表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヴィニア恋歌  作者: ゆえこ
一章・幼年期編
10/36

9.新たな力

「アルバート、こんな時間までどこに行っていたの?」

アルバートが帰ってくるまで起きていたわたしは帰ってきたアルバートの部屋に突撃した。

「姉さんには関係ないでしょ」

呼び方が姉さまから姉さんに変わっている…。

「関係あるわよ!子供がこんな時間まで帰ってこないなんて誘拐でもされていたらと心配するでしょ!」

「(今まで気づかなかったくせに)」

アルバートが何か言った様な気がしたが小さくて聞き取れなかった。

「姉さんは姉さんでやる事あるんでしょ?忙しいんでしょ?僕の事なんてほっといてよ!もう構わないでよ!」

そう言ってアルバートに部屋を追い出されてしまった。



◇◇◇◇◇



「ってアルくんがグレてしまったんです!あの可愛いアルくんが…ううっ…わたしの天使が…」

「まあ…反抗期ってやつじゃないのか…」

次の日、王妃教育のため王城に行ったわたしはアルバートのグレ具合にショックを受け勢いで王子を見つけては昨晩の出来事を話し大泣きならぬギャン泣きした。それはもう王子が引いているくらいに。

「わたしの所為なんです。わたしがお姉さんなのにちゃんとアルくんを見ていなかったから…。一緒に居てあげなかったから…どうしよう…アルくんがこのまま悪い子になったらどうしよう…ごめんなさいアルくんごめんなさい」

「別にお前が悪いわけではないだろう、それに帰りが遅いだけなんだろう?そこまで思いつめなくても…」

「アルくんはまだ11歳なんです!子供なんです!そんな子がみんな寝静まった頃に帰ってくるなんて絶対何かあるはずです!!…あるはずなんです…なのに関係ないって…ほっといてくれって…」

もうどうしよう、どうしていいかわからない。

「……そんなに心配ならアルバートがどこで何をしているか調べるか?」

そうよ!聞いても教えてくれない、待っていても何も変わらない、だったら自分から動かなきゃ。

「そうですね…わたし…早速行ってきます!!」

「待て待て待て待て待て!!」

部屋から出て行こうとしたわたしを王子が慌てて引き止めた。

「どこで何をしているのか分からないんだろ?一人で行くなんて許可しない。もし一人で行こうとするなら今すぐお前を王城に縛り付けるからな。明日まで待て、明日、アルバートを尾行させるそれで納得しろ」

「でももし今日帰って来なかったら?悪い人に捕まって酷いことをされて怪我をして泣いていたら?」

「闇雲に探しても無駄足だぞ、お前は『アルバートを探した』満足感が欲しいのか?違うだろ?だったら確実な方法を取れ」

何も言い返せなかった。探した満足感が欲しいわけじゃない、そんなの見つけられなかった時の言い訳だ。

「大丈夫だ、俺を信じろ…と言いたいところだが今はアルバートを信じろ。お前の可愛い自慢の弟なんだろ?」

そう言って王子に頭をポンポンと優しく叩かれた。

二度目のギャン泣きは王子の胸の中に吸い込まれた。


その日の夜、アルバートは帰って来たけれどわたしに会ってくれることはなかった。


翌日、アルバートを尾行しようと思ったが何故か王子が朝から公爵邸にやって来た。

わたしの王妃教育が再開されてから王子は公爵邸に来なくなったので、王子が来るのは久しぶりである。王子の予告なしの来訪にも対応できるのが公爵家だができれば事前に知らせてほしいものだ。でも今回はわたしが悪い。使用人のみなさんごめんなさい。


「どうせ自分で尾行するつもりだったんだろ?…プロに任せておけって言ってもお前は止まらないだろ?だから俺も一緒に行く。それが嫌ならお前が出て行かない様ここで見張るからな」

自分で何かしないと落ち着かなくて、待っているだけなんて出来なくて、アルバートがどこで何をしているのか、それを探りたいだけなのに昨日から王子に先手を打たれて後手後手だ。

