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死神の猫  作者: 十三番目
第四証 Fourth Sacrifice 盤上の支配者
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ep.17 適材適所


「グォーラの植物は増殖型だ。いくら処理しても埒が明かない。このまま(コア)を探すぞ」


「植物なのに核があるの?」


「悪魔の姿は多種多様だ。あれは使い魔みたいなものだからな。どこかに核を隠してるはずだ」


 使い魔も悪魔の一種に当たる。

 (コア)を壊さない限り増殖し続けるとなれば、分が悪いのはこちらだろう。

 早いところ見つけて、対処する必要がありそうだ。


「ここら一帯は僕とビベレで何とかする。お前はプーパを連れて核を探しにいけ」


「逆の方がいいと思うけど」


 悪魔の生態については、私よりレインの方がずっと詳しいはずだ。

 そんな重要な役目を、私に任せていいのだろうか。


「悪魔に(コア)は壊せない。でも、お前は()()()()()()だろ」


「分かった。やってみる」


 どうやら、悪魔同士で核を破壊するのは不可能らしい。


「いこうプーパ」


「きやすくよぶなむすめ! ぷーぱさまとよべ!」


「いくよ、プーパ」


「ぐぬぬ……!」


 不服そうな顔でプーパが寄ってきた。

 歩幅が小さいため、プーパの速度に合わせて移動するのは危険だろう。


 腕を差し出すと、プーパは当然だと言わんばかりの態度で肩までよじ登ってくる。


(コア)に近づけばプーパが察知する。あとはお前が何とかしろ」


 結構な無茶振りだが、レインに心配する様子は見られない。

 

「もし、何とかならなかったら?」


 私の返事に眉を顰めたレインは、不可解な表情で口を開いた。


「お前ならできるだろ」


 変な悪魔だ。

 私のことが気に入らないと言いながら、ここぞという時には信用してくるのだから。


「どうしても無理なら、退路くらいは開いてやる。尻尾を巻いて逃げてくるといい」


「やっぱり、たとえ方が可愛いね」


「……お前は全く可愛くないけどな」


 苛ついた雰囲気でレインが睨んでくる。

 迫ってくる蔦を、ビベレが一気に呑み込んだ。

 私たちを囲うようにとぐろを巻いたビベレは、要塞の如く硬い鱗を光らせている。


「退路は必要ないよ。何とかしてくるから」


「はっ。最初からそう言え」


 レインの視線が外れていく。

 それぞれが、対処すべき方向を見ていた。


「今から深部までの道を開く。閉じる前に行けよ」


 プーパを肩に乗せたまま、大鎌(サイズ)を構え直す。


『停止しろ』


 レインの声で、蔦が一斉に動きを止めた。

 その隙を見逃さず、ビベレが奥に向かって一気に蔦を呑み込んでいく。

 ビベレの体に合わせて、大きく道が開けた。

 

 道が閉じる前に、真っ直ぐ中を駆けていく。

 レインの元に引き返すビベレとすれ違いながら、私は蔦の奥地へと足を踏み入れていった。




 ◆ ◆ ◆ ◇




 本来なら遭遇した時点で詰みだ。

 (コア)を壊せない以上、何とか撤退して方法を変えるか、そのまま栄養になってやり直すしかない。


 位の高い悪魔であれば無理矢理切り開くことも可能だが、グォーラの不興を買うことになる。

 いくら好戦的な悪魔でも、あえて暗黒将を怒らせることはしないだろう。


 ──まさか、グォーラにまで喧嘩を売るはめになるとはな。


 つくづく損な役回りだ。

 再び動き始めた蔦を見て、レインの唇が(いびつ)な形を取る。


「なあビベレ。憂さ晴らしをするには、ちょうど良い玩具だと思わないか?」


「レイン様のおっしゃる通りです!」


 ビベレの返事に、レインの笑みが深まった。


 可愛いものには二種類ある。

 有益なものか、無益なものかだ。

 有益な可愛さは、レインを癒し満足させてくれる。


 しかし、無益な可愛さは──いつだってレインを加虐衝動に走らせた。

 自分よりも劣っている、可哀想で可愛らしい存在。

 初めて会った時の睦月も、まさにそんな存在だった。


「どうせ恨まれるなら、楽しまないと損だろ」


 うごめく蔦を見ながら、レインは(コア)が破壊されるまでの時間を有意義に使おうと決めた。


 

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