33.悪役王子とお姫様~side ヴィクトル・ペルダナグ5②~
胃薬の準備はできていますか?
アリアーシュの領地の災害やアリアーシュが特殊なギフト持ちで聖教教会から守るため王宮で暮らしてもらうことになったりだとか色々あったけどそんな中、俺の誕生パーティが開かれることになった。
俺は自分の事しか考えず、アリアーシュが俺のために作ってくれたバングルをアリアーシュの目の前で粉々に砕いてしまった。
その時だった。紛れもなくアリアーシュなのにアリアーシュじゃないような、それでいて何故か懐かしさをアリアーシュに感じた。それもそのはず、俺の前に現れたのは俺が殺したアリアーシュだった。
アリアーシュは死ぬに死にきれず、殺されたことや自分にされてきた仕打ちに対する俺への憎悪ではなく、アリアーシュの城内での護衛に付けていたエリックとかいう騎士をアリアーシュに黙って処刑したことへの憎悪で欠片程の魂が残ったらしい。
今のアリアーシュはと言うと、毒入り菓子を食べて死んだアリアーシュという器に違う人物の魂が入り、その魂がアリアーシュとして生活していたという事だ。
アリアーシュじゃないのに俺はアリアーシュとして再び好きになった。
俺の所為で随分と遠回りしたがアリアーシュと和解し、魂は天に還り、アリアーシュと互いの気持ちを確かめ合った。
誕生パーティのダンスの途中でアリアーシュを連れ抜け出した。アリアーシュに疲れが見えたのは事実、だけど他の男にアリアーシュと踊らせたくなかった。もう俺だけのアリアーシュだ、他の男に指一本触れさせない。
色々あったしアリアーシュを早く休ませようとアリアーシュをメイド達に任せ俺も自室に戻った。
部屋の扉をノックされ、誰かと思えばアリアーシュのメイドだった。なにやらアリアーシュが俺に用があるらしくお伺いを立てに来たようだ。もちろん断る理由などない、ましてアリアーシュから会いに来てくれるなんて。
嬉しさのあまり何も考えず許可を出したが夜、入浴後に来ると言う事はそういうことなのか?いや待て、アリアーシュに限ってそれはない。いやしかし俺達はもう互いの気持ちを確かめ合ったんだ、だったら次にするべきことは…。
コンコン
控えめなノックはしっかりと俺の耳に届いた。ゴクリと生唾を飲み込み入室を促した。
「殿下のお誕生日をお祝いしたくて今朝作ったんです。受け取ってもらえますか?」
アリアーシュは持っていた箱をテーブルに置き、箱からケーキを取り出した。
アリアーシュが俺のために作ってくれたケーキ。
今までどんなに願っても食べられることがなかったアリアーシュの手作り。
嬉しい。愛しい。好き。ヤバい。顔がにやける。いや、泣く。
思わず顔を背けるとアリアーシュは何を勘違いしたのかケーキを片付けようとした。それをなんとか阻止し、アリアーシュを誘って一緒に食べることにした。
もちろんケーキは食べる、だけどアリアーシュと離れたくない。だから俺はアリアーシュを膝の上に乗せケーキを食べることにした。
アリアーシュは恥ずかしがっているが嫌がっている様ではない。
アリアーシュにケーキを食べさせようとするとフォークを奪われた。
「はい、殿下、あーん」
アリアーシュから食べさせてもらえるなんて。幸せ過ぎて死んでしまう。ここは天国か?もう俺は死んだのか?だったらアリアーシュは女神だな。
「殿下は苺はお好きですか?」
「ああ、嫌いではないけど…」
俺がフォークを奪い返したからかアリアーシュは手で苺を摘まみ俺の口元まで持ってきた。
どうぞと促され俺はアリアーシュの指ごと苺を食べた。
アリアーシュの指に舌を絡め、吸い付き、口から離れる指をぺろりと舐めた。
アリアーシュと思いが通じ合えたこと、アリアーシュの手作りケーキが食べれたこと、アリアーシュに食べさせてもらったこと、アリアーシュが好きで好きで好きすぎる俺にとって我慢の限界をとっくに超えていた。
アリアーシュの全部が欲しい。
