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リヴィニア恋歌  作者: ゆえこ
一章・幼年期編
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14.魔性に転がされて~sideヴィクトル・ペルダナグ2~

俺とアリアーシュは被災したセラトリア領を視察する為、セラトリア領に向かっていた。

計画通り、初日の宿屋に着いた。俺たちが泊まる部屋は王族だけが泊まれる王族専用の部屋だ。

アリアーシュは慣れない長旅で疲れたのだろう、部屋に着くなり眠ってしまった。

アリアーシュの寝顔を見ると思い出す。俺が毒入りの菓子を食べさせてしまい、昏睡状態に陥り目覚めなかった日々を。


あの時はすぐに目覚めると思っていた。王宮で療養している間は今日か?今日か?とアリアーシュの元へ毎日通った。だけどアリアーシュは目覚めなかった。

まるで俺を拒絶しているようで…。


大丈夫だ、今はただ眠っているだけだ。

分かってはいても不安になる。



夕食の準備が整い、アリアーシュを起こした。この旅でしかアリアーシュの寝起きが見れないのだ、メイドに譲れるはずがない。

何度か呼ぶとアリアーシュは気怠げに目を覚ましたが、余程疲れていたのだろう、声を掛けている間に再び眠ってしまった。


風呂に入っている間にアリアーシュが目を覚ますかもしれないと後ろ髪を引かれる思いで湯浴みを済ませて戻るとアリアーシュが起きていた。


「申し訳ございません!!すぐに出て行きますので」

「待て、どこに行く」

「自分の部屋ですけど…」

「お前の部屋はここだぞ」

どうやらアリアーシュは俺の部屋で眠っていたと勘違いしているらしい。

ここは王族専用の部屋だが、アリアーシュは俺の婚約者なんだから、俺と同じ王族専用の部屋に泊まっても何の問題もない。


………………

……………

…………

………

……


だけどアリアーシュは時間が止まったかのように固まっていた。

「ああ…すまない。お前は俺が苦手だったんだよな、俺は隣の部屋のソファで眠るからアリアーシュはここを使え」

「いえ、いけません!殿下がこちらをお使いください!わたくしでしたらソファで大丈夫ですので」

「お前をソファで寝かせるわけないだろう」

「殿下をソファで眠らせるわけにはいきません」


アリアーシュは基本、俺の言う事は聞く。

だけど時々滅茶苦茶頑固になる。

今回の事もそうだ、別に俺がソファで寝るくらい何の問題もない。アリアーシュをソファで寝かせる方が問題だ。セラトリア領まであと二日、慣れない長旅なんだから休める時にしっかり休んで欲しい。

なのにあの頑固は言う事を聞かない。

でも、この時だけはアリアーシュとちゃんと会話が出来ている気がする。


お互い譲らずどちらがベッドを使うかで揉めていると


ぐぅ~~~~~~~


アリアーシュの可愛いお腹の虫が鳴いた。


「夕飯…食べるか?」

「え?」

「アリアーシュが起きたら食べれるようにしてある」

「い…いただきます」


メイドたちを呼び部屋に夕食が運ばれ、俺とアリアーシュは少し遅い夕食を食べた。


◇◇◇◇◇


アリアーシュと婚約をやり直して一年になる。なのにアリアーシュの態度は変わらない。

アルバートが魅了に掛けられ反抗期事件の時は少しは近付けたと思ったのに、解決したらアリアーシュに戻っていた。


自分の事をわたしと言うアリアーシュ。

アルバートの事で周りが見えなくなっているアリアーシュ。

案外行動型で何をしでかすか分からないアリアーシュ。

だけどそれゆえに読みやすい行動パターンのアリアーシュ。

俺の愛称を恥ずかしそうに紡ぐアリアーシュ。

庶民の服も着こなせるけどアリアーシュの気高さと美しさは損なわれることはなかった。

手を繋いで街中を歩いて、一緒にサンドウィッチを食べた。


コロコロ変わる表情は、どのアリアーシュも初めて見るアリアーシュだった。

だけど、やはりアリアーシュにはアルバートしか見えていなかった。


あの時アルバートに言った事は本心だ。

あんなにアリアーシュに想われている男はこの世にアルバートしかいない。

結局俺は婚約者と言う言葉でアリアーシュを縛り付けているだけなのだから。


だからか?だからアリアーシュとの距離は縮まらないのか?

