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リヴィニア恋歌  作者: ゆえこ
一章・幼年期編
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24.届かない想いと離れる心〜sideヴィクトル・ペルダナグ4〜

やっと今日で終わる。

俺が成人していれば祝いの席は三日三晩続いただろうがまだ十四、昼のお披露目会と夜の晩餐会、今日一日耐えれば終わる。

毎年毎年お披露目会に晩餐会…どんだけお披露目するんだよ。


長かった準備期間、アリアーシュと同じ宮で過ごしているというのに生活リズムがすれ違い中々顔を合わせる事も出来なかった。

アリアーシュが足りない。全然足りない。こんな状態でアリアーシュに会ったら暴走しないか心配だ。

あの小さな体を抱きしめて俺の腕の中に閉じ込めてしまいたい。

ああ、でもアリアーシュに膝枕をしてもらって良く出来ましたって頭を撫でてもらうのも悪くない。あの膝に顔を埋めて頭を撫でてもらいたい。


そして今日こそは、今日こそは!!


(誕生日を理由に)添い寝の許可を得る!!


俺たちは婚約者だ、同じ宮に住んでいる、寝室が一緒でもおかしくないだろう?

これまで二度も!!二度もだぞ!!

俺たちは二度も一緒に寝たんだ。今更却下されるいわれはない。アリアーシュに拒まれさえしなければ…。

そこが最後の難関だよな…。アリアーシュに拒まれれば押しきれないし、そこで嫌われれば俺の人生は終わる。


十四の誕生日俺は人生を賭けた賭けに出る。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇



お披露目会が始まるも俺達王族の入場は一番最後だ。

早くアリアーシュに会いたい。お互い支度に時間が掛かり、今日はまだ朝から一度も顔を見ていない。

俺が傍に居ない間に変な奴らに絡まれていないだろうか、アリアーシュはおっさん受けがいいからな…。

もし気安くアリアーシュに声を掛けている奴がいたり、いやらしい目で見ている奴がいたら死刑にしてやる。


「陛下、王妃様、殿下、ご入場ください」

合図とともに豪奢な扉が開かれた。

俺達が登場するのは二階で下の様子が良く見えた。

皆の視線が一斉にこちらに集中する。アリアーシュは………。


いた!!アリアーシュは何故か女性に囲まれていた。まあおっさんに囲まれているよりはマシか…。


青はセラトリアのカラーだ。あのドレスは間違いなくセラトリア公爵が贈った物だろう。

涼やかな水色のドレスに刺繍やレースが施され、子供っぽい可愛さはなく、しかし背伸びした大人っぽさもなく、本当に今のアリアーシュに良く似合っていた。

髪の毛に編み込まれたリボンも紺と水色の二種類でこれではまるで…。


まるでアリアーシュ・セラトリアを主張しているようではないか!?

やってくれたな公爵。

俺はまだ成人を迎えていないので婚約者にドレスを贈ることができない。それをいいことにアリアーシュはまだ自分のものだと言いたいのか?

いや、まあそうなんだけど、まだアリアーシュは嫁に来てないんだけど、それでも露骨すぎないか?


俺の顔を見た公爵は、俺が公爵の意図に気付いたことに気付き勝ち誇ったように笑った。

くそっ!!まあいい。アリアーシュが公爵の贈ったドレスを着るのはこれが最後だ。来年のデビュタントにはアリアーシュを俺色に染めるからな!!


俺と公爵のやり取りなど露知らず、俺と目が合ったアリアーシュはにっこりと微笑んだ。

可愛い、俺のアリアーシュが可愛い、可愛過ぎる、俺のアリアーシュが可愛過ぎる。

結婚しよう、今すぐ結婚しよう、嫁、俺の嫁が可愛い、俺の嫁が可愛過ぎる。

俺の誕生パーティーなんてどうでもいい、これを今から結婚式に変更しよう。


誰だよ成人しないと結婚できないなんて決めたやつ。俺は王子だから関係ない、今すぐ結婚しよう。


「殿下、ご挨拶です」

アリアーシュに夢中になっていると、今日は俺のサポートに付いているグレイリヒトから耳打ちが入った。

いけない、いけない。ここで暴走してしまったらアリアーシュにドン引かれて距離を取られて添い寝どころではなくなってしまう。

冷静に、アリアーシュにかっこいい所を見せる!アリアーシュに「ヴィル♡ステキ♡」って言わせる!