王子がわたしを心配してくれているのはわかる。わたしだってそこまで鈍感ではない。

でも王子が街に出るのは決まったイベント事のみで他は許可がなくては外出できないはず。

しかも王子の外出となると護衛が沢山付いてくる、アルバートにばれずに尾行したいのにこれじゃあすぐに見つかってしまう。

つまり………


「大人しく待っていろと言う事ですか…」

悔しい…。

自分一人で何もできないことも。

アルバートの気持ちに気付いてあげれなかったことも。


悔しい…。


「泣いてる暇はないぞ、行くんだろ?アルバートのところへ」

「??」

王子は立ち上がりわたしに手を差し伸べていた。

「で、でも殿下が外出されるとなると目立って尾行ができなくなります。なので…」

「公爵令嬢のお前が外出する時も護衛がわらわら付くだろう」

「あ…」

そうだった…。うちにも護衛さんがいるんだった…。毎日王城への送迎時馬車を警護してくれているのにすっかり忘れていたわ。

「イベント時の俺の護衛は目立つようにしている飾りだ。今日は飾りは置いてきたから目立つ心配はない。ただ、ちゃんと護衛もいるからそちらも心配ない」

すごい…準備万端じゃない。

後はわたしの護衛ね…。流石に今回ジャラジャラ連れて行くわけにはいかない…。

「後で一緒に公爵に叱られてくれるか、アリアーシュ」

「どういう事ですか?」

「お前を黙ってここから連れ出す」

王子、ドヤ顔で言ってますけどそれって…無策って事じゃないですか。

「ふふふ、そういう事なら喜んで」

なんだか王子と悪いことをしている気がして少し楽しくなった。

わたしは差し出された王子の手を取った。



◇◇◇◇◇



わたしと王子は護衛を付けていなくても格好で目立つ事に気付き、まずは服屋に入り街に溶け込めるよう庶民の服を買った。お金は持っていなかったけどドレスを売れば余裕で買えた。着ている服を見て貴族の子供だと流石にばれるのでお店の人に多めにお金を渡してわたし達の様な貴族の子供が来たことは口外しないようにしてもらった。

王子も庶民的な服装に変えたが醸し出す高貴さは隠しきれておらず滅茶苦茶アンバランスだった。王子に庶民の恰好は無理があるかしら…。まあ、無理でもやるしかないんだけど。服装ぐらいで止めるくらいなら初めからしないわ。


あ、これ王子に似合うかも…変装だし隠す部分が多い方がいいしね。

「でん…ヴィ…ヴィル様……こちらもどうぞ」

殿下なんて呼んだら一発で王子だってばれてしまう。かと言ってヴィクトルと呼んでも王子だってばれてしまう。だからヴィルと呼ぶことになったけど……名前で呼んだことなんてないからなんだかちょっと恥ずかしい。照れてしまう。しかも一気に愛称呼びとは初心者には中々ハードルが高い。

わたしは王子に手に持ったハンチング帽を渡そうとしたが王子が屈んだ。

これは被せろって事ね。


屈んだ王子と目線が重なる。いつからだろう…いつから王子のアメジストはこんなに優しく光るようになったんだろう。

綺麗な瞳は、恥ずかしいのにずっと見ていたくなる。

だけどやっぱり恥ずかしくてわたしは持っているハンチング帽を王子に深く被せた。

「これじゃあアリィが見えないじゃないか」

そう言いながらも王子は楽しそうである。


お店を出るといよいよ探索開始。アルバートの居場所はどうやら王子の“影”っていう隠密に特化した部隊の人が尾行してくれているらしくアルバートの居場所を報告してくれる。

