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死神の猫  作者: 十三番目
第四証 Fourth Sacrifice 盤上の支配者
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ep.23 約束


 思わぬところから上がった声に、レインは呆然とした。

 何故プーパが参加を表明しているのか。

 予想外の出来事が続き、レインは言葉を失っている。


「へえ……。自ら犠牲になるなんて、殊勝(しゅしょう)な配下がいたものね」


 おかしそうに笑うインヴィーに、レインの表情が歪んだ。


「おいプーパ! 勝手なことをするなとあれほど……!」


「ごしゅじんがそのむすめにきょうりょくしているのは、せいやくしょがあるからです。でも、ごしゅじんがむりをしてまできょうりょくしたのは、ぷーぱたちがいるからです」


 ずけずけとものを言うプーパにしては、随分と控えめな話し方だった。

 レインの驚く顔が、プーパの目に映り込んでいる。


 プーパはとっくに気づいていた。

 レインが無理をしてまで何かをする時は、いつだって自分たち部下が関わっていることを。


 そしてずっと願っていた。

 レインの役に立つ機会が、どこかでやって来ることを。


「ぷーぱもごしゅじんのちからになれます。みじゅくなぷーぱをごしゅじんがひろってくれたときから、ぷーぱはずっとごしゅじんのことがだいすきです」


「……お前は、僕の好みに合わせてくれてただけだろ」


 未熟なんかではないと頭を撫でるレインを、プーパは嬉しそうに受け入れている。


「行ってこいプーパ。誓約書の破棄がかかってるんだ。任せたぞ」


「はいごしゅじん!」


 息をついたレインが、プーパを送り出す。

 小さい歩幅で睦月の傍まで近寄ったプーパは、当然のように何かを待っている。


 睦月が手を差し出すと、プーパは腕を伝い、肩の上へと移動した。


「いいですかむすめよ。このしあい、けっしてまけはゆるされません。ぷーぱがきてやったからには、しょうりあるのみです!」


「そうだねプーパ。勝ちにいこう」


 耳元で騒がしく話すプーパだが、今の睦月にとっては激励のようにも聞こえてくる。

 睦月の返事に、プーパが鼻を鳴らした。


「相変わらず自信過剰ね」


「必ず勝つと約束したので」


 こんな状況でも感情一つ読み取れない睦月に、インヴィーが目を細めた。

 

「いいわ。その自信、粉々に砕いてあげる」


 突然、上階の内装が変化を始めた。

 透明な壁や天井が剥がれ、床が横に動き始める。

 床の形は円盤のようになっており、しばらく移動すると、空中でぴたりと停止した。


 魔王城と離れたことで、最上階らしき場所から、円盤の上が見下ろせるようになっている。


「ルールは特にないわ。勝者は全てを手に入れ、敗者は全てを失う。簡単でしょう?」


 微笑むインヴィーと対峙し、睦月は死神之大鎌(デスサイズ)を構えた。


 周囲に結界は張られていないが、ここは魔王城だ。

 魔王が許可しているのであれば、気にする事もないだろう。


 元いた場所は空洞になっており、新しい床と座席が用意されている。

 魔王は上から、将は横から観覧できる仕組みのようだ。


 険しい顔をしたレインと、プーパを心配そうに見守るビベレ。

 そして、睦月をじっと眺めるアヴァリーの姿が見えた。


「試合が始まれば、そっちまで手が回らない時もあると思う」


「ふん! ぷーぱならよゆうです。はやくおわらせますよ!」


 危険だと思えば、離れてても構わない。

 暗にそう伝える睦月に対し、プーパは心配不要だと息巻いている。


「そろそろ良いかしら?」


 準備が整うまで待っていたのだろう。

 声をかけてきたインヴィーを、睦月は真っ直ぐ見返した。


「大丈夫です」


 インヴィーにとっては、位がかかった勝負だ。

 睦月を叩き潰すのは、試合の中でと決めているらしい。


 何より、この勝負を見ているのは──レインたちだけではない。


 城の最上階にちらりと視線を向けた睦月は、開始の合図と共に降ってきたインヴィーの使い魔を、真っ二つに切り裂いていた。




 ◆ ◇ ◆ ◇




 【 おまけ 】



「なあレイン」


「……なんだ」


「死神の嬢ちゃんよぉ、なんでインヴィーには丁寧語なんだ?」


「知るかそんなこと。そもそもあいつ、僕にはタメ口だからな」


「あー、まあそうだよな」


「どうせ、暗黒将だからとかそんな理由だろ」



(俺様も暗黒将なんだよなぁ)


 

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