だけど婚約者じゃなくなったらアリアーシュが離れて行ってしまう。

駄目だ、それだけは耐えられない。


自分で蒔いた種だが、俺はアリアーシュに怖がられてるし多分…嫌われている。

今更だけどアリアーシュを怖がらせないような言動を心掛けているがホント、今更だよな…。

あの毒菓子事件以外にも俺はアリアーシュに対し酷いことをしてきた。泣きも怒りもせず笑っているアリアーシュを見ていると苛立ち、俺の行為もエスカレートしていった。

そんな相手を好きになれって言うの土台無理な話で…、アリアーシュは婚約者と言う義務だから俺と一緒に居てくれている。

だから俺は婚約者と言う言葉で縛り付けてでもアリアーシュを放すことはできない。


アリアーシュに婚約者と認めてもらう為に、王太子として必死に他人と関わるようにもしている。

俺が国王に即位した時、アリアーシュを守れる人材を見極めるために。

アリアーシュだけ傍にいてくれればいいけれど、専属護衛と側近を付けろと言われ、渋々だが了承した。


アリアーシュが婚約者でいてくれるなら、俺はなんだってやってやる。


だけど…


俺はちゃんとアリアーシュの婚約者をやれているのだろうか…。

少しは俺を苦手じゃなくなってくれただろうか…。

あのブローチを持ち歩いていてくれたって事は嫌われてはいないと思うのだが…。


他人と距離を取る事ばかり考えていたので距離の詰め方が分からない。

アリアーシュが嫌なら拒否してくれれば反応で分かるのだが、相変わらずの優秀っぷりで俺にはさっぱり分からない。


アリアーシュにとっては俺と一緒に居る事は義務のようなものだろう。義務でも何でもいい、今はアリアーシュが傍にいてくれる、それだけでいい。

アリアーシュの俺の評価は底辺だ、だったら後は上げるだけだ。


◇◇◇◇◇


夕食が済み、アリアーシュは湯浴みに行った。

このまま俺がリビングのソファを占拠していれば、アリアーシュは寝室のベッドを使わざるを得ない。

すまないな、アリアーシュ。お前の言う事は何でも聞いてやりたいが、お前の為にならない事は聞いてやれない。


俺が勝ちを確信していると、浴室のドアが開き、淡いピンクのナイトウエアに身を包んだ湯上りのアリアーシュが姿を現した。

初めて見るアリアーシュの姿に思わず見惚れてしまった。そんな俺にアリアーシュは近づき…


「殿下、寝室までエスコートしてくださいませんか?」

目の前のアリアーシュに、差し出された手に、掛けられた言葉に頭が真っ白になった。

こんな誘惑に俺が勝てるはずもない。

俺の思考回路は停止したまま、心が赴くままに立ち上がりアリアーシュの手を取った。


アリアーシュをベッドに寝かせ、我に返った。このまま俺がベッドに入らずリビングに行けばいいのではないかと。

「抜け駆けはだめですよ、殿下」

俺の考えなんてお見通しだと言うようにアリアーシュは自分の隣をポンポン叩いた。


なんだこの小悪魔は…。しかも男をベッドに誘いなれていないか?なんでアリアーシュの方が余裕なんだよ!?

しかし…確かにアリアーシュにここまでさせておいてここで逃げたら男が廃る。

白状すればアリアーシュは俺の婚約者だからと深く考えずこの部屋しか取らなかった俺のミスだ。俺のミスの所為でこれ以上アリアーシュに恥をかかせるわけにはいかない。

俺は観念してアリアーシュの隣に寝そべった。


寝室の大きなベッドは子供二人なんて余裕で寝れる大きさだった。

「殿下、手を出してください」

「手?」

俺はアリアーシュに言われるまま手を出した。するとアリアーシュの手が俺の手に重なりそのままギュッと握られた。

「捕まえました。これで殿下はリビングに逃げられません」

悪戯が成功した子供の様にアリアーシュが笑った。

なんて言っていいのか分からないほど、もう、幸せ過ぎて死にそうだ。


「今回の視察にご同行させていただきありがとうございました。本当は殿下が視察に行く予定なんてなかったですよね?わたくしが駄々を捏ねるものだから見かねて助け船を出して下さったんですよね?」

アリアーシュには全部お見通しだった。

今回の視察はあの時俺が言い出したことで急遽決まったものだった。

これじゃ全然カッコつかない。

「別に…前にも言ったが被害状況を把握したかっただけだ。父上はお忙しいお方だからな、俺が行くのが妥当だろ?」

「ふふふ、そうですね、それでもありがとう存じます」

俺の言い訳が可笑しかったのかアリアーシュは楽しそうに笑っている。

「あ~、も~、明日に備えて早く寝ろ!」

このままアリアーシュを見ていたら本当に俺は死んでしまいそうで、アリアーシュの頭を胸に引き寄せた。

少し寂しいがこれで顔を見る事が無くなった。


アリアーシュが急に大人しくなり、眠ったかと思いアリアーシュから手を放すと、赤い困った顔でこちらを見上げた。所謂上目遣いと言うやつだ。

可愛い、可愛すぎる、可愛い以上に可愛い、可愛いの最上級を超えて可愛い。


心の中でアリアーシュ可愛い祭りが開催されている頃、頭の中ではあの困った顔は嫌なのに嫌と言えない顔なのでは?と冷静に分析していた。

これを嫌がらせと捉えられて嫌われてしまったら…。


サーーーっと血の気が引き、一瞬で心の中のアリアーシュ可愛い祭りが終了した。

アリアーシュが嫌がることはしない、嫌われることはしないと決めていたのに…。


ゆっくり、ゆっくり、アリアーシュから距離を取る。

広いベッドなので少し離れたところで落ちる事はない。


しかし


握られた手のひらにギュッと力が込められた。

アリアーシュは何も言わない。だけどそれ以上離れる事は許さなかった。

「お…おやすみなさい」

アリアーシュは逃げるように布団で顔を隠し、小さな声でおやすみを呟いた。

「おやすみ、アリアーシュ」

これ以上は身が持たない。俺も眠ろうと目を閉じた。


だが、再び心の中でアリアーシュ可愛い祭りが始まり、同時に頭の中で大反省会が始まり、心と思考がぐちゃぐちゃでしばらく寝付けなかった。

そんな俺とは逆に、アリアーシュは静かに眠っていた。


人の気も知らないで…。

ちょいちょいヴィクトル主体のお話を挟んでいきます。


面白いと思っていただけたり、続きが気になったり、お気に召されましたらブックマークや☆にて評価いただけますと幸いです。

大変励みになります(∩´∀`)∩

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