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リヴィニア恋歌  作者: ゆえこ
一章・幼年期編
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23.誕生パーティー

王子の誕生パーティーはお昼にお披露目会、夜に晩餐会ととてもハードスケジュールである。

朝寝坊が得意なわたしもこの日は早朝から準備に取り掛かった。そう!もう一つのサプライズを用意するために!

サプライズを用意した後は湯浴みにトリートメントにマッサージ、お父様から贈られたドレスを着せられ髪を結われ化粧を施され、あれよあれよと公爵令嬢アリアーシュ・セラトリアに変身。


わたしは王子の婚約者だけど籍はまだセラトリアなのでパーティーが行われる宮殿までは迎えに来て下さったお父様と一緒に向かう。

「こんにちは、お父様」

「アリアーシュ、しばらく見ない間にまた一段と美しくなったね」

「まあお父様ったら、そう見えるのはお父様が贈って下さった素敵なドレスのおかげですわ」

お父様と馬車に乗り、家族の事、領地の事などを聞いていると宮殿に着いた。


宮殿に着くと豪華絢爛な二階付のだだっ広いホールの様な部屋に通された。

中には既に大勢の方々がいらっしゃった。

「あ、アリアーシュ様」

「あら、シーラ嬢。こきげんよう」


わたしに声を掛けたのはシーラ・ハレサス子爵令嬢。

彼女はわたしの数少ないお友達の一人だ。彼女とは一年前、領地が被災しわたしに出来る金策は無いかと模索している時に出会った。


流行りは貴族が作る。だったらわたしが流行りを作る。兎に角思い付くことをなんでもやって当たれば続けて当たらなければ切る、数打ちゃ当たる作戦で色んな事を試した。


領地は水の都とも呼ばれる美しい土地だ。観光客を集客できる何かが欲しい。

この世界にはSNSなんてない。口コミが重要になって来る。まずは王都で期間限定で食べ歩きができる屋台から始めた。王都での販売は今だけ!これがセラトリア領の新名物!!セラトリアに行けばいつでも食べれる!!みたいな感じで売り出した。

そして今生き残っている屋台はクレープとアイスクリームとホットドッグの三種類。それからドーナツショップとパスタの専門店。この世界には専門店はなく物珍しさもあり中々好評だった。

なぜこれらが生き残ったかと言うとたぶんこの世界になかった食べ物だからだ。


食べ物以外で何か流行りが作れないか考えた先で見つけたのがファッションだ。

商人がドレスやらアクセサリーやらを荷台に沢山載せて運んで来る。ただし王宮には入れず、王族が買い物専用の邸があってそこで商品が並べられ買い物をする。

ウォルナー商会、王族御用達で王都一大きな商会でそこの会頭自ら商いにやって来る。

わたしはウォルナー商会会頭、ジェラルド・ウォルナーと出会い紡績工場を紹介してもらった。


子供なんて相手にしてもらえないと思っていたけれど、ウォルナーはどこから聞きつけたのか王都で流行りの屋台の考案がわたしだと知っており、わたしのすることに金の匂いがするそうで自分も一枚噛ませて欲しいと、わたしがデザインしたドレスやワンピース、小物やアクセサリーなど貴族に売りさばいてくれたり頼んでもいないのに店舗まで用意してくれるそうだ。


ブランド名は【アッシュ】なんてことない、アリアーシュをちょこっと縮めただけだ。

アッシュを広めるためにカタログを作ろうと思ったけどモデルがいない…。だったらわたしが!とも思ったけれど王子に即行で却下された。

お茶会に参加してこなかったわたしには同年代の同性の友達もおらず詰んだ…と思ったんだけど、いた!!近くて遠くにいた!!


グレイリヒトの婚約者、それがシーラ・ハレサス子爵令嬢。

なんともこの二人、お互い好きあって婚約者になったんだとか。その辺りは省略するとして、グレイリヒトに頼み込んでお茶会に来てもらったのが初めての出会いだった。


まあまあ、なんてことでしょう。シーラ・ハレサス子爵令嬢はとても可愛らしい令嬢だった。

ボブ丈のクリーム色の優しい髪色でくせ毛なのか裾の方はくるりと丸まっている。琥珀色の瞳は大きく、身長はわたしより10㎝ほど高い160㎝くらいありそうで、お胸がボボン!腰がキュッ!お尻がボン!のナイスバデーで…本当にわたしと同い年ですか…。神様は不公平だ…。

