表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死神の猫  作者: 十三番目
第二招 Second Voice 真実は裏返る
69/223

ep.26 時の干渉


 点と点が繋がっていく。

 そして、それを待っていたかのように、いきなり空間が崩れ始めた。


 足元が無くなり、私の身体も下へ落ちていく中、満月をしっかりと抱きしめる。

 顔はよく見えなかった。

 けれど、あの紅い目だけは鮮明に記憶されている。


 もし私の記憶を消したのがあの死神だとすれば──また、会えるだろうか。

 視界の先が徐々に黒く染まっていく。


 同時に、私の意識も黒へと飲み込まれていった。




 ◆ ◆ ◆ ◇




「おかえり」


 空から降り注ぐ、日差しのような声だ。

 目を開けると、上から覗き込む転幽の姿が見えた。

 穏やかに微笑む転幽は、私に向かって手を差し出してくる。


「ただいま」


 横になっていた身体を起こすと、傍にいた満月が嬉しそうに擦り寄ってきた。


「これで、この扉の役目も終わりだ」


「他の扉にもそれぞれ役目があるの?」


「そうだよ。扉はどれも、睦月のために存在しているからね」


 転幽の言葉が、澄み渡る青空のように沁みていく。

 扉の先で取り戻した過去の記憶。

 朧月は、私の「視る力」が真実を探すためにあるのだと言っていた。


 死神でも見えないものを、視ることのできる力。

 私がこの力を持って生まれた理由は、きっと()()()()が握っているはずだ。


「転幽は、私を助ける人格だって言ってたよね」


「睦月の言う通りだよ」


 私の問いかけに、転幽は真っ直ぐこちらを見つめてくる。

 

「それなら、もしもこの先……私が危険な状況に(おちい)る時が来たとしたら、転幽は──」




 ◆ ◆ ◇ ◇




「睦月」


 霜月の声に、(うつむ)きかけていた顔を上げる。


「どうしたの?」


「もうすぐ転移地点に着く。……睦月、もしかして疲れてる?」


「平気だよ。少し考え事をしてただけ」


 心配そうな霜月の頭を撫でると、目が猫のように細まっていく。

 無抵抗で撫でられ続ける霜月の姿に、何だか手を離し難くなってしまった。


死界(むこう)に戻っても、時間は経っていないはずだよ。この空間はどの世界の流れとも違う。隔離された領域(ばしょ)だからね」


 扉の空間へ行く前と、ほんの少しも変わらない光景。

 死界や現世だろうと関係ない。

 あの空間にいる間、私は全ての世界から()()()()()()()()()()()みたいだ。


 転移先で死局を眺めながら、私はこれから会う上司や、警備課のことについて頭を悩ませていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 記憶を還すことが……この扉の役目だったのかな?(・ω・) 各々、扉には役目があって……転幽そこで睦月ちゃんを助ける……案内役みたいな感じかな?(´・ω・`)ウーン いずれにしても、満月共…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