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死神の猫  作者: 十三番目
序章 始まりの死動
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ep.11 二柱の死神


 思わず声に出てしまっていたようだ。

 上司の名前を耳にして、霜月の顔が冷えきっている。

 メッセージの内容を読み進めていると、途中で気になる箇所(かしょ)を発見した。


「霜月。上司からの連絡で、ここから先は霜月にも共有するようにって来てるんだけど……」


「共有? 読んでもらってもいいか?」


「もちろん」


 画面を見ながら、共有部分を順番に読み上げていく。


「今夜の仕事について、いくつか詳細(しょうさい)を伝えておきます。第一に、今回の仕事は保護案件です。危険度はEですが、だからと言って油断は禁物ですよ。回収先などの情報はまた後ほど入れておくので、もし分からない事があれば霜月にでも聞いてください。それと、霜月は不測の事態への警戒を怠らないように……と書いてあります」


 お隣さんがブリザードを(まと)っておられる。


 どうやらこれは、あまりよろしくない連絡だったみたいだ。

 まあ、あの上司からだしなぁと思ってしまうあたり、私もだいぶ毒されてきたのかもしれない。


「初仕事に保護案件か……」


「保護案件だと何か違うの?」


「保護案件は、危険度が発生する仕事なんだ」


 危険度というのは、その仕事で起こり得る衝突や戦闘、負傷などのリスクを表したもので、新人が行う仕事の危険度はほとんどがF──ほぼノーリスクと呼ばれるものらしい。


「危険度の変動はあまり起こらないとされてるけど、保護案件はそうじゃない。ただ回収して運ぶだけの仕事と違って、この仕事は対象が亡くなる前後の時間も、近くで魂の保護をする必要があるんだ」


「その魂の保護っていうのをする時間が必要だから、危険度も高くなりやすいってこと?」


「勿論それもある。体を離れたばかりの魂は不安定で(もろ)いから。でも、それだけじゃない」


 霜月の表情は硬いままだ。

 どうやら上司から下された初仕事は、思ってた以上に厄介なものらしい。


「魂が保護案件に指定される主な理由は、悪魔が関わっているからなんだ」


「悪魔?」


 悪魔とは、代償と引き換えに召喚した者の願いを叶える存在のことだ。

 死神と悪魔に、何か繋がりがあるのだろうか。


「人間の中には悪魔が好むような魂を持つ存在がいて、そういった魂が回収される際に、保護案件として指定を受けたりするんだ」


「それって、仕事中に悪魔と遭遇(そうぐう)する可能性もあるってこと?」


 死神なりたてほやほやの新人に、初仕事として任せる仕事ではない気がする。

 脳裏に、「応援してますよ」なんて言いながら(わら)う上司の姿が横切っていった。


「睦月の言う通りだ。初めから保護案件を当てるなんて……」


 大鎌(サイズ)を握る霜月の雰囲気は、今にも上司を殺りに行きそうなほどだ。


「保護案件の話は帰ってからしよう。鎌の扱い方もだいぶ上達した。後は回収の手順と送り方さえ分かれば、今夜の仕事には問題ないはずだ」


 実践をしている最中、霜月には褒められっぱなしだった。


 いくら何でも褒めすぎではと思う時もあったのだが、そのおかげでやる気が尽きなかったと考えれば、結果的に良かったのだろう。


 その後もしばらく、私は霜月に教わりながら必要な知識や技術を学んでいった。




 日が傾き、周りも薄暗くなってきている。

 ここからは家に戻って、仕事の時間まで霜月と話の続きをする予定だ。


 ふと、誰かに見られているような気がして後ろを振り向く。


 見えたのは、さっきまで私達が使っていた場所と横を流れる川。

 その奥にポツンと建っているレトロな一軒家──それだけだった。


 霜月に呼ばれて前を向く。

 手を差し伸べてくる霜月に、私は自分の手を重ねるようにして置いた。



 人には見えずとも、確かにそこにいた二柱の死神は、一瞬にしてその場から消え去っていった。




 序章 始まりの死動  【完】




 ◆ ◇ ◆ ◇




 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


 初めて書いた小説だけあって、開始から数ヶ月は全てが0づくしの物語でした。

 まだまだ未熟な作者ではありますが、今後も一話一話を大切に紡いでいく所存です。


 次章からは、キャラクターも大幅に増えていく予定です。

 今後もどうぞ、『死神の猫』をよろしくお願い申し上げます。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ序章までですが既に面白く、楽しませていただいてます。 [一言] 小説なので勿論フィクションなのですが、もしかしたらこういう事がどこか知らないところで起こっていてもいいかな、と思える物…
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