挨拶が終われば俺が最も苦手とする献上式だ。

大して欲しくもない物を贈られて、これを贈ったんだから優遇して下さいよ、みたいな目や言葉で訴えられるのにウンザリする。

俺が欲しいのはアリアーシュだけだ。それ以外はいらない。


逃げ出したいのに逃げられない。だったらアリアーシュの傍がいい。

なのに


「わたくしの贈り物はあちらにご用意させていただいております」


俺の行動パターンなどお見通しのアリアーシュに先手を打たれ壇上に上がることになった。

アリアーシュからの贈り物を受け取らない選択肢など存在しない。


「美しい」


アリアーシュから贈られたのは宝石がはめ込まれたバングルだった。

「これは?魔石か?」

「はい、殿下に贈る物は自分で用意したいと無理を言って狩に行ってきました。そしてこの魔石には…」


「狩に行っただと?お前は自分の立場を分かっているのか!?」

どういうことだ!?いつ行った!?俺はそんな話聞いていないぞ!!

もう既にアリアーシュが被災地で怪我人を救った話は国内に広がっている。中にはアリアーシュを【セラトリアの聖女】と呼ぶものまでいて外出の危険度はさらに上がった。


「お前は今どういう状況で王宮で暮らしている?外に出ればどうなるか説明したよな?少し自由にさせ過ぎたか?お前には危機感が足りていない!!」

アリアーシュが俺に黙って行った?

不自由だと思い王宮内と王城内では自由にさせていたがそれが悪かったのか?


「それとも俺がこんなもので喜ぶとでも思ったのか?」

どうして危険を冒してまで狩りに行った?こんなものじゃなくても俺はお前から貰えるものなら何でも嬉しいのに。

どうして伝わらない?

結局俺の独りよがりで、お前にとって俺は形だけの婚約者なんだな。


「もう少し利口な女だと思ったんだがな…残念だよ、アリアーシュ」


バリィィィン!!


砕けたバングルの向こう側に泣きそうなアリアーシュの瞳が見えた。


「殿下のお気持ちを察することが出来ず、ご厚意に背くような真似をして申し訳ございませんでした。婚約破棄、国外追放、死刑、如何なる処分でも謹んでお受け致します」

頭を垂れたアリアーシュの表情は伺えない。声は震えておらずこんな時まで気丈だった。

こんな時だからこそ気丈なのか?

それがアリアーシュ・セラトリアだ。


「お待ちください、殿下」


重苦しい空気の中、空気を読むことなく声を掛けてきたのは白地に金糸で刺繍の施された僧侶服を着た小太りの男だった。

「アリアーシュ様は我々聖教教会が聖女としてお迎えしたいと考えております。聖女として人々を救う事でどうか死刑を免れる事はできないでしょうか?」

「聖教教会だと!?どうやって入り込んだ!?」


もちろん教会の奴らなど今日のパーティーに招待していない。

教会と繋がっている奴、繋がっていると疑わしい奴も招待していない。

アリアーシュがいるので警備は強化している。そう簡単に忍び込めないはずだ。


誰かが手引きした?

誰が?


アリアーシュは渡さない。もちろん処分なんてしない。

俺はアリアーシュを背に庇い小太りの男と対峙した。

護衛の騎士が続々とホールに流れ込んで来て小太りの男を捕えようとした。


「お待ちください」


騒がしくなったホールに響いた凛とした声。

俺の横を通り抜け目に映ったのは鮮やかな瑠璃色(ラピスラズリ)

それはずいぶん昔に見慣れたカラーで、一瞬で記憶をフラッシュバックさせる。


それは小太りの男の傍まで行くとこちらを振り返った。

()()()()()()、ヴィクトル殿下」

その磨き上げられたカーテシーは見るものすべてを魅了する。

初めて会った時、俺がそうだったように。


「アリアーシュ」

見間違えるはずなどない。

そこにいたのは紛れもなくアリアーシュ・セラトリアだった。


どう言う事だ?俺の前にいるのは確かにアリアーシユだ。だけどアリアーシュじゃない。

今、俺の前にいるアリアーシュは昔の仮面を被ったアリアーシュそのもので…。


近づいた距離がまた離れた。

いや、アリアーシュから感じるのは壁。俺を拒絶する壁だ。


「わたくしにこの様な力が授かったのも神のお導きでしょう。これからはこの国の聖女としてこの国の民を救いたいと存じます」

「俺がそれを許すと思うか?」


何を言っている?俺はまだ何も言っていない。


「あら?大勢の前でわたくしの贈り物を怒り任せに盛大に砕いたのはどなたかしら?ヴィクトル殿下の行動が全てを物語っていますわ」


俺はまだ何も言っていない。なのに場の空気がアリアーシュに処罰が下る前提で動いている。


「いい事を教えて差し上げますわ」


アリアーシュは俺のそばに近寄ると扇子を広げて耳打ちした


「あなたの大切なアリアーシュ・セラトリアはあなたが砕いた贈り物と共に消えてしまいましたわ」


面白いと思っていただけたり、続きが気になったり、お気に召されましたらブックマークや☆にて評価いただけますと幸いです。

大変励みになります٩(ˊᗜˋ*)و

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