アリアーシュの唇は甘く柔らかった。離れたくない離したくない、このまま一つになりたい。
夢中で貪っていると絡めた手に抗議するように力が込められた。名残惜しくも唇を離し、見るとアリアーシュは苦しそうに肩で息をしていた。しかしその瞳に嫌悪はなく寧ろ蕩けてまるで欲情しているようで。
嫌だったわけじゃないんだな。
それならばと今度は息ができる様短いキスをたくさんした。次第にアリアーシュは俺を受け入れ、強請るように口を開いた。アリアーシュの口腔内の唾液を舌で絡め取りゴクリと嚥下する。
くちゅくちゅと部屋に水音が響く。
もっともっと、もっとアリアーシュが欲しい。
アリアーシュに拒まれない事を理由に好き勝手に貪っていると、不意にカクンとアリアーシュの力が抜けた。
「?アリアーシュ…?」
返事がない。
肝が冷え一瞬で我に返った。
「アリアーシュ!?おい!アリアーシュ!!」
「うぅ…んん…」
よかった、呼吸はある。まだこういう事に慣れていないアリアーシュには刺激が強すぎたか…。
刺激が強かったのは俺も同じか…。我を忘れてがっつくなど獣と同じではないか。これで嫌われれば元も子もない。アリアーシュは嫌がってなかったし次からはアリアーシュのペースに合わせないとな。
「おやすみアリアーシュ」
最後にアリアーシュの額にキスをして、朝起きたら全部夢だったなんてことにならない様アリアーシュを抱きしめながら眠りについた。
翌朝、アリアーシュのあまりの可愛さについつい揶揄い過ぎてしまい、ご機嫌取りという口実でアリアーシュをデートに誘った。これが俺達の初デートだ。
浮かれすぎて馬車の中でギクシャクしたものの互いの気持ちを確認しあってアリアーシュから好きだと言ってもらえた。
アリアーシュが最初に行きたがったのは植物園だった。
目を輝かせて見て回るアリアーシュは可愛かった。普段はどこに行っても淑女然とし凛としているアリアーシュが無邪気な子供、年相応の女の子の顔をしていた。可愛い、好き。
何故かアリアーシュは俺の名前を呼ぶ事に抵抗がある様でずっと殿下と呼ばれている。しかしお忍びでバレてはいけないと言えば恥ずかしがりながら呼んでくれた。可愛い、好き。
「はぐれない様にちゃんと繋いでいてくださいね…ヴィル様」
手を繋いで欲しいと言った俺はアリアーシュからカウンターを食らい色んな感情が混ざり合って爆発して昇天しそうになった。反面、すぐにでも掻っ攫い閉じ込めて二人だけの世界で暮らしたいと仄暗い感情が顔を出したがアリアーシュが浄化してくれた。尊い、好き。
植物園を出た後も手を繋いで街を歩いた。
アリアーシュといると世界が変わる。アリアーシュはいつも俺の知らなかった世界に連れて行ってくれる。
今日が特別なんじゃなくアリアーシュと一緒にいるから特別なんだ。
楽しい時間は過ぎるのが早い。
観劇に向かうため予約していた【アッシュ】に向かう。
アリアーシュは物欲がなく自分のためにお金を使わない。それでも綺麗なものや可愛いものが好きなのは知っている。
だけどアリアーシュに贈り物をしたくても気に入ってもらえなかったらと思うとこれといって渡せない…。だから一つでも気にいるものがあればとたくさん買ってしまう。
アリアーシュが試着に行ったあと、俺も別室に通された。
そこにはスリーピーススーツが用意されており、アリアーシュからだと言う。
ああ、そうか。アリアーシュだけ着飾ってもだめ、俺もアリアーシュの隣に立つに相応しい格好をしなくてはいけない。俺はアリアーシュのパートナーだから。
アリアーシュの用意してくれたスーツに袖を通す。アリアーシュが選んでくれた、ただそれだけで布のスーツなのに無敵になった気がした。
着替え終わって先程の部屋で待っているとドアが開き、準備ができたアリアーシュが現れた。
「「…」」
アリアーシュを直視できず思わず目を逸らしてしまった。
美しい、神々しい、尊い、好き。
アリアーシュは愛らしい妖精だと思っていたが実は女神だったのか?
