32.恋の病~side ヴィクトル・ペルダナグ5①~
(*ノωノ) 誤字報告ありがとうございました!
サイトの仕様変更で誤投稿してしまいました(/ω\)ホント、投稿の設定分かんなかった…。フライングで読まれてしまった方には申し訳ないです。
今回はヴィクトル殿下がひたすらアリアーシュ好き好き((((oノ´3`)ノ~♡♡~♡♡って言ってる回です。
殿下のアリアーシュへの愛が重すぎて長くなってしまいました。つまり、胃もたれするほどしつこいということです( ^^) _θ~胃薬どうぞ
そんな愛が重いヴィクトル殿下のお話ですがお付き合いいただけますと幸いです。
想い続けて約七年、色々あったが念願叶ってアリアーシュと両思いになることができた。
顔合わせで初めて出会ったあの日、一目でアリアーシュに惹かれた。だけど幼かった俺はその気持ちが好きだと、あれが恋だと気付かず、アリアーシュを追い込んでいた。俺を殺したいと憎む程に。
アリアーシュは気付いていなかったが、エリックとかいう騎士に惚れていたことも知っていた。ずっと見ていたんだ、気付かないはずないだろう。
あいつの前では素直に泣いて、素直に笑っていた。あいつの前では等身大のアリアーシュ・セラトリアだった。
その事に気付いてからは、更にアリアーシュへの仕打ちが酷くなった。
思い通りにならないアリアーシュに対して、俺以外の男に隙を見せるアリアーシュに対して、イライラしてはアリアーシュに当たっていた。
しかし、どんなに酷い仕打ちをしてもアリアーシュが俺から離れる事はなかった。だから俺は嫌われているなんて思わなかったし、アリアーシュを変えることができると思っていたんだ。
そんな時、アリアーシュが誘拐される事件が起こった。
護衛騎士のくせにアリアーシュを守れなかった事でエリックを拷問すれば、あいつはペラペラと賊の居場所を吐いた。アリアーシュを守れなかったことに対する罰のつもりだったが、思わぬ情報が入りセラトリア公爵に報告すると、あの人は自らアリアーシュの救出に向かった。
あの時は何もできない自分が歯痒くもあった。
無事、公爵に救出されたアリアーシュはセラトリア領で療養することになり、しばらく会えない日々が続いた。
アリアーシュが俺の婚約者でなければ、あのままセラトリア領で療養を続けていただろう。しかし俺の婚約者で王妃教育があるアリアーシュはのんびりと領で療養する事は許されなかった。
王都に戻るよう要請されたアリアーシュが、王都にすんなり戻って来たのはきっとあいつに会うためだろう。アリアーシュが戻ってくるまでにあいつを処刑してやりたかったが間に合わなかった。
俺はあいつの本当の罪状をアリアーシュに教えることができなかった。知ればアリアーシュが傷付くから、知ればアリアーシュが泣いてしまうから。
素直に感情を表して欲しいとは言ったが、あいつの事を想って泣くアリアーシュは見たくなかった。
あいつが投獄されたのを知ってから、アリアーシュから毎日面会の要請があったが、もちろん許可することはなかった。そしてあいつの処刑はアリアーシュに知らせることなく執行された。
ようやくあいつがいなくなったのにアリアーシュの態度は変わる事はなかった。あいつの処刑を知らされたアリアーシュは取り乱すことなく、その後も淡々と王妃教育を受けていた。俺への復讐の刃を研ぎ澄ましながら。
特別な場所で珍しい菓子と貴重なお茶でアリアーシュをもてなせば、少しは気が変わるだろうと開いた茶会で、ついにアリアーシュは俺に牙を向けた。
俺が食べるはずだった茶菓子、それには毒が仕込まれていた。
その菓子を、俺に無理矢理ねじ込まれたアリアーシュは、なんとか一命は取り止めたが、長い昏睡に陥った。
その日王城にいた人全てに事情聴取をし、毒を仕込めそうな人を調べたが全く尻尾を掴めなかった。ある人物を除いては。
アリアーシュ・セラトリア、俺の菓子に確実に毒を仕込むことができたのは彼女だけなのだ。
その考えに至って、俺は初めてアリアーシュが俺を殺したいほど憎んでいたことを知った。
ショックはなかった。死んでやれなくて悪かったと思うが、アリアーシュが毒殺を実行に移すほど俺の事で気持ちが一杯だったかと思うと喜びすら感じた。
アリアーシュが昏睡状態から目を覚ましたのは倒れてから一年程経ってからだった。
面会を拒否されてからも足繁く通い、そして運命の悪戯か、偶然にもアリアーシュと出会った。
アリアーシュは完璧だった。一切の憎悪を感じさせずただ淡々と王妃教育をこなすほど感情のコントロールは完璧だった。
それなのにあの日出会ったアリアーシュは怯えを隠そうとしているのがバレバレだった。
完璧なアリアーシュらしくない、隙だらけのアリアーシュ、アリアーシュなのに別人の様なアリアーシュ。
しかしそんな事はどうでもよかった。アリアーシュが目を覚ましてくれたのだから。
◇◇◇◇◇
そんなある日、いつもと変わらず執事に花束を渡すと手紙を渡された。
「アリアーシュお嬢様からでございます」
嬉しさの余りその場で開封しようと思ったが、ひょっとしたらもう来ないでくれと言う内容かも知れないと思い、持ち帰って読むことにした。そんな内容を見たら泣かない自信がない、絶対泣く。
城へ戻り、意を決して受け取った手紙を開封した。
拝啓
ヴィクトル・ペルダナグ様
毎日お忙しい中、お見舞いに来てくださりありがとうございます。
感謝の気持ちを込めて、頂いたお花で栞を作りました。
殿下にお受け取り頂けますと幸いです。
アリアーシュ・セラトリア
ポタポタと握りしめた栞に雫が落ちる。
ー涙ー
泣いているのは俺?
