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リヴィニア恋歌  作者: ゆえこ
一章・幼年期編
21/36

20.ロマンチッククラッシャー

う~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん


わたしは今、大いに悩んでいた。

もうすぐ王子の十四回目の誕生日がやって来る。


何か贈り物をしたいけれどこの世界の男の子が欲しがるものなんて分からない。

ましてや相手は望めば何でも手に入るこの国の王子だ。

わたしが贈れる物なんてたかが知れている。だけど贈るなら王子に喜んでもらえるようなものを贈りたい。


去年も同じ様な事を思いながら、悩んで悩んで考えて、一周回って一番無難な万年筆を贈った。

そう言えば王子の口からあれが欲しい、これが欲しいなんてこと聞いたことがない様な気がする…。

望めば何でも手に入るから逆に無欲なのか…。


いっそのこと本人に直接尋ねてみようかしら。


そんな事を考えていると…

「痛っ!」

針で指を刺してしまった。


「あらあら、大丈夫ですか?アリアーシュ様」

今は刺繍のお勉強中。

苦手だった刺繍も今では指を刺す事がなく、アルファベットを卒業して簡単なお花や動物を刺せるようになっていた。


「すみません、少し考え事をしていて」

「まあ、そうですか、では休憩に致しましょう」

先生の休憩の合図でルリアがお茶の用意を始めた。


「何か悩み事ですか?」

「実は…もうすぐ殿下のお誕生日なのですが何を贈れば良いのか分からなくて…」

そうよ、直接本人に尋ねるんじゃなく誰かに相談すればよかったんだ。


「なるほど、それは悩ましいですね」

「何が欲しいのか分からない、殿下の好みが分からない、既に持っている物は贈りたくない、他人と被りたくない、どうせ贈るなら喜んで頂ける物が良い、など考えていたら指を刺してしまいました」


王侯貴族はパーティーが大好きだ。何かにつけてパーティーをしたがる。

そして王子は王子だ。この国の王子の誕生日ともなればそれはそれは盛大な誕生日パーティーが開かれる。

国内外から大勢の要人がいらっしゃる。そんな中でわたしは王子の婚約者として対応しなければならない。


わたしまだ十三歳よ、いたいけな少女にとんでもない責任を背負わせるのね。

嫁じゃなくまだ婚約者なんだから大人しく裏でいさせて下さい。


と、まあ、そんな誕生日パーティーで王子に渡すプレゼントについて悩んでいたわけだけど…。


「それでしたら丁度良い物がございますわ」

「本当ですか!?」


困った時は一人で考え込むんじゃなくて誰かに相談するべきね!