なぜかアリアーシュも固まっており、どちらとも動こうとせず、店長に追い出されるように店を出て、情けなくもぎこちないエスコートで待たせている馬車に乗り込んだ。
変装魔法を解いたので俺は王子のヴィクトルだしアリアーシュはその婚約者だ。周りのざわつきなんて一つも耳に入ってこなかったけどきっと気付かれていただろう。
なのに!だから!完璧にスマートにアリアーシュをエスコートしたかったのにめちゃくちゃカッコ悪い…。
ぎこちなく馬車に乗り込み、アリアーシュの向かいに座った。さっきまで膝の上に乗せることが当然のようにくっつきたい放題していたのに隣に座ることも、肩を抱くことも、膝に乗せることもできない。
ダメだ。俺は誠心誠意エスコートするってアリアーシュに誓ったのにここでヘタレってなにもできなくなってどうする!?また次のデートの約束ができるくらいアリアーシュに楽しんでもらいたい!
ちゃんとエスコートする。俺はアリアーシュの完璧でカッコよく頼れる婚約者になるんだ!
「アリアーシュ、そのドレスとっても似合ってる。いつもは妖精のように愛らしいのに今は女神のように美しいね」
俺は思いのままに感想を述べた。
アッシュを出てからお互い無言だった。つまり俺は着飾ったアリアーシュに対して一言も声を掛けてないということだ。本来なら着飾ったアリアーシュを見た時に声を掛けるのがベストなエスコートポイントだから今の俺はマイナスポイントだ。
「あっ…ありがとうございます…あ、あの…その…で、殿下も素敵です」
俺の婚約者が可愛過ぎるんだが!?
顔も耳も真っ赤にして、手袋で見えないけどきっと指先まで真っ赤にしてるだろう。
「もうヴィルって呼んでくれないの?」
「先に殿下がアリアーシュって呼んだんですよ」
俺の婚約者が可愛過ぎるんだが!?
え?ちょっと拗ねてる?どういうこと?おれが愛称で呼ばなかったから怒ってるの?いや、それは俺にとって都合のいい思い込みだ。俺が愛称で呼ばなかったのに自分だけ呼ばなきゃいけないのが嫌なのか?それって俺が愛称で呼ぶ限りアリアーシュも愛称で呼んでくれるということか?俺はこれからもアリアー
シュを愛称で呼ぶことを許されたのか?
ダメだ、アリアーシュが可愛過ぎる以外よく分からなくなってきた。
「劇場に到着いたしました」
馬車が止まり御者の報告を受け扉が開く。先に俺が降り、アリアーシュに手を差し伸べる。アリアーシュは俺の手を取り馬車から降りた。
劇場前に止まった王家の紋章付きの馬車は周囲の目を奪った。馬車から降りた俺達に視線が集中する。ザワザワザワと囁くような噂話が嫌でも耳に入る。
周りの目なんて気にしない、好きなだけ噂をすればいい、俺がこの国の王子、ヴィクトル・ペルダナグだ。ただし、アリアーシュを傷つける奴だけは絶対許さない。
そう思ってアリアーシュを見ると、凛と背筋を伸ばし堂々と前を向き優雅に微笑み、俺に娘を紹介しにくる貴族にすら令嬢の頂点と言わしめた公爵令嬢アリアーシュ・セラトリアがそこに居た。
俺の婚約者がカッコいいんだが!?惚れる!!好き!カッコいい!!