そう言えばわたしは街を歩くのは初めてだ。アリアーシュの記憶にも街を歩いた記憶がないのはそれだけ忙しい日々を送っていたからだろうか…。

知らない世界の知らない街。初めて知らない所に旅行に行った時のようにお上りさんの様にわくわくそわそわしてしまう。

「アリィ、こっち。あまりキョロキョロしてると逸れてしまうよ」

アルバートの捜索が第一だと言うのに物珍しい風景にすっかり魅了されて心ここにあらずだったわたしの手を王子は握った。そして王子は歩く歩幅も併せてくれた。


わたし達がいるのは王都の商業区域で商店街の様に様々な商店、屋台が立ち並ぶ。この区域に商人ギルドがある。鍛冶屋や縫製工場などの工業区域には職人ギルドがあり、職人ギルドに加入すれば職を斡旋してもらえる。商業区と工業区の間に居住区があり、お店で働く人、職人さんはそれぞれの職場に向かう。門付近は宿屋が密集しており宿屋街の近くに冒険者ギルドがあり多くの冒険者が利用している。その奥には風俗街があるんだけどそこはあまり情報がない。まあそれ以上でも以下でもないと言う事かしら。ちなみにわたし達貴族が住むのは王城に近い貴族街と言われる一等地だ。ただうちは由緒正しい公爵家なのに王都に邸を建てた方が王城から離れたところに建てたので若干遠い。


外に出ないからかホント、大雑把にしか街の事を知らない。

色んな知識はあるのに身近なことを余り知らないなんて…なんか不思議だな。

覚える優先順位なのかな?本当にアリアーシュは多忙だったからなあ、誰か息抜きさせてあげてよ。


「なあアリィ、少しどこかで休まないか?」

そう言えば街に来てから歩き通しだ。そう言われれば足が痛くなってきたしお腹も空いた。

「そうですね、どこかで休憩いたしましょう」

わたし達は近くのカフェに入った。

王子はもちろん?街カフェなんて初めてなんだろう、メニュー表を渡されてきょとんとしている。たぶん座れば自動的に持ってきてもらえるとでも思ってるんじゃないかな?

アリアーシュだって街カフェなんて初めてだ。だけどわたしは街カフェなんてこなれたもので王子もわたしと一緒でいいと言うので紅茶とサンドウィッチを注文した。

「ふ~ん、食べたいものを選んで注文するのか…」

王子はメニュー表に興味津々だ。

紅茶とサンドウィッチはすぐに運ばれてきた。

そう言えば王子は外でご飯を食べても平気なのかな?さすがに王子だとばれてないだろうから毒なんて入れようがないけれど…。わたしが毒が入ってるかどうか鑑定できればいいんだけど…。

そう思った時目の前の紅茶とサンドウィッチに表示が現れた

【紅茶:ナミヒユラ茶、ナミヒユラ地方原産の茶葉で香りがよく人気が高い。毒は入っていない】

【サンドウィッチ:オーソドックスなパンにレタス、ハム、チーズを挟んだもの。毒は入っていない】

「何…これ…」

「どうした、アリィ?」

王子には目の前の表示が見えていないようだ。

「いえ、なんでもないです。少し量が多いかなって思っただけです」

どういうことだろう…今までこんなの見えたことがなかった。アリアーシュが見えていたらあの時お菓子を飲み込まずに吐き出していたはずだ。

鑑定できればいいって思ったから?そんな非現実的な………。うん、ここは魔法が使える世界だ、わたしの常識は通用しない。だったら鑑定できるのも有りか…。

王子の紅茶とサンドウィッチも鑑定してみた。王子の方にも毒は入っていなかった。

他の物は表示されないからどうやら見たいものだけ鑑定できるらしい。なんかすごい力を手に入れた気分だわ。まあ、でもこれで二度と毒を食べる事はなさそうだ。

王子にどうやって毒が入っていないことを知らせようか考えていたら王子は何も気にしていないようにペロリと完食してしまった。

お読みいただきありがとうございます♡♡♡


面白いと思っていただけたり、続きが気になったり、お気に召されましたらブックマークや☆にて評価いただけますと幸いです。

大変励みになります( *´艸`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