と、シーラの可愛さに悶え、スタイルの良さに嫉妬した。


何度かお茶会に誘い、モデルになって欲しいと頼み込み泣き落とし、ようやく契約できたアッシュ専属モデル第一号だ。

今はカメラの様な魔道具と印刷機の様な魔道具を作ることができないかサイラス様に賄賂(手作り焼き菓子詰め合わせ)を渡して相談中である。


アッシュが軌道に乗れば今度はセオドア様の調合室で化粧品や化粧水などの研究に取り掛かろうと思っている。

貴族女性の美に掛ける情熱は凄まじいものだ。美しくなれるなら金額は問わない。誰よりも美しく見せようとする。

あと少しでアカデミーに入学だし、できればアカデミー入学までに基盤を見つけたい。あ、でもアカデミーで化粧品の研究をするのも悪くないわね。


それに領地を栄えさすならテーマパークな様なものも欲しい。景観を損ねず集客できるものが。

兎に角今は形振り構っていられない。復興にはお金が必要なのだ。


「シーラ嬢のドレス、とっても素敵ですわね」

「ありがとう存じます。こちらは最近噂になっているアッシュが手掛けたドレスでございます」


シーラの言葉に周りの女性の視線が集中する。とは言ってもここは貴族の巣窟、はっきり見るわけではなく横目で見たり扇子で隠しながら見たり…それでも視線は感じるものだ。

まだカタログは出来ていないとはいえ、王都一の商会が推薦するブランド【アッシュ】はどの貴族も無視できないもので、しかしどこの馬の骨とも分からないぽっと出のデザイナーの服など買わない。気にはなりつつも王太子殿下の誕生パーティーに着ていくのは気が引ける。といったところだろうか、このホールでアッシュを身に着けているのはシーラだけだった。


「まあ、そうでしたの!?わたくしもアッシュの事は気になっていたのです。実際着られているのを見ると欲しくなってしまいますわね、今度何着か仕立ててみようかしら?」

「それは素晴らしいですわ!きっとアリアーシュ様に良くお似合いになられるかと存じます」


ここで王太子の婚約者で公爵令嬢アリアーシュ・セラトリアがアッシュを懇意にするぞアピール。

するとわらわらと女性が集まってきた。どうやら皆さんアッシュが気になっていたようなんだけど、一応名前は存じ上げておりますな方が数名いる程度で後は顔も名前も存じ上げない方ばかりで顔と名前を覚えるのに必死だった。


これはひょっとすれば来るかもしれない、早くカタログを完成させなければ!!


わたしが女性たちに囲まれていると

「国王陛下、ご入場」

と王族の方々が二階に登場された。


は、はわわわ~

ちょ、ちょっと待って、わたしの心臓動いてる?

人間驚きすぎて驚きのその先を行くと、はわわわ~って出ちゃうんだ…。


知ってた、分かってた、なのに射抜かれた。

王子がカッコよすぎる!!


正装した王子がカッコよすぎてホント本物の王子様だった。

本当にまだ十四歳ですか?何その色気!?末恐ろしい!!


ああ、ダメだ、こんなカッコいい王子とちんちくりんなわたしとじゃ釣り合わない。だってスタイルだけは努力と根性でもどうにもならない…。

今このホールに居る数多の美しく煌びやかな女性の中からわたしを見つけてもらうことなんてきっとできない。


だったらせめて今日のカッコいい王子を目に焼き付けておこうと俯きそうになる顔を上げて王子を見た。


え?嘘?なんで?


顔を上げると王子と目が合った。わたしが王子を見る前から王子はわたしを見つけてくれた。

偶然でもいい、ただそれだけのことが嬉しかった。


王様の挨拶が終わり、王子の挨拶が始まった。

いやぁ、これがあの傲慢暴虐唯我独尊王子と同一人物と誰が思うだろうか?

完璧な素晴らしいスピーチに拍手が巻き起こる。

もうどこに出しても恥ずかしくない王太子ですよ、王子。


王子のスピーチが終わると王族の方々は専用席に移動されるはずなんだけど…


「会いたかったよ、アリアーシュ。今日の君は一段と美しい。他の男の目に入れさせたくないくらいだよ」

何故かわたしの目の前に来て、余所行きの口調で何か語り始めた。

「殿下、お席の移動はどうされたのですか?」

「アリアーシュのいるところが私の居場所だよ」

一人称を私と言って言葉遣いに気を付けているあたりちゃんと余所行きの話し方になっているけれどツッコミどころはそこじゃない。


「殿下の誕生パーティーなんですからちゃんと段取り通りしなきゃだめですよ」

「もうお…私の仕事は終わった。皆も好きに過ごせばいい」

今、俺って言いそうになりましたね?