劇場に入れば俺が予約したのは王族専用席だからすぐに案内された。せっかくのデートに挨拶に来られても迷惑なだけだから正直ありがたかった。飲み物だってこのボックスから頼めば持ってきてもらえる。王族バンザイ。
「大丈夫ですか?」
何がと言わなくてもわかる。アリアーシュは俺が沢山の人込みも他人から好奇の目で見られることも苦手なのを知っている、だから心配してくれているのだ。
「わたしが一緒の時はわたしがヴィル様をお守りします、だから無理しないで下さい」
ああ、そうか俺の隣をカッコよく歩くアリアーシュは俺を守る騎士だったのか。
そんなことを言われればもう限界だった。ギュッと抱きしめてアリアーシュを腕の中に閉じ込めた。
「カッコよすぎるよアリィ…これ以上惚れさせてどうするの?」
「ふふふ。そうですね、王太子妃にしてくださいますか?」
「もうそれは決定事項だから他の事を要求してください」
なんて軽くじゃれているとノックされボーイが飲み物を持ってきた。時計を見るともうすぐ開演時間でアリアーシュはあっさり俺とじゃれるのを止めた。もう少し遊んでくれてもいいじゃないか…。
今、上演されている演目は騎士と姫の身分差の悲恋物語だ。内容は序盤は騎士と姫の出会いから始まる。姫が悪者に襲われそうなところを騎士が助け、姫は騎士に惹かれ、騎士はその時に負った怪我の手当てをしてくれた姫に惹かれた。中盤になると結ばれないと分かっていながらもお互いの気持ちを抑えることができず愛し合う。そんな折、姫が悪役王子の目に留まり、悪役王子はありとあらゆる方法で姫の気を引こうとする。終盤はどんな手を使っても自分のものにならない姫を手に入れるため、とうとう悪役王子が騎士を殺してしまう。騎士を殺し姫を自分のものにするも騎士を心から愛していた姫は悲しみに暮れ自ら命を絶つ。悪役王子もまた、姫を心から愛していたため、姫の亡骸を抱えながら自らの命を絶つ。という話だ。
なんだろう…なんかこう…騎士と姫と悪役王子を彷彿とさせないか?
この悲恋物語は酸いも甘いも嚙み分けてきた熟年貴婦人方に大受けしているらしい。
俺が好きなのは勇者が魔王を倒す冒険譚だ。だけどデートで観るにはムードがない。だったら俺だって初デートで観るならハッピーエンドのラブロマンスの方がいい。じゃあなぜこれを観ているのかって?それは俺がアリアーシュのご機嫌を取るために咄嗟に観劇を提案したからだ。
デートに観劇はマスト、外れなしだと彼女持ちのグレイが惚気話で言っていた。
何が外れなしだよ!!大外れじゃないか!?これでアリアーシュがエリックを思い出してみろ、俺はまたアリアーシュに恨まれ、憎まれて、嫌われて捨てられてしまう。
もし、エリックが賊と繋がっておらずただの城内護衛騎士だったなら、俺があの頃、アリアーシュへの思いが恋だと気付いていたら、アリアーシュからエリックを遠ざけていただろう。ひょっとしたら冤罪をでっちあげて殺していたかもしれない。あの頃の俺は人の命に何の重みも感じず、欲しい物を手に入れるためならそれくらい簡単にやっただろう。この劇の悪役王子と同じように…。結局本当に欲しい物は手に入らないのだ。
俺の場合はエリックがアリアーシュを何とも思っておらず賊と繋がっていただけ、アリアーシュが俺に復讐しようとしただけ、歯車が違えば、アリアーシュが現れなければこの劇と同じようになっていたかもしれない。
今更たらればの話をしてどうする、過去はどうやったって変えられないしアリアーシュと出会えない過去ならば変える必要などない。アリアーシュと出会って、再びアリアーシュに恋をして今度は間違えないように変わろうとした。だけど執着と依存が増し、あの頃、あの頃とまるで自分は変わったかのように言うが、ようやくアリアーシュと向き合えるようになったのに俺からアリアーシュを奪おうとする者やアリアーシュを傷つける者には容赦はしない。慈悲などない、死んだ方がマシだと思わせるくらいの地獄をみせてやる。
「ヴィル様?」
アリアーシュに声を掛けられて我に返った。考え事をしている間に劇が終わったらしい。
アリアーシュはこれを観てどう感じたんだろう?何を思ったんだろう?
