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死神の猫  作者: 十三番目
第二招 Second Voice 真実は裏返る

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ep.11 月を冠するもの ─ Ⅰ / Ⅱ


「彼……? それに、月を冠するって……」


「まあまあ、とりあえずここに座って。聞きたいことも多いだろうけど、今はそんなに時間もないんだ」


 朧月(おぼろづき)と名乗った青年は、私を近くの桜の木まで誘導すると、根本の辺りに「よいしょ」と言いながら腰を下ろした。


 隣に座るよう花弁の絨毯(じゅうたん)を叩かれ、大人しく指定された場所に座り込む。


「少しだけなら質問に答えるよ。もちろん、僕が伝えられる範囲でだけどね」


 近くなった目線と距離。

 儚い姿は、そのまま桜の中に溶け込んでしまいそうに見えた。


「まずは彼についてだけど、新月とはもう会ってるんだよね?」


「その新月って死神と、会った覚えがなくて」


 朧月の顔に驚きが浮かぶ。


「そんなはずは……。いや、僕が眠ってる間に、何か想定外のことが起きたのかも」


 思案する朧月だったが、突然私と向かい合うように座り直してくる。


「少し(のぞ)かせてもらうね」


 そう言うや否や、朧月は顔を近づけ、額と額を重ねてきた。


 死神(かれら)のパーソナルスペースは、いったいどうなっているのだろうか。

 眼前に広がる光景を見ながら、あまりの近さに呆然とするしかない。


 死神は顔面偏差値が高水準だ。

 そして、その中でも規格外の容姿を持つのが、霜月や上司だったりする。


 単に顔が整っているのとは訳が違う二人だが、何故今その話をしたのかと言うと、目の前の死神がまさに()()()()の存在だったからだ。


 神秘的とも言える造形が、目と鼻の先にあるわけで──。


 あまりの眩しさに、思わず目を細めていた。




 ◆ ◆ ◇ ◇




「ありがとう。だいたい把握できたよ」


 朧月の顔が離れ、伏せられていた目がこちらに向けられる。


「どうしたの睦月? 凄く疲れた顔してるけど……」


 心配そうな朧月は、原因が自分にあるとは思っていないようだ。


「あ、いきなり(のぞ)いたからびっくりしたのかな? ごめんね。あまり時間もないし、こうした方が確実だったから」


「ああ、うん。それは大丈夫」


 初めから距離が近い死神は他にもいたし、今更驚くほどのことでもない。

 ただ、少しばかり脳内で戦いがあっただけだ。


 誰かの美醜(びしゅう)について頓着(とんちゃく)したことは無かったが、ここまで突き抜けていると別らしい。

 相手が死神というのも、何か関係していたりするのだろうか。


「常闇って名乗ってるんだね」


 突然の言葉に思考が停止する。

 私を見る朧月の目は、まるで桜が舞い落ちる時のような揺らめきを放っていた。


「僕の言う『新月』は、君の上司である『常闇』のことだよ。最も、どちらも敬称であり、名前ではないんだけどね」


「敬称が二つあるってこと?」


 月という一文字が、やけにはっきりと浮かんでいる。

 名前に月が含まれていることも、何か特別な理由があるのだろうか。


「普通は一つだろうね。ただ、今の新月には二つ必要なんだと思う」


「朧月と上司が同じ月を冠するものなら、朧月って名前も敬称になるんだよね?」


「そうなるね。それじゃあ、ここからはもう一つの質問、『月を冠するもの』について答えようか」


 表情を緩めた朧月が、空を見上げる。

 夕暮れの空に浮かぶ雲と、そこから(かす)んで見える月。


「月を冠するものはその名の通り、全員月の名を持っている。僕が朧月で、常闇が新月のようにね」


「本当の名前を名乗ったりはしないの?」


「その問いに対する答えはノーだ。僕たちは、あえて名乗らないようにしているんだよ」


 朧月は指で小さくバツを作ると、私の方に向けてきた。


「僕たちの名は、特別な存在(かた)から(たまわ)ったものだからね。名前を呼べるのは、本当に一部の存在だけなんだ。月同士(ぼくたち)でさえ、たまにしか呼び合わない」


 

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