悲しくない、むしろ嬉しいのになぜ涙が出るのだろうか。
胸が早鐘を打つ。苦しくて、苦しくて、息ができない。
まさか魔力暴走か?
呼び鈴を鳴らすと従者がやってきた。
「爺さん達を呼んできてくれ!早く!!」
俺が魔力暴走を起こした時、対処できるのは五英傑と呼ばれた爺さん達だけだ。
運良く爺さん達は五人とも城に来ており、俺が魔力暴走しかけていると聞きつけ、慌てた様子で部屋に飛び込んできた。
しかし俺を見るや否や「魔力暴走しとらんじゃないか」と落ち着きを取り戻した。
「魔力暴走していない?そんなはずはない!」
魔力暴走を起こした時、胸が苦しくなる。その時の感覚と似ているんだ。この胸の苦しさが魔力暴走じゃなかったら何なんだ!?
「まさか…心臓の病気なんじゃ…」
魔力暴走を起こしていないのに胸の苦しみを訴える俺にセオドアの爺さんが診察してくれたがどこも悪くなかった。
「魔力暴走でもなく病気でもない、呪いを掛けられた形跡もない。坊ちゃんは健康そのものなんじゃがのう」
「一体何があったんじゃ?」
いつもは揶揄ってばかりの爺さん達も俺の様子がおかしいことに心配しているようだった。
俺は胸が苦しくなった経緯を爺さん達に話した。
「それはのう、坊ちゃん『恋の病』じゃ」
『恋の病』それがセオドアの爺さんの診断結果だった。
恋?
これが恋?
「つまりアリアーシュ嬢を好きという事じゃ」
好き?
俺がアリアーシュを好き?
しかしそう言われてしっくりきたと言うか納得がいった。
そうか、俺、アリアーシュが好きだったんだ。
「男の子は好きな子の気を引くために苛めると言いますけど側から見てもあの態度じゃ、好きな子を苛めてるようには見えなかったですけどね」
「そうじゃな、度を超えた仕打ちじゃったな」
「アリアーシュ嬢が倒れてからじゃないか?素直になりつつあるのは」
「でもそれが無自覚じゃったとはな」
爺さん達は楽しそうに好き勝手言ってくれている。
人を好きになるのも、恋をしたのも初めてで、アリアーシュの事しか考えられなくて、でもアリアーシュの事を考えると胸が苦しくなって。
「どうすればいい」
アリアーシュは俺を好きになる事はない。今までアリアーシュにしてきた事を考えれば当然だ。
「どうすればいい」
初めての恋は始まることすらなく、寧ろ始まる前に終わっていた。
「どうすればいい」
握りしめた栞に何度も問う。
「こりゃあ重症じゃな」
「しかしこればっかりはわしらにもどうにもできんからのう」
恋の病は五英傑でもどうにもする事ができないらしい。
◇◇◇◇◇
アリアーシュに返事を返すとまた返事が来た。
アリアーシュがどう過ごしているか、読書が趣味でどんな本を読んでいるのかなど今まで知らなかったアリアーシュを知る事ができた。
アリアーシュと話を合わせるため必死に勉強したし、本もたくさん読んだ。アリアーシュの知識のレベルが高く、だからと言って適当に返事はしたくなかった。アリアーシュは外国の本まで読んでいるらしくその本は外国語で書かれており言語を勉強しながら読書をしていると知った時は外国語の勉強のために授業時間を倍に増やした。
王妃教育を完璧にこなしていたアリアーシュに釣り合う様に楽器やダンスも真剣に取り組んだし今まで以上に剣術にも魔法にも取り組んだ。
社交辞令だと思うけど俺の演奏を聴きたいと言ってくれた。長い間昏睡状態にあり、体を動かすことが苦手なアリアーシュは剣技や魔法にとても興味を持っていた。
アリアーシュが喜ぶのなら、興味を持ってくれるのならなんだってやってやる。
すると俺を見る周りの目も変わってきた。まあ、それはどうでもいい。
ただただアリアーシュとの手紙のやり取りが楽しかった。だけど…
会いたい
アリアーシュに会いたい、顔が見たい、声が聞きたい
手紙のやり取りは嬉しい反面アリアーシュへの想いか膨らむばかりで苦しくもあった。
その日も花束と手紙を渡して帰るつもりだった。しかし、その日はいつもと違った。
開かれた扉のその先には、もう会うことが叶わないと思っていたアリアーシュがいた。
応接室に通されたが会話らしい会話をしたことがなく、何を話せばいいのかわからなかった。喉がカラカラで言葉が出ない。
よく見るとアリアーシュはまだ顔色が良くない、無理をして俺と会っているんじゃないだろうか。やはり俺が毎日来るのはアリアーシュにとってストレスにしかならないのか。