あんなに悩んで悩んで考えても出なかった答えがあっさり出るなんて…。


「アリアーシュ様が刺した刺繍入りのハンカチなどどうでしょうか?」

ハンカチは良い案だけどわたしのへったくそな刺繍入りは駄目だ。こんな下手な刺繍のハンカチなんて喜ばれるはずもなく即ゴミ箱行きだ。

わたしが刺した刺繍なんかより、売られている美しい刺繍の方がきっと喜ばれる。


「刺繍入りのハンカチなんて素敵ですね、先生に相談できて良かったです。ありがとう存じます」

「それでは、休憩が終わりましたら早速始めましょうか」

「い、いえ、殿下にお贈りするのは豪華な刺繍の入ったハンカチにしようと思いますので…」

「いけませんわ!!買ったものを渡すと言う事は、既に殿下がお持ちになられているかもしれません、他人と被るかもしれません、それでもよろしいのですか?」


な、なるほど…。そこまで考えていなかったわ。

だけど…

「わたくしの下手な刺繍のハンカチで殿下がお喜びになられるかどうか…。それに殿下の婚約者が刺繍が下手だなんて良い笑い者になってしまいますわ」

「アリアーシュ様はご自身は刺繍が下手だと仰いますが、一針一針丁寧でとても美しい刺繍ですよ。ですのでもっとご自分の刺繍に自信を持ってください」


とは言われましても…。

どこからどう見たって下手な刺繍なんですけど…。こんな物を渡せば本当に王子が笑い者になってしまう。

この刺繡を刺したのはわたしだからわたしが笑われるのはいい。だけどわたしの所為で王子が笑い者にされるのは嫌だ。絶対に嫌だ。それだけは何としてでも避けたい。

ハンカチなら同じ物を何枚持っててもいいし、この際他人と被ってもいいからやっぱりプロの刺繍に頼ろうかしら…。


わたしが王子に刺繍を贈りたくない理由は下手だからだけではない、前世の感覚からか手作りって重い気がして王子には渡したくない…。



……それってわたし王子に重い女って思われたくないってことじゃない!?


ああ、もう、どうしよう!!

自分の気持ちに全然蓋が出来てないじゃない!!滅茶苦茶ダダ洩れじゃない!!


いいんだよ、別にいいんだよ、だってわたし(アリアーシュ)は王子の婚約者なんだから。

だからわたしの感情が周りにバレたって何の問題もない、王子に気付かれたって何の問題もない。

これはわたし(前世アラサー)の心の問題であって現実的には何の問題もない。


そう、何も問題がないのだ。


「アリアーシュ様、ハンカチとはいつも持ち歩くものでございます。それに刺繍を施して相手に渡す事は“ずっとあなたの傍に居たい”という意味があるんですよ。ロマンチックじゃないですか?」


ロマンチック?これがロマンチックかはさておき、先生、そういう事は先に教えておいて下さいよ。

いっそ何も知らず、何も気付かず、駄々をこねず、素直に刺繍入りのハンカチを渡したかった…。

そうすれば「そんな意味があったのですね!?」とすっとぼけれたのに…。


ひょっとして先生、わざとですか?わざと後出ししました?

王子への刺繍入りのハンカチを勧めたのも、刺繍入りのハンカチを買う事を阻止したのも、そのロマンチックとやらの為にわたしに刺繍入りのハンカチを贈らせる為ですか?


そんな話を聞けば益々渡し辛いじゃないですか…。

いや、何の問題もないんだけど…。

問題ならあるわね、わたしの刺繍が贈り物に適さないくらい下手だという問題が。


仮に王子に刺繍入りのハンカチを贈るとして何を刺繍すればいいのか?

ベストなのは国章なんだけどあんな複雑な物わたしには逆立ちしたって無理だ。

強くてかっこいい生き物、例えばドラゴンとか獅子など王子のお年頃の少年には人気なのではないだろうか?なので可愛らしい花や鳥、小動物はNGだ。

でも、わたしが刺せばドラゴンはトカゲに、獅子は子猫になるだろう…


みんな高価な物、希少な物を贈る中、婚約者のわたしがド下手極まりない刺繍のハンカチをプレゼントしてみなさい、ピエロだって泣いて逃げ出すくらいの笑いが起こるわよ!!

ロマンチックを期待されている先生には申し訳ないですが刺繍のハンカチはなしですね。


となると悩みは振り出しに戻るわけで…。

他の人にも話、聞いてみようかな?



◇◇◇◇◇



色んな人に相談したいけれど残念ながらわたしが相談できる相手はそれほどいない。


わたしはある意味最後の砦とも言える部屋の前まで来ていた。

元五英傑の方々が集まられている部屋だ。

あのお爺さんたち、なんだかんだ言いながら仲がよろしくてよく皆さんで集まられている。


この方々が唯一、王子が傲慢暴虐唯我独尊時代離れて行かず、なんなら()()()()()()いたそうで王子との付き合いが長く、何かいいヒントを貰えるかもしれない。

わたしは一縷の望みを抱いて扉を開けた。











「坊ならあーちゃんから貰った物ならゴミでも喜んで宝物庫に保管するぞ」


坊と言うのは王子の事でランドルフ様は王子の事を坊と呼ぶ。

坊と呼ばれて王子は嫌がらないかって?王子とランドルフ様は王子が傲慢暴虐唯我独尊時代からの長い付き合いなので、最初の方は抵抗していたらしいのだけれど今では諦めているわ。


ちなみにラッセル様はちゃま、サイラス様は若、セオドア様は坊ちゃん、アドルフ様はボンと呼ぶ。


今は王子の呼ばれ方ではなく、ランドルフ様の返答にツッコミ所がある。

ゴミでも喜んで宝物庫に入れるって何ですか!?