「ごめん、初デートで観る話じゃなかったね」
気が付けばアリアーシュから何か言われる前に謝っていた。アリアーシュがどう思ったか気になる反面、知るのが怖かった。
「ヴィル様が今、何をお考えなのかお顔を見ればわかります。王族の方がそんなに分かりやすい顔をしてはだめですよ」
そう言ったアリアーシュはどこか悲しそうに微笑んだ。
「アリアーシュはエリックへの想いをわたしにすら隠しておきたかったみたいです。なのでわたしにはエリックという騎士の記憶があまりありません。だからわたしがエリックを想うことはありません。ただ…」
「ただ?」
「アリアーシュには敵わないんだなって思っただけです」
「アリアーシュに敵わないとは?」
「…」
言いたくないのかアリアーシュは口を噤んだ。
「ねえアリィ、今アリィにそんな顔をさせているのは俺だよね?」
きっと俺が無神経にアリアーシュを傷つけたんだ。
大切にしたいのにそれすら上手くできない。
俺は跪いてアリアーシュの手を取った。
「ごめんねアリィ。俺はアリィを傷付けてばかりだ。初デートだって楽しい思い出にしたかったのに満足にエスコートもできない。もう俺と一緒に居るのは嫌になった?」
「違います!なりません!そうじゃなくって…」
握り返された手を握る力強さからアリアーシュが全力で否定していることは伝わった。
「アリアーシュが羨ましいんです」
小さく深呼吸し少し落ち着いたアリアーシュは小さく呟いた。
「アリアーシュはずっとヴィル様の中にいて、小さなきっかけ一つでヴィル様にそんな顔をさせるほど想ってもらえているアリアーシュが羨ましいんです。ヴィル様のことは信じています、わたしを大切に思ってくれていることも分かっています、だけどヴィル様がアリアーシュを想う度わたしはアリアーシュじゃないって言われているみたいで傍に居るのが苦しくなるんです」
嘘…だろ?まさか…まさか…それって…
「アリアーシュに嫉妬してるの?」
図星だったのかアリアーシュの顔は耳まで真っ赤になった。
「ごめん、ごめんね。俺が悪かった。確かに過去に似たような出来事があったとは思ったしアリアーシュの事も思い出した。だけど過去を思い出しただけ。アリィに出会えない過去なんて必要ないし俺のこれからにはアリィが必要なんだ。だからアリィが俺のことを嫌って捨てない限り俺はアリィを離さないから覚悟してね?」
アリアーシュがアリアーシュに嫉妬してるってどういうこと?嬉しすぎるんだがこれは夢か?
ちょっと待って、アリアーシュってそんなに俺のこと好きだったの?え、待って、待って、待って、待って、確かに好きとは言われたよ、だけど俺か好きって言って返してくれる程度だと思ってたんだけど…。これから俺のことをちゃんと好きになってもらおうと思ってたんだけど俺、自惚れてもいいの?アリアーシュに好かれてるって自惚れてもいいの?
「ヴィル様は…こんなことを思ってしまうわたしのことを嫌になったりめんどくさくなったりしないんですか?」
「好きな子に嫉妬されて嫌になるはずないだろう。ねえアリィ、俺のこと好き?」
下から覗き込むようにエメラルドの瞳と目を合わせる。アリアーシュは目を逸らそうとしたがぐっと堪えて俺を見つめ返した。
「好きです。ヴィル様が好きです」
アリアーシュの手が俺の頬に伸び、唇が触れた。
唇が触れただけ。だけど初めてアリアーシュからキスをされ、理性を繋ぎ止めるのが大変だった。これが外じゃなかったきっと自分を抑えることができなかった。
こうしちゃいられない、早く帰って続きをしよう。デートは今日一日。時間は有限なんだから。
ヴィクトル殿下の重長い愛を長々と読んでいただきありがとうございました(細目に吐き出させてあげているつもりだったのですが…)
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