「やり直して欲しい」
アリアーシュは俺を怖がっているだろうし嫌いだろうし許すこともないだろう。
それでも俺は自分の希望をアリアーシュに押し付けた。
どんなに嫌われていても逃してやる事はできない。だから婚約者という鎖に縋り付く。
好きで好きでどうしようもなく好きで、だけどこの気持ちはアリアーシュには伝えられない。
伝えてしまえばアリアーシュが困るだろうし今まで以上に距離を置かれるだろうから。
だったら今のままでいい。ようやく会ってくれるようになったんだ、俺はただアリアーシュにこれ以上嫌われない様、怖がられない様にするだけだ。
ゆっくりでいい、この婚約のやり直しでアリアーシュとの距離を少しでも縮めたかった。
◇◇◇◇◇
アリアーシュの王妃教育が再開されることになった。手紙でアリアーシュが爺さんたちに会いたがっていたから俺と一緒に訓練を受けるのはどうかと陛下にお伺いを立て、アリアーシュが乗り気なら許可すると言われた。
爺さんたちへの憧れが強いアリアーシュは二つ返事で引き受けて、そのあと爺さんたちと楽しくお茶会をしたそうだ。くそっ、俺誘われてないんですけど。
アリアーシュと会えるようになって嬉しいけれど、今までが今までなだけに緊張するし、アリアーシュも何事もなかったかのように振舞ってくれているが俺の事を苦手としている事はわかった。
ギクシャクしている俺達だったが爺さんたちの特訓を受けている間は少し距離が縮まったような気がした。というよりはアリアーシュにとって爺さんたちの特訓が楽しかったんだと思う。
そんな時、アリアーシュの弟のアルバートがスラムに通うようになった。
あの時のアリアーシュは王子の婚約者でも公爵家のご令嬢でもなくただの弟思いの姉の顔をしていた。取り乱すアリアーシュを見たのは初めてで驚きもしたが作り物じゃない剥き出しのアリアーシュを見て益々好きになった。
街で王子と公爵令嬢だとばれないよう変装しお互い愛称で呼ぶことにした。アリアーシュをアリアと呼ぼうともしたがどうせなら俺だけの愛称で呼びたかったから『アリィ』と呼ぶことにした。
普段俺の事を『殿下』としか呼ばないアリアーシュには名前をすっ飛ばして愛称で呼ぶのはハードルがたかかったらしく、気を抜けばいつも通りの『殿下』と呼びそうになっていた。しかし恥ずかしそうに『ヴィル様』って言うアリアーシュはめちゃくちゃ可愛かった。
この時初めて慰問以外で街を歩いたけど知らないこと、珍しい物がいっぱいでアルバートの事が解決したら色々見て回るのも悪くないかもしれない。この商業区域だけじゃなく工業区域を回るのも楽しそうだ。そう、俺はこの国の王子だからな、この国の事を実際目で見て知らなくてはいけない。そういう事だ。
アルバート事件が片付いたあと、何故か俺に護衛と側近を付ける話が上がった。他人と一緒に居るのは苦痛でしかない、俺はアリアーシュだけいればいい、だから護衛も側近もいらない。俺が拒否し続けているとその話がアリアーシュまで届いたらしい。
アリアーシュにカッコ悪いところは見せられない、幻滅されたくない、嫌われたくない…。だけどアリアーシュ以外誰も信用できない。命を預ける騎士や俺の右腕となる側近に信用できない奴に任せるなんてできない。
そんな我儘が通るはずもなく、拒んでも拒んでも次から次へと連れてこられるくらいなら最初に首を縦に振っておこうとエルドレッド、マティアス、グレイリヒトを騎士と側近にした。
アリアーシュにカッコ悪いところや弱いところを見せたくないのに、根っからの姉気質なのか弱さを見せるとヨシヨシと甘やかしてくれる。はっきり言って心地良い。もうこのままアリアーシュに甘やかされ続けたい。だけどそれが弟のアルバートに対するそれだと気付いた時、俺はアリアーシュの弟になりたいんじゃないと泣く泣く心地良さを手放した。だけど、時々、極稀に、ヨシヨシしてもらおう。
お読み頂きありがとうございました♡♡♡
ヴィクトル殿下の愛が重すぎて長くなりすぎて二編に分けることにしました。次回投稿は次週4/13の予定です。
なのでまだこれが続くっていう…次回も読んでくださる方に先に胃薬お配り致しますね( ^^) _θ~胃薬どうぞ
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