一縷の望みを賭けた答えがこれですか!?


ああ、きっとこれはランドルフ様流の冗談ね、答えを求めるのに必死過ぎて真に受けるところだったわ。

本気じゃないですよね?

冗談ですよね?ね?


でもそうじゃないんですよ、ランドルフ様!今欲しいのは王子は何が欲しいか、何を贈れば喜ばれるか、そういった情報が欲しいんですよ!


「流石にゴミでは喜ばんだろう、せめてそこいらに生えている雑草くらいにした方がいい」

セオドア様がご自身で配合された特製ハーブティーを注ぎながらフォローしてくれたのだけれど…。

セオドア様、それはゴミと変わらないのでは…。


「そんなことより、セオドアが茶を淹れてくれたことだし、あーちゃんが焼いてくれたタルトタタンを頂こうではないか」

ア、アドルフ様…、わたしの相談をそんなことって仰いました?


アドルフ様の言葉を合図に、皆さんがわたしの焼いたタルトタタンに群がった。

「あーちゃんの作る菓子は絶品だな」

「この前のカップケーキも美味かったのう」

「あーちゃんが作るものは菓子だけでなくサンドウィッチも美味しいんですよ」

「何!?サイラス!お前、抜け駆けはなしだぞ!!」

「あれはセラトリア領が被災した時、転送陣を敷いた時の対価で公爵のお昼ご飯を頂いたんです。抜け駆けではありません」


何か皆さん、わたしが相談した時よりよく喋りませんか?

………結局思い浮かばないと言う事ですか?


「そうじゃ!!いい事を思い付いた!!」

「なんだラッセル?」

「あーちゃんにお弁当を作ってもらってピクニックに行こうではないか!!あーちゃんは今、謂わば王宮に軟禁状態じゃ、事情が事情だから仕方がない、だがずっと王宮と王城での生活では息が詰まるじゃろ?あーちゃんには息抜きが必要じゃ!護衛なら儂らが付いておるから大丈夫だしどうじゃ、あーちゃん、ピクニックに行かんか?」


どうと言われましてもわたし一人では決められない。

でも…、ピクニックかあ。行けるなら行きたいな、王宮ではみんな良くしてくれて何不自由なく生活させてもらっている。

だけどずっと他人の所で生活していて気付かない間に窮屈に感じていたのかもしれない。


「外に出れば若への贈り物のヒントが見つかるかも知れませんね」

「なんならピクニックのついでに魔石持ちの魔物でも狩るかのう?」

「それは良い案ですね、自分で魔石を狩ってその魔石に自分で魔法を付与すれば正真正銘あーちゃんからの贈り物です」

「丁度今、ちゃまは自分のパーティーの準備にあちこちに呼び出されて忙しくしておるからのう、いいサプライズになると思うんだがあーちゃんはどうする?」

「もちろんワシらが責任を持って全力であーちゃんを守るから安心してくれ」


元五英傑の方々と魔物狩りとか正直過剰戦力な気もするけど、安全面においては間違いなく鉄壁だ。

しかも魔法を付与した魔石だなんて、希少で高価で王子の婚約者として恥ずかしくない贈り物だわ。

わたしが贈れる物はたかが知れてるとか沢山言い訳してきたけれど、贈れる物ならわたしだって王子に見合う高価で豪華な物を贈りたい。


「皆様、わたくしに力をお貸しください」

わたしは王子に内緒で元五英傑の方々と()()()()()に行くことにした。

お読みいただきありがとうございます♡♡♡




面白いと思っていただけたり、続きが気になったり、お気に召されましたらブックマークや☆にて評価いただけますと幸いです。


大変励みになります( *´艸`)

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