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死神の猫  作者: 十三番目
第二招 Second Voice 真実は裏返る
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ep.17 二度目まして


 部屋に戻ると、美火(びび)が出迎えてくれた。

 中に上司の姿はなく、まだ戻って来ていないようだ。


「お茶を用意するので、先に座っててください」


「ありがとう」


 美火のお茶はとても美味しい。

 わくわくした気持ちで席に着くと、すかさず隣に霜月が腰掛けてくる。


 お茶菓子を(つま)みながら、警備課でのことや、それぞれの近況を話し合う。

 警備課については当時の出来事を話しただけだが、美火は何を話したのか気になるようだった。


 それならと口を開きかけるも、威吹が必死の形相で見てくるので、内容はさっくりと(にご)しておいてあげた。

 気になる子の好感度を下げたくないのだろう。

 死神にも、青春ってやつはあるみたいだ。


「そういえば、ナツメグはどこに行ったの?」


「情報収集のため、死局を渡り歩いてます」


 情報管理課には、直接(おもむ)かずとも、情報を手に入れる手段が多くあると聞いていた。

 ミントもあまり管理課から出ないと言っていたが、ナツメグの場合、動くことで利になる理由があるのかもしれない。


「ナツメグは相手の考えを読み取れるので、死局内での情報収集に向いてるんです」


「それって、心の内が読めるってこと?」


「そうです。ただし、誰にでも無差別にというわけではありません。ナツメグが睦月さんの心を勝手に読むことはないので、そこは安心してください」


 見た目に反して、中身が騒がしい自覚があるだけに、ナツメグを驚かせるような事態にならなくて良かった。

 まあとにかく、ナツメグには心を読み取れる能力があるらしい。


 情報管理課に所属している死神は、能力も適した者が多いと聞いていたが、ナツメグの能力を知ればそれも納得だ。

 精神系統の能力は、情報収集にかなり向いていると思う。


「あのー……。それって、俺が聞いたらまずい情報なんじゃ……?」


 恐る恐る手を挙げた威吹に、周りの視線が集まっていく。


「漏らさなければいいことです」


「念のため言っておくけど、俺は本職でもなければ、死局勤めでもないからね……!? 内部の情報って、そんな簡単に聞いていいもんじゃ──」


「おっ邪魔〜!」


 軽快な挨拶と共に、男が部屋に入ってきた。

 高い身長と、響きのいい声。

 身に纏う服は、現世でいう軍服のような作りに似ている。


「あれ、常闇はまだ戻って来てないの?」


 キョロキョロと辺りを見渡していた男は、私に目を留めると、驚いた様子で話しかけてきた。


「君、あの時のお嬢ちゃんだよね?」


「はい。その節はお世話になりました」


「いやいや、大したことはしてないよ。それにしても災難だったねぇ」


 男は私に手を伸ばすと、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜるように撫でてくる。

 乱れていく髪を見て、不機嫌そうな美火が口を開こうとしたが、それよりも早く頭上の手が払われた。


「気安く触るな」


「へえ〜。もしかして霜月、嫉妬してるの?」


 にやにやと笑みを浮かべる死神に、霜月の目が冷たさを増していく。

 それさえも楽しそうに受け止めた死神は、再び視線を私の方へと向けた。


「気安く見ないでください」


「えっ、美火ちゃんまで?」


 距離を離すため、間に立ち塞がった美火を見て、男は驚いた声を上げている。


「この二人がここまでねぇ。もしかして君──」


 男の身長が高すぎて、視線を(さえぎ)ることまではできないようだ。

 背の高さで言えば上司も同じくらいあるのだが、何故かこの男に見下ろされるのはあまりいい気がしなかった。


「席は空いてるので、座ったらどうですか?」


「え? ああ、うん。そうさせてもらおうかな」


 私の言葉に拍子抜けしたのか、男は大人しく椅子に腰掛けている。


「あ、そう言えば自己紹介がまだだったよね」


 警戒体制の霜月と美火が私を挟み座る中、男は気さくな態度で話しかけてきた。


「二度目まして。僕は明鷹(あきたか)。所属は特別警備課だよ」


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 明鷹さん……やはりクセが強い感じで、霜月くんや美火ちゃんがバチバチに警戒してますね(・ω・) ナツメグの特殊能力を聞いた後も、 自分の心が読まれることよりも、読んだ相手のことを気づかっちゃ…
[良い点] 威吹にとって美火の能力は相性が悪くて、少し怯えているというのが正しいのに、睦月は威吹が好意を持っているとしっかりと勘違いしていますよね。 あれ、もしかして好意持ってましたっけ? [気になる…
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