたんじゃないの?」

「僕は大丈夫です!姉さまのお手伝いができて、姉さまと散歩ができて楽しいです」

なんていい子!!まさに天使!!

アルバートが悪い女に騙されないか姉さまは心配です!!アルバートが女を連れてきた日にゃわたし何をしでかすか…。

きっとわたしは意地の悪い小姑になるわね。


ガゼポでルリアにお茶を用意してもらいアルバートとティータイムを楽しんだ。

さわさわと心地良い風が頬を撫でる。

庭では草花が風に吹かれゆらゆらと揺れて、噴水は日光が反射しきらきらと光っていた。


「綺麗…」


そう呟いた時、ぶわっと突風が吹き抜けわたしの麦わら帽子を攫って行った。

風に乗り、飛ばされた帽子は高い垣根を越えて行ってしまった。

「ああっ!!姉さまの帽子!!」

アルバートはわたしの帽子が飛ばされたのに気付き追いかけて行ってしまった。

「アル!!ルリア、アルバートを追いかけて!!」

「しかし…」

ルリアはわたしの侍女だ。この体のわたしの傍を離れるのに不安があるのだろう。

「わたしなら大丈夫、動けないのにどこへも行かないわ。それよりアルバートをお願い、この広い庭で迷子になってしまうわ」

「…畏まりました。しかし、絶対ここから動かないでくださいね、絶対、ですよ」

ルリアは念を押してからアルバートを追いかけてくれた。


急に静かになったガゼポ。

天気は良く、風が気持ちいい。

ティータイムの後で小腹は満たされている。

となると眠くなるのは人の性だ。


心地良さにうつらうつらと船を漕ぐ。

いよいよ現実と夢の境界が曖昧になってきた頃…


「アリアーシュ?」


名前を…呼ばれた気がした。


ゆっくりと目を開ける。


キラキラと日の光を反射し、風に靡くシルバーブルーの髪。

驚きで見開かれたアメジストの瞳。


………誰?

かっこいいなぁ、わたしこんなイケメンの知り合い居たかしら?


うつらうつらとわたしはまだ夢と現実の境界線上にいる。

わたしが今見ているものが夢か現実か区別がつかない。


まるで王子様みたい


…………


………


……



…王子…様?


んああああああああああああああああ!!!!!!!!!

王子様!?王子!?


一気に意識が覚醒する。

そう、見間違えるはずもない。そこにいたのは…


「ヴィクトル殿下?」

お読みいただきありがとうございます♡♡♡


面白いと思っていただけたり、続きが気になったり、お気に召されましたらブックマークや☆にて評価いただけますと幸いです。

大変励みになります(`・ω・´)ゞ

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