王子の後ろでグレイリヒトが頭痛いポーズを取っている。

分かる、分るよその気持ち。何故ならわたしも同じポーズを取りたいから。

なのに頭を抱えているグレイリヒトの後ろで、王様は席に着きながら楽しそうに笑っているし、王妃様は扇子で口元を隠しているがあれは絶対笑っている。


あのどこに出しても恥ずかしくない王太子は一体どこに行ってしまったのか…。


本来なら王族専用席に座られている王子に贈り物を献上するはずなのだが王子が席に着く気配はない。

よく知らぬ他人から見返りを期待した物を貰う、物欲がないのも相まって王子は本当にこの手のイベントが苦手だ。

去年も唯一喜んだのがわたしが贈ったなんてない万年筆なのだから。


「殿下に贈り物を献上させていただきたいのでお席にお戻りいただけないでしょうか?」

これはグレイリヒトとの打ち合わせ通りである。

パーティー前、グレイリヒトが王子の事で相談に来た。きっと王子は贈り物攻撃から逃げようとするはず、その時に王子を席に戻すのを手伝って欲しいと。王子を席に着かせることが出来るのはわたしだけだからと。

そんなはずはないのだがグレイリヒトが頼める相手がわたしだけなのだろう。

我が国の王子を笑い者にするわけにはいかないのでわたしは快く引き受けた。


「私のために用意してくれたのか?嬉しいよアリアーシュ。他には何もいらないくらいだ」

それはわたし以外から受け取る気はないと言う事ですか…。そういう事を堂々と言わないの!

そして何故動かない。もしかしてここで受け取ろうという魂胆か?そうはいかないぞ。


「わたくしの贈り物はあちらにご用意させていただいております」

あちらというのはもちろん王族専用の席がある壇上の上だ。わたしのプレゼントを受け取るにはあちらに行かなければならない。さあ、どうする王子?


「ありがとう、アリアーシュ。行こうか」

王子は悩むことなく壇上に行こうとした。何故かわたしをエスコートして…。

待って王子、わたしは壇上には上がれないわよ!!ストップ!!ストップ!!

「殿下、わたくしはここまでです」

わたしの言いたい事を理解してくれたのか仕方ないと言った様子で王子は手を離してくれた。駄々を捏ねられなくてよかった。


本来なら公爵であるお父様から順に王子に贈り物を献上するんだけど、こういう流れになった手前わたしから王子に献上する。その事はお父様にも了承済みである。


王子は王子でワクワクといった様子でわたしと贈り物の箱を行ったり来たりキョロキョロされている。こういうところは年相応に見えて可愛くはあるんだけど、本当に先程のどこに出しても恥ずかしくない王太子はどこへ行った…。


わたしの贈り物の箱が王子の前に運ばれた。


王子の反応を見るまでやっぱり緊張する。


そしてついに王子が箱を開き、わたしのプレゼントを取り出した。


「美しい」


わたしが王子に贈ったものは魔石をはめ込んだバングルだ。

魔石をプレゼントにと考えて先に魔法を付与したので魔石を加工して魔法陣を繋ぎ合わせるのに苦労した。

折角魔法を付与したんだからいつでも身に着けてもらえるものがいいと思ってバングルにした。

喜んでもらえるといいんだけど…。

王子、付けてくれるかな?


「これは?魔石か?」

「はい、殿下に贈る物は自分で用意したいと無理を言って狩に行ってきました。そしてこの魔石には…」


「狩に行っただと?お前は自分の立場を分かっているのか!?」


え?何?

今までにこやかにわたしの贈ったバングルを眺めていた王子が突然怒鳴りだした。


「お前は今どういう状況で王宮で暮らしている?外に出ればどうなるか説明したよな?少し自由にさせ過ぎたか?お前には危機感が足りていない!!」

王子の言葉にズキリズキリと心が痛む。


「それとも俺がこんなもので喜ぶとでも思ったのか?」

ああ、そうだ。いつだって王子はわたしに危険が及ばないように守ってくれていた。

自分の気持ちを優先して王子の気持ちを裏切ったのはわたしだ。


「もう少し利口な女だと思ったんだがな…残念だよ、アリアーシュ」


バリィィィン!!


わたしが付与した反射の魔法陣が反射できない程の高い魔力で王子はバングルを砕いた。

粉々に砕けた魔石と共に、わたしの込めた祈りも一緒に砕けた。

お読みいただきありがとうございます♡♡♡


面白いと思っていただけたり、続きが気になったり、お気に召されましたらブックマークや☆にて評価いただけますと幸いです。

大変励みになります( *´